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櫻坂46「Nobody’s fault」MV考察 欅坂46の振付オマージュや渋谷を彷彿させるパートの意味は?

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リアルサウンド

 櫻坂46が、12月9日にリリースする1stシングル表題曲「Nobody’s fault」のMVを公開した。闘うようにして逆風と荒波に立ち向かっていく逞しい姿、そして桜が舞う中、凛々しくも一歩一歩力強く険しい坂道を登っていく、メンバー一人ひとりに光が当たったリスタートに相応しい作品だ。

 後藤匠平が監督を務めたMVのテーマは「自由への渇望と絆」。新潟の佐渡島で撮影され、海と山の大自然をバックにした荒々しくも泥臭く、それでいて美しいメンバーの一瞬、一瞬の輝きが胸を刺す。

 作品の中心にいるのは、センターで櫻坂46という大きな船の旗手を担う森田ひかる。船の汽笛とカモメの鳴き声が聞こえてくる冒頭、深淵の海をバックに登場する森田の表情は勇ましい。巨大な船の甲板でパフォーマンスをするメンバーと島に上陸していくMVのストーリーとも言える映像が交互に流れていく。印象的なのは、森田をセンターに据えながらも、きちんと一人ひとりがフィーチャーされていることだ。森田とともにフロントを担う小林由依と渡邉理佐、キャプテンの菅井友香といった1期生だけでなく、シングル収録曲の「なぜ 恋をして来なかったんだろう?」、「Buddies」でそれぞれセンターを務める藤吉夏鈴、山﨑天といった2期生の姿も目を引く。

 2番サビで制服から初めて楽曲衣装へ。“No! No! No! 綺麗事を言うな 洗っても洗っても落ちない泥だ それでも生きる 強さを信じろ”という歌詞と、白の衣装を纏い海の上に設置された板のステージで踊るメンバーとがリンクする。その直後のDメロで舞う桜の花びらは、ラストの緑が生い茂る山を駆け上がっていくシーンへと繋がっていく。

 欅坂46として最後となるインタビューの中で、1期生メンバーが今後に向けて口々に話していたのが一人ひとりが輝けるグループであること、そして2期生を支えていくということだった。渡邉が表紙を飾った『BUBKA 2020年11月号』で、小林は「二期生のケアはしてあげたいですし、グループを支えていける人になりたい」と答えている。アウトロで後ろを振り返り走っていく森田に小林と渡邉は微笑みを浮かべるが、そんな1期生に共通してある2期生への心情を一瞬で映し出しているかのようにも感じさせる。

 特筆しておきたいのは、映像や楽曲の振り付けの中に様々な欅坂46へのオマージュが込められている点だ。振付を手掛けたのは、欅坂46結成からグループに寄り添うダンスを考案し、メンバーの心の支えでもあるTAKAHIRO。振付において最も象徴的なポイントは、「二人セゾン」を彷彿とさせる菅井と田村保乃が背中を合わせカメラに指を向けるポーズ、「語るなら未来を」にもあった口元にサイマジョポーズを持っていく仕草。さらに大サビでは森田一人からだんだんとカメラが引いていき、メンバーがスクラムを組む様子が映し出されるが、しがらみを表現した「アンビバレント」を思い出させるのと同時に、一人ひとりの鋭く真っ直ぐな眼差しからはテーマにも通ずる自由を求める姿と絆を強く印象付ける。

櫻坂46 『Nobody’s fault』

 映像面では、ラストに登場するメンバー一人ひとりのソロショットを次々に映していく演出。バックは激しくピンボケしているが、その華やかで見慣れた風景は渋谷。欅坂46の始まりの地であり、櫻坂46にとってもまた改名を発表した始まりの地でもある。センターを務める森田のバックに映るのは、その改名が発表された渋谷駅前の街頭ビジョンらしき場所。その一人ひとりの演出と桜が舞う中ラストに森田が坂を駆け上がっていく場面で飛び込んでくる「櫻坂46」という文字は、「サイレントマジョリティー」を踏襲したものであろう。

 これら多くのオマージュから感じられるのは、櫻坂46が欅坂46という坂の続きであるということ。過去を否定するのではなく、どんなに困難で曲がりくねった坂も、花吹雪が舞う輝く未来に繋がっているのだと伝えている。先述したインタビュー、そして今回のMV公開に際しメンバーがブログに綴っているのは、「愛されるグループ」「満足のいく幸せな活動」という言葉。坂の先に広がっているのは、メンバーにとっての幸せな未来であることを願って。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter