藤井隆主宰<SLENDERIE RECORD>が届けた“笑い”と“ダンスミュージック” 『SLENDERIE ideal』発売記念ライブを観て
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<SLENDERIE RECORD>主宰の藤井隆全面プロデュースによる『SLENDERIE ideal』が本当に素晴らしい。この作品には、椿鬼奴、レイザーラモンRG、麒麟・川島明、フットボールアワー・後藤輝基……などがゲストとして歌唱参加(川島はサックスも担当)。すでに濃いキャラクター性を持つ顔ぶれであるはずなのに、このアルバムを聴いていると「え、この人にこんな一面も……!?」と思わずにはいられない。さらに、本作のコンセプトは“レコード会社のシングル曲を集めたサンプル盤”ということもあり、全曲表題曲ばりの強度を持つ。一貫して藤井のダンスミュージックへの愛は感じるものの、それぞれ異なる魅力を見せていて面白い。まるで次々と新たな扉が開いていくような感覚にさせられる。
そんな『SLENDERIE ideal』の発売記念ライブが11月7日に開催された。果たして、この作品がライブとしてどのように消化されるのだろうか。筆者は昼の部に足を運んだ。
開催場所はサンリオピューロランド。華やかで可愛らしいパーク内をしばらく歩き、会場に入ると、BGMとしてTOKiMONSTA feat. Drew Love, Dumbfoundeadの「Get Me Some」が流れていて、一気にクラブ空間に様変わり。その後も、KIRINJI「Pizza VS Hamburger」、RHYME SO「Fashion Blogger」、Chara+YUKI「You! You! You!」など重めのビートが効いたダンストラックが続き、会場を温めていく。
そんなBGMに観客のボルテージが上がっていくなか暗転。プロジェクターから出演アーティストの紹介映像が流れ、アルバム冒頭を飾る「ideal」が始まった。同曲はこれまで藤井の楽曲を何度も手掛けてきた冨田謙によるもの。光が差したようなクリアなアレンジで、<SLENDERIE RECORD>のレーベルカラーを示した楽曲だ。ステージにはピラミッド型の照明が設置されており、音に合わせてきらびやかに点滅を繰り返す。このライブがどんなステージになるのか、想像を掻き立てられるような演出だった。
ステージが明るくなると、今回の出演者たちがサンリオキャラクター(ポチャッコ、アグレッシブ烈子、リトルツインスターズ(キキ&ララ))とともに登場。クラブ的演出がされていたさっきとは打って変わり、「ideal」のリズムループの中で、藤井を中心に「YU HAYAMI!」「TERUKIN!」(後藤輝基)と呼びかけ該当したメンバーが踊ってみせる、という約7分のオープニングで会場を盛り上げた。
その後、RGは「アクアマリンのままでいて」(カルロス・トシキ&オメガトライブの同名曲のカバー/編曲:ONIGAWARA 斉藤伸也)と「いただきます」(作詞:m.c.A・T、レイザーラモンRG、作曲:m.c.A・T)、とくこは「T.T.S」、暗黒天使は「Dirty Angel」(作詞:暗黒天使、ニンドリ、作曲・編曲:ニンドリ)を披露していく。
その場にいるだけで特別な輝きを放つRGの存在感はしかり、とくこと暗黒天使の美しく伸びがいい歌唱にも驚かされる。個人的にはとくこの「T.T.S」が白眉。彼女の濁りのない歌唱、そして突き刺すようでいて時折陰りも見せる緻密なサウンドメイクは、ライブ会場で聴くことでより際立つのだと気づかされた。
続いては鬼奴による「運命のリビルド」(架空テレビアニメ『超空のギンガイアン』オープニングテーマ/作詞作曲:堂島孝平)と、「Love’s Moment」(『超空のギンガイアン』のスピンオフアニメ OVA『宇宙孤児イブキ』」エンディングテーマ/作詞:椿鬼奴、作曲:堂島孝、 編曲:冨田謙)だ。“とにかくフェイクがしたい!”と鬼奴が希望したという「Love’s Moment」では、アウトロで「みなさんそれぞれ自分たちの足で歩いてきたと思うけど〜」「ここからまたそれぞれ多摩センターまで歩く〜車の人もいるかな」と独自のフェイクを展開(ちなみに原曲では「孤独〜」と歌われている)。また、ステージ上で聴いていたアグレッシブ烈子にちなんで「アグレッシブ! アグレッシブ!」とエモーショナルに歌う場面も。観客を一気にさらっていく鬼奴らしさ全開のパフォーマンスだ。
今回のライブで一番気になっていたのは、後藤による「悲しみSWING」(本田美奈子の同名曲のカバー/編曲:スカート 澤部渡)。「悲しみSWING」は、ロックなイメージが強い後藤の艶やかな側面が引き出された楽曲だ。ライブでは作品で聴く以上に一つ一つのフレーズをじっくり丁寧に歌う姿が印象的で、この曲における後藤独特の色気はこうした歌唱によるものなのかと新たな発見だった。
そして、曲が終わると、川島以外の出演者が後藤の顔が写されたTシャツを着て登場。川島のステージに向けてMCを展開した。
川島は本作のためにテナーサックスを持って登場。プロジェクト「tenor ch」を通してテナーサックスの練習を重ねてきた川島は、遠目からでも伝わるほどに緊張した佇まいで、自身の楽曲「where are you」を演奏。観客から拍手が湧くと「泣くからやめてください……」と反応し、続けて「若者のすべて」を歌唱した。
個人的に『SLENDERIE ideal』で一番驚いたのは川島の声だった。「where are you」と「若者のすべて」では、いずれも高いキーで歌われている。その声からは、川島の内にあるピュアさ、実直さが伝わってくる。すっかりあの低音ボイスを活かした楽曲がくるのかと思っていた筆者は「こんな魅力が川島さんの歌声に……」と強く感動したのだ。ライブでは、その実直さがよりダイレクトに伝わってきて他の曲も聴いてみたいという気持ちにさせられた。
続けて藤井の「14時まえにアレー」、藤井と後藤による「NEO POSITION」(作詞・作曲・編曲:ARAKI)、早見優の「Right Here, Right Now」(GIORGIO MORODERの同名曲のカバー/編曲:冨田謙)が披露されていく。やはり、早見の妖艶さを纏った歌唱や振付はさすがの一言。その時々の自身の魅力を把握し、それに合わせてアップデートさせているかのよう。その堂々としたパフォーマンスは、思わず前のめりになってしまうほどに惹きつけられるものがあった。
こうして振り返ると、各アーティストたちの魅力を最大限に引き出している藤井の手腕に改めて驚かされる。また、MCが細かく挟まれているところからは、観客をトークで楽しませる気概も感じられた。あれだけ緻密な楽曲ばかりが揃っている中で、しっかり笑いも提供していく。そのギャップもかっこいい。奇を衒うわけでなくごく自然に“お笑い”と“ダンスミュージック”が交わりあった藤井隆が手掛けるエンターテインメントに痺れる。早くも次なる<SLENDERIE RECORD>の作品が楽しみになった。
■イベント情報
『「SLENDERIE ideal」発売記念インターネットサイン会』
11月14日(土)19:00〜/フットボールアワー・後藤輝基、椿鬼奴
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11月21日(土)18:00〜/麒麟 川島明、椿鬼奴、とくこ
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11月22日(日)20:00〜/暗黒天使、藤井隆、レイザーラモンRG
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『「SLENDERIE ideal」発売記念“対1オンライントーク会”』
スマートフォン・タブレット用アプリ「withLIVE」を使って、暗黒天使、藤井隆の2人とオンライン上で“面と向かって直接お話しいただけます!
11月22日(日)15:00〜
【出演】暗黒天使、藤井隆
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