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誰もがもてはやす「才能」の正体を問うハイバイ『投げられやすい石』開幕

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ハイバイ『投げられやすい石』

岩井秀人率いる「ハイバイ」の代表作『投げられやすい石』が11月18日(水)に開幕する。

自らのひきこもり時代を、笑いも交えながら掘り進めた『ヒッキー・カンクーントルネード』や、自らの家族が抱えていた痛みや悲しみを、幾重にも重ねて舞台に乗せた『て』など、自分史をさまざまな手法で舞台化してきた岩井。最近では何らかの台本を俳優陣に渡し、その場で本読み稽古を始めてしまう企画「いきなり本読み!」が注目を浴びている。これまで黒木華や神木隆之介、松本穂香やユースケ・サンタマリアなど、個性豊かな顔ぶれが参戦して話題となった。

そんな中、今回再演される『投げられやすい石』は、岩井自身の自分史ではない。だが、初演された2008年時点での彼の実感や葛藤が、実に色濃く練り込まれた異色作である。今回は4人の若手俳優が、本作品に体当たりで臨む。

美大生の頃、周囲から天才としてもてはやされていた「佐藤」という男が姿を消した。あまりの天才ぶりから「海外へ修行に行った」説や、「あまりの芸術性の高さに発狂した」説が大いに飛び交い、人々は佐藤の失踪を納得する。しかし2年後のある日、ごくごく凡人の友人「山田」のもとに、佐藤から突然連絡が入る。再会した佐藤は憔悴しきっていて、かつての自信満々な姿はどこにもなかった——。

『投げられやすい石』2011年公演より (C)曳野若菜

劇中、佐藤はひどい目に遭いまくる。秀逸なのは物語序盤の、コンビニ店員との攻防だ。きわめて高圧的な店員と、徹頭徹尾挙動不審の佐藤。かつて自らの才能で輝いていた男の末路として、まずガツンと観客の胸を刺す。果たして、彼を輝かせ、彼を貶めたものは何なのか。あの頃自分たちが信じ切っていた「才能」とは何だったのか。山田と佐藤とともに、観客もそれを問い直す。

コロナ禍でいくつかの公演中止を余儀なくされた岩井が、今回は客席側にも工夫を凝らす。ハイバイ初の試みとして「通常席」と、両隣1席空けの「ゆったり席」の2種類のチケットを用意したのだ。また、22日(日)には劇作家の加藤拓也、俳優の藤原季節と松本穂香を迎えてのアフタートークが企画されている。公演は11月24日(火)まで、東京芸術劇場シアターイーストにて。長野・三重公演あり。

文:小川志津子

ハイバイ『投げられやすい石』
作・演出:岩井秀人
出演:井上向日葵 / 岩男海史 / 町田悠宇 / 山脇辰哉

【東京公演】
2020年11月18日(水)~2020年11月24日(火)
会場:東京芸術劇場 シアターイースト
※11月21日(土)公演は映像収録あり、後日有料配信予定

【長野公演】
2020年11月28日(土)・29日(日)
会場:サントミューゼ 上田市交流文化芸術センター 小ホール

【三重公演】
2020年12月5日(土)・6日(日)
会場:三重県文化会館 小ホール

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