『先生を消す方程式。』田中圭は自ら罠に飛び込んだ? 義経確信犯説を検証
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恋愛要素を抜きにした学園ドラマは物足りない。『先生を消す方程式。』(テレビ朝日系)でも恋愛模様が描かれる。それはいびつでどこか悲しいものだった。
「僕が頼れるのは弓だけかもしれない」。“義経”義澤経男(田中圭)によって企てを阻止された4Cと頼田朝日(山田裕貴)の次なる刺客は長井弓(久保田紗友)。弓は藤原刀矢(高橋文哉)の期待に応えようと、剣力(高橋侃)と大木薙(森田想)を引き入れて義経を罠に誘い込む。
弓と刀矢の間には友情を超えた絆があった。それは弓の一方的な感情なのだが、「刀矢のために頑張ろうって決めた」弓は、クラスの中で発言権を強めてきたと思われる。弓の考えた「義経を消す方程式」は自殺に見せかけて殺すというもので、深夜帯とは言え、ロープで首を宙づりにされる田中の映像は非常にショッキングだった。
間一髪、生還した義経。黒板に「恋(人生-自分)=」と書き、弓に向かって「人は恋をすると人生がときめくなんて言われますが、本当にそうでしょうか?」と問いかける。心に空いた穴を埋めるために盲目的に恋愛に走る弓に、義経は「自分の人生から本来の自分を捨てるような恋をした結果、そこにあるのは『無様』だ」と、相手にすがる卑屈さを突きつけた。薙に「自分を捨ててまで必要な友達なんかいない」と叫んだように、自分を大切にしろという義経の主張は一貫している。力には「自分を守るために人を傷つけるな」と言っているが、要は自分自身と向き合えということなのだろう。
義経自身も、恋人の前野静(松本まりか)を突き落とした犯人をいまだに探しており、弓から「無様」だと指摘されるが、「俺は自分を無様だと思ってる」と認める。弓と義経の違いは、自分自身を客観的に見れているかどうかの違いだが、自分と相手の関係が双方にプラスになっているか、一方が他方を利用したり、依存していないかの違いとも言える。そして、弓への言葉は刀矢に向けられたものでもあった。
いよいよ4Cの黒幕と対決する義経。自ら志願して来ただけあって4Cに対する義経の準備は抜かりない。4Cはそれぞれ、力が腕力・物理的なパワー、同級生にパパ活をさせる薙が資金力、人気インフルエンサーの弓が影響力、検察トップの父を持つ刀矢が知力を象徴している。義経は家族関係も含めて念入りに情報収集した上で、力、薙、弓の力の源泉を奪うことで、中心人物である刀矢の外堀を埋めてきた。
義経には情報提供者がいて、おそらく過去に3年D組の担任だった教師の誰かと推察されるが、不登校だった伊吹命(秋谷郁甫)からも4Cの情報を聞き出している。しかし、本当の狙いは4Cではなく、静を突き落とした犯人。そのことは「あいつらに恨みでもあるんですか?」という命の問いに「いえ。私なりの教育です」と答えたことからもわかる。
義経は朝日が犯人ではないかと疑っていて、防犯カメラの映像でも朝日らしき人物が映っていたので、おそらく朝日で間違いないだろう。それなら直接、朝日を問い詰めればよいのではないかと思うかもしれないが、決定的な証拠がないため難しい。そこで4Cを使う方法を考えたのではないか? 副担任の朝日が、これまで4Cと結託して担任の教師たちを辞めさせてきたとすれば、その証拠をつかむことで朝日を告発できる。そのためにあえて罠にはまりに行った、と考えれば辻褄が合う。
意図的な失言で力のパワハラを引き出したことや、階段から突き落とされたのも、静を突き落とした犯人が朝日という前提で、半ば予期していたように思われる。自宅でトレーニングに励む姿は、命がけのミッションを覚悟しているかのようだ。「人生にはまさかのことが起こる」。その「まさか」は偶然ではなかった。刀矢と対決した義経は、朝日の化けの皮をはがすことができるのか? 次回「義経、討伐編完結」に向けて胸がうずく。
■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログ/Twitter
■放送情報
『先生を消す方程式。』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:00~23:30放送
出演:田中圭、山田裕貴、高橋文哉、久保田紗友、森田想、高橋侃、秋谷郁甫、奥山かずさ、榊原有那、川瀬莉子、田中亨、松本まりか
脚本:鈴木おさむ
音楽:HAL
監督:小松隆志ほか
ゼネラルプロデューサー:横地郁英(テレビ朝日)
プロデューサー:秋山貴人(テレビ朝日)、遠田孝一(MMJ)、小路美智子(MMJ)
制作:テレビ朝日/MMJ
(c)テレビ朝日
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