2020年、いつもと違う年 その1 「勇者ああああ」板川侑右氏×ラブレターズ
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左からラブレターズ塚本、板川侑右プロデューサー、ラブレターズ溜口。
新型コロナウイルスの流行で図らずも特別な年になった2020年。私たちお笑いナタリーの記者も連日届くライブ中止の知らせをやるせない気持ちで記事にする日々を過ごしました。一方で、これまでにはなかったオンラインでの試みや、万全の対策をとったうえで開催に踏み切る公演に勇気をもらうことも少なくありませんでした。往年の名作バラエティの再放送に腹を抱えて笑ったり、自宅からの生配信で近況を伝えてくれる芸人の姿に安心感を覚えたり、来年必ず開催すると約束してくれたイベントが今から待ち遠しかったり、お笑いが持つポジティブな力に励まされた1年でもありました。
この企画はそんな、コロナ禍という状況においても笑いを提供しようとしてくれていた芸人や裏方に話を聞くインタビュー連載。といってもあまり堅苦しくなく、気のおもむくままに今年1年を振り返ってもらった様子をお届けしていきます。
第1回は、まだ対面での取材を再開していない、感染防止対策バッチリのテレビ東京本社で行った「勇者ああああ」の板川侑右プロデューサーと放送初期から準レギュラー的存在として番組に愛されているラブレターズのリモート鼎談を掲載。パソコン画面越しに繰り広げられた賑やかなおしゃべりをお楽しみください。
取材・文・撮影 / 狩野有理
勇者ああああ~ゲーム知識ゼロでもなんとなく見られるゲーム番組~
2017年4月にテレビ東京でスタートしたアルコ&ピースがMCを務めるゲームバラエティ。ゲームが絡んでいれば企画内容はなんでもあり。ラブレターズの初登場は第4回のオンエアで、「男のユニフォーム交換の刑」と称したパンツ交換の罰ゲームを受けたのは語り草。今年7月には配信イベント「テレ東無観客フェス」の一環として「生勇者ああああ」を実施した。この秋プライムタイムに進出し、深夜時代から変わらぬテイストで毎週土曜22:30~放送中。11月28日(土)には配信イベント第2弾「裏勇者ああああ~ゲームあんまり関係ない悪ふざけだけで90分弱やってみます~」を開催する。詳しくはイベント公式サイトで。
板川侑右P×ラブレターズ インタビュー
ぶん殴られて泣きながら「ありがとうございます!」って言える
──ファンにはおなじみの顔ぶれではありますが、改めてみなさんの関係性をお聞かせいただけますか?
板川侑右プロデューサー なんか知らないですけど、最初から準レギュラーみたいな感じで「勇者ああああ」に出ていただいていますよね。
ラブレターズ塚本直毅 「なんか知らないけど」って(笑)。あなたが呼んでくれてるんじゃないですか。
板川 僕たちスタッフの中でラブレターズさんは“困ったときにとりあえずホワイトボードに書く人たち”です。
ラブレターズ溜口佑太朗 あ、いまだに書いてくれてます?
板川 書いてますよ。今度また来ていただきますしね。あとは“大林素子さんと仲いい人たち”って感じでしょうか。
塚本 それが我々の2個目?(笑)
──頼りにしているということですよね。
板川 そうですね。真面目な話になりますけど、企画を成立させてくれる人ってけっこう大事で。めちゃくちゃなことをやる企画が多いので、「こういうものですよ」っていうのを形にして見せてくれるラブレターズさんのような芸人さんの存在はありがたいんです。
溜口 そう言っていただいてすごくうれしいんですけど、番組始まってからのこの3年半で僕ら一切ゲームに詳しくなっていないんですよ。
板川 あはははは(笑)。
溜口 視聴者の方も、番組で僕らがゲームしているイメージないんじゃないですか? 罰ばっかり食らってて。
塚本 電流の強さとかだけは体感でわかるようになりましたけど。
──素朴な疑問で、板川さんはラブレターズのコントを見たことはありますよね?
板川 もちろん、もちろん。
──というのも、バラエティ的な能力だけを買って番組に起用しているのかなと気になりまして。
板川 ああ、なるほど(笑)。ラブレターズさんしかりネタが面白い芸人さんはたくさんいますけど、単純にネタを披露するだけの企画にはならないようにしているんですよ。やっぱり平場で生まれるものが面白いし、編集でいろいろしたいっていう気持ちがあるので。たとえネタをやるにしても、クールポコ。さんにサシャナゴン(編集部注※1)として出てきてもらうとか、ラブレターズさんに今さら「西岡中学校」をやってもらうとか。何かニヤニヤできるものを乗っけて、ちょっとだけずらしたものにしています。
溜口 あんまりこんな裏側を言うもんじゃないですが、わかってくれてますよね、我々の起用法を。肌に合う監督に出会えたなって感じです。僕らは使い方次第でどうにでもなるので。最近、芸人さんの地位が上がっているというか、あんまり粗末に扱えない雰囲気もあるじゃないですか。板川さんはそれを全部取っ払って、思いっきり上からぶん殴ってくれる人なんです。
板川 あはははは!(笑)
塚本 ドンキーコングのハンマーみたいにぶっ叩いてきますから。気持ちがいいですよ。
溜口 僕らも泣きながら「ありがとうございます!」って言える。
板川 緊張しない現場ではありますよね?
溜口 緊張はしないです。
板川 この現場って偉い人が誰もいないじゃないですか。僕もアルピーさん以上のランクの演者さんだと打ち合わせでも緊張しちゃうんですよ。「モヤモヤさまぁ~ず2」を担当しているときはめちゃくちゃ真面目でしたから。
溜口 板川さんも緊張することがあるんですね。
塚本 別の顔があるんだなー。
板川 「勇者」の現場にはちょいちょい寝坊してます。油断してるんでしょうね、緊張しないから。
溜口 それはそれでダメだろ!(笑) そういえば、オズワルドの伊藤くんが深酒で収録に遅刻してくる回ありましたよね。
板川 あのとき誰も怒らなかったですからね。全員、「ああ、遅刻しましたか」っていうくらいの反応。というのは、自分も寝坊する可能性があるからなんですよ。誰かに怒るってことは自分も怒られるってことじゃないですか。
溜口 え、自分に返ってくるから?
塚本 そのブーメランのために怒らないんだ。
溜口 そんな現場よくないよ!(笑)
※1:クールポコ。が2001年頃から名乗っていたコンビ名。当時はヒップホップ漫才を披露していた。「勇者ああああ」では「リズム-1グランプリ」3連覇中。
新しいことを思いつくきっかけになった
──みなさんの関係性がわかったところで、2020年の振り返りに移りましょう。1月頃に中国・武漢で肺炎が流行しているという報道があって、そこからあれよあれよと日本でも新型コロナウイルスが広がり、テレビ業界、お笑い界もさまざまな影響を受けます。
板川 影響は多少ありましたけど、うちの番組は外ロケでもないし、けっこうリモートと相性のいい番組なんだなって思いましたね。4月頃からの収録は天王洲スタジオでやっていて、演者さんと会わないまま撮ったりするのもそれはそれで面白かった。「新しいことできるんだ」っていう発見がいろいろあって、そのときにはんにゃさん、フルーツポンチさん、しずるさんのリモート企画もやれました。
──2010年にタイムスリップして、当時の人気者たちがゲームで対決する「RIFUJIN FIGHTING FEDERATION 2010」(参考記事:「今年は2010年」大人気芸人はんにゃ、フルーツポンチ、しずるがゲーム対決)ですね。
板川 リモートでやる理由を何か作らないといけないということで考えたんですよ。大忙しの人が現場に来れずにやむを得ずリモート出演する、っていうのは自然じゃないですか。でも実際に大忙しの人は呼べない。じゃあ昔売れてた芸人さんを呼んで、当時のテイでやれば成立するんじゃないかなと思ってタイムスリップさせました。
溜口 変な味付けするなあ(笑)。
板川 7月に実施したテレ東無観客フェスもこのパッケージでできましたし、大変な時期ではありましたけど新しいことを思いつくきっかけになったような気はします。でもそのくらいからあまりラブレターズさんに会わなくなりましたね。
溜口 そうそう。みなさん自宅からリモート出演で「もじぴったん」(パズルゲーム「ことばのパズル もじぴったん」)をやっていたじゃないですか。出ているメンバーを見て、「あ、実はシソンヌさんとか呼びたかったんだ」って(笑)。
板川 ああ(笑)。
溜口 僕らはこの番組のただのファンなので、普段出ない芸人さんが出ていると新鮮でうれしいですけど。自分もスタッフ側だったら、こういう時期にしか呼べない人を呼んでみたいと思うでしょうから。
──では板川さんとしてはプラスに作用することも多かった?
板川 そうですね。休みも増えましたし、働きやすくなりました。オンラインの会議も不自由なくて、コロナが明けてもそれはずっと続けると思います。まあ、リモート収録のときにテレ東のWi-Fiが弱くて園山真希絵の声が聞こえなくなるっていう事件はありましたけど。
塚本 え、放送局のWi-Fiですよね?(笑)
──ラブレターズのお二人はコロナの影響が大きかった上半期、どうお過ごしでした?
塚本 6月に単独ライブを予定していたんですができなくなり、7月にもそれぞれ個人で公演があって準備してきたんですが、それも延期になりました。
──外出自粛期間中はZoomを使ってトーク配信にチャレンジしていましたね。
溜口 序盤からYouTubeに切り替えていろいろやっている芸人さんが多かったですけど、我々はメカにあんまり強くないし、コント動画はそれまでも上げていたんですが企画っぽいことはやっていなかったので、出遅れた感はありました(笑)。
──4月に撮影でお会いした際に「トークとかはやらないんですか?」と尋ねたこと覚えていらっしゃいますか?
溜口 はいはい。
──「いや、そういうのはやらないんです」とハッキリした口調でおっしゃっていた直後にトーク配信を始められていて、一瞬「は?」と思いました。
板川 あはははは(笑)。
溜口 なんですか「は?」って! そのくらいやったっていいでしょ!
塚本 嘘つかれた(笑)。
溜口 いや、状況が状況だったんでね? このままだとずっと人と話せなくなりそうだったし、お客さんとも触れ合う機会がないしってことで急遽始めたんですよ。ちなみに板川さんの周りでコロナ陽性だった人っています? キャスティングした芸人さんとか。
板川 キャスティングした芸人さん……。あ、だからあれです、無観客フェスの翌々日くらいにはんにゃの金田さんが……。
塚本 ああ! あったあった。
板川 変な人狼の舞台があったじゃないですか。
溜口 変な人狼の舞台(笑)。有村昆さん企画のね。
──クラスターが発生した「『THE☆JINRO』―イケメン人狼アイドルは誰だ!!」にはんにゃ金田さんが日替わりゲストとして出演していて、PCR検査の結果は陰性ということでした。
板川 金田さんが有村昆の人狼の舞台に出ていたこと自体に僕ら大爆笑してたんですよ。今年の会議で一番盛り上がったかもしれない。
溜口 それが一番?(笑)
板川Pが佐久間Pに対して思うこと
──お話が出たテレ東無観客フェスの一環として実施された配信イベント「生勇者ああああ」(参考記事:「ピラメキ」真の最終回が「生勇者ああああ」で実現、アルピーら総立ちの大団円)のこともお聞きしたいです。ステージ上の時間を2011年に戻し、板川さんが当時担当されていた「ピラメキーノG」(編集部注※2)幻の最終回を「勇者ああああ」流に行おうという内容でしたが。
板川 無観客フェス、金田さんが本当に感動したって言って、めちゃめちゃ熱くなって終わりでみんなを飲みに誘っていたんですよ。でも溜口さんと(アルコ&ピース)酒井さんは本当に嫌がっていて。
溜口 金田さん、かなり手応えがあったみたいで楽屋でもホクホクだったんですよ。
──チケットの売れ行きもよかったそうですね。
板川 おかげさまで好調でしたね。無観客フェスのラインナップの中では、「やりすぎ都市伝説」と佐久間(宣行)さんのイベントに次いで3番目に売れました。
──イベント冒頭で板川さんが佐久間プロデューサーに言及する場面がありました。日頃から佐久間さんの存在は意識されていますか?
塚本 そこの関係性気になりますね。
溜口 止まらなかったですよね、佐久間さんへの噛みつき。
板川 うーん。いや、「もうちょっと俺に興味持ってもいいんじゃねえかな」っていうのは思いますね。
塚本・溜口 あはははは!(笑)
溜口 そういう気持ちなんですね。
板川 あんまり僕に興味ない感じじゃないですか。なんか気持ち悪い発言になっていますけど。
塚本 確かに、お笑い番組を撮ってる同士だから交流があってもおかしくないのに。
板川 一応その系譜の中で育ってきたはずなんですけど、僕の番宣はあんまりしてくれない。
塚本 あはははは(笑)。「僕のこと見てくれてない!」。
板川 そうそう。もうちょっと気にしてくれてもいいんじゃないかなっていうのはあります。
──ラブレターズのお二人は無観客フェス、どうでしたか?
溜口 めちゃくちゃ面白かったです。ただゲームに関してはちょっと……。
塚本 一応これ、ゲーム番組のイベントなんですよね?
板川 ゲーム番組発のイベントです。
溜口 ゲーム番組としての見どころは一切なかったですけど(笑)、バラエティ番組としては楽しかったです。かつて時代の人気者たちと「ピラメキーノ」みたいなメジャー番組を板川さんがやっていたと思うとなんだか皮肉っぽくもありますよね。今でもああいうのやりたいですか? ど真ん中の人気芸人とタッグ組んで。
板川 全然やりたいですよ。ただ意外と実は裏があって、ゲームのCMに起用されているような人気芸人さんはそもそも呼べない可能性があるんですよ。売れっ子だと、スケジュールは空いていてもスポンサーNGということがある。ここまで「勇者ああああ」で呼んできた芸人さんは奇跡的にCMに出ていない人たちだったからよかったですけど。
溜口 奇跡でもなんでもねえよ!(笑) CM出てるような奴もともと使わないだろ!
※2:人気絶頂のはんにゃ、フルーツポンチが出演していた子供向け番組。オンエアされる予定だった最終回が東日本大震災の影響でお蔵入りとなっていた。
テレ東社員は出たがりが多い?
──無観客フェスでは、事前にオンラインでの取材会を開いて担当プロデューサー自らが集まった記者にイベントの内容を説明するという試みもありました。また、最近は「テレビ東京ファンWEEK」などテレビ東京の社員と視聴者との交流の機会が増えています。これはコロナ禍とは特に関係のない流れなのでしょうか。
板川 どうなんでしょうね。まあ、うちの社員には出たがりが多いってことだと思います。
塚本・溜口 あはははは!(笑)
板川 僕も表に出ることに対して特に緊張はないですね。なにしろ先輩(=佐久間P)がラジオやってる会社ですから。
塚本 あんなに出る人いないですよ(笑)。
板川 出たがりだからどうこうってイジられる社風ではないです。まあさすがに立候補はしないですけど、「出てください」って言われたら二つ返事でやります。
溜口 一旦持ち帰るとかなく?(笑)
板川 持ち帰らないです、即答です。
──外出自粛期間中は各局リモート収録のほか、再放送や総集編といった形をとっていました。その中でも印象に残っているテレビ番組があれば教えてください。
板川 家にいたので昼間はずっと「ヒルナンデス!」(日本テレビ)を観ていたんですけど、南原(清隆)さん以外の出演者はほかの場所からリモート出演していて、スタジオにいるのは南原さん1人だけという期間がけっこう続いていて。そんな中、AとBの2つの画面が映し出されて「どっちが生で動いているナンチャンでしょう?」というのを当てるクイズがあって、それはびっくりしましたね。つまり、どっちかは今のナンチャンで、どっちかは事前収録のナンチャンなんですよ。クイズの中身がどうでもいいことすぎてさすがに笑いました。朗らかな情報番組というイメージを持っていたんですが、ずいぶん尖ったクイズをやっているなと思いましたね。
──バイきんぐ小峠さんが1人ぼっちでロビーに立っている様子もシュールだったり、オードリーのお二人が固定カメラの構図をいろいろと変える“リモート芸”で笑わせたり、「ヒルナンデス!」はこの期間、さまざまな工夫で視聴者を楽しませていましたよね。
板川 あと「相席食堂」(ABC)の島田珠代さんの回ご覧になりました?
塚本 観ました!
板川 あれは今年ナンバー1でしたね。
塚本 もう秒読みでしょう、「パンティーテックス」が流行るのも。
板川 あれ観た日、幸せな気分で1日過ごしましたもん。こういうものがある時代に生まれてよかったなと。
溜口 僕は「モヤさま」を毎週観ているんですが、ああいうロケ番組こそ大変そうだった。13年分の過去回を毎週蔵出し、蔵出しで。
板川 僕はコロナが流行しだしたと同時くらいに異動になって、「モヤさま」から離れたんですよ。ちょうど「ロケができなくなります」となる直前で。その後の惨状は残ったスタッフに聞きましたけど、単純に外に出ちゃいけなかったからスタジオものじゃない番組は大打撃。特にうちの会社はふれあい系のロケが多いから相当きつかったと思います。「家、ついて行ってイイですか?」とか、「人んち入るなよ」っていう話ですからね。
塚本 ステイホームだって言ってるのに(笑)。人んち上がっちゃだめですもんね。
プライムタイムにふさわしくない自覚あり
──さてそんな中、この秋に「勇者ああああ」はプライムタイムに移動しました。発表時、板川さんのコメントに「おなじみのメンバーで深夜時代と変わらずゴリゴリのお笑いゲーム企画を大量生産していく」とあった通り、マイルドになる気配もなく視聴者は安心しているんじゃないでしょうか。
板川 そうですね。なんなら前よりも悪意の強いことをやってはいるので(笑)。浅草芸人さんの企画(編集部注※3)も、「老人をいじめてる」と言われたらそれまでですから。
溜口 板川さんは自分で編集して、プライムタイムにオンエアで観るわけじゃないですか。どう思うんですか?
板川 ふさわしくないなって思います。
溜口 あはははは!(笑) そう思ってるんだ。
塚本 自覚あるんですね(笑)。
板川 会議の段階では盛り上がっているんですよ。実際観ると、ふさわしくはない。
溜口 僕らファンとしては時間帯にマッチしない企画をやっていてほしいですけどね。
──視聴者層が変わることでラブレターズのお二人が出演者として意識することはありますか? 昨今はコンプライアンスに厳しい風潮もありますけど。
溜口 さっきも言ったように我々は受け身というか、殴られれば殴られるほど面白がってくれる人がいると思っているので、ちょっと時代にはそぐわないというか……。
板川 あはははは!(笑)
溜口 「押すな押すな」で育ってきているので、やっぱり押されたい。無理に優しくしてもらわなくていいんです。例えば賞レースで最下位になったら変に気を使わずコケにしてくれていいし。僕らとしては面白ければなんでもいいんですよ。
板川 「誰も傷つけない」って言葉だけが先行している感じはしますよね。
塚本 このままいけば「チビ」とかがダメになる可能性もある。
板川 でも「歯がない」は笑っていいわけじゃないですか。「歯、磨けよ」ってあんなに親に言われてきたじゃんっていう。
──(笑)。生まれつきの性質ではなくて、本人の怠惰が招いたことだから。
板川 これはダメだろうっていう線引きが甘くて怒られたり迷惑かけたりする人も稀にいますけど、基本的にはお笑いは誰かしらを傷つけるものですから。
溜口 そうですよね。
板川 僕らは「まだここ誰もイジってないぞ」というところを探していく作業をしている感じですね。
※3:ナイツ推薦のビックボーイズ、ふるさとコンビが「東京2020オリンピック The Official Video Game」に挑戦した「浅草陸上2020」。苦戦する様子をアルコ&ピースとナイツが解説しながら見届けた。
エンタメは人あってのもの
──コロナの終息はいまだ見えないところがありますが、今後の「勇者ああああ」はどうなっていくでしょうか。昨年やっていた合宿ロケなんかはまだ難しいですよね。
板川 そうですね。あ、あの温泉宿、潰れちゃったんですよ。
塚本・溜口 えー!
塚本 じゃあもうあの風呂には入れないんですね。
溜口 すげえ嫌だった、あの風呂。
塚本 めちゃくちゃいい思い出じゃん。
溜口 いいことあるかよ!
板川 溜口さんの局部のインサート撮ってますからね(笑)。
塚本 どう使うんだよ(笑)。
板川 最終的に酒井さんが手でしごき始めて、さすがに見てられないなって。
溜口 そりゃそうでしょ! もっと前で止めてくれよ!
──そういう、相手に触れるだとか、距離を取らなければいけないことで物理的にできなくなってくることも増えそうです。
板川 そうですね。アクリル板も違和感ありますし。あと、出演者同士が距離を取っていると1つのフレームに収まらないので、ちょっとだけツッコミの瞬発力が遅くなることがあって。かと言って2面にすると編集感が出て観ているほうが冷めちゃったりもする。ですよ。さんとハリウッドザコシショウさんが「あーいとぅいまてーん」ってやり合っているのはあの近い距離で1、2分ノーカットで見るから面白くなってくるわけで、編集せざるを得ない画角だともったいないなって思いますね。
──仮に問題なかったとしても、視聴者の私たちが勝手に先回りして心配してしまうということもあります。
板川 観ている人のほうが怖がっちゃうんでしょうね。氷の口移しとか、もうできないですよ。
溜口 あんなのコロナ関係なく二度とやりませんよ!
塚本 むしろよくやってたよ……。
板川 そう思うとできない罰ゲームばっかりですね。パンツ交換とかも。
──ラブレターズの輝く場所が。
溜口 やばいな、いよいよ出番が……。
塚本 奪わないでほしいです。
──いろんなお話を聞かせていただきありがとうございました。最後は「2020年、どんな年でしたか?」という質問でおしまいにさせてください。
板川 仕事のやり方が変わって、考える時間が増えた年でした。「集まらなくても別に家でできるじゃん」ということに気づけて効率は上がったと思います。その一方で「打ち上げって楽しいんだな」ってことがわかりましたね。仕事に関しては集まらなくていいことも多いですけど、エンタメに関しては人が集まっていないと8割くらいしか楽しめない。エンタメは人あってのものなんだなと思いました。
溜口 生かすも殺すも自分次第というか、自分ががんばればどうにかなるし、怠ければ死ぬだけだなというのがハッキリした年になった気がします。あとは、やっぱりお客さんの大事さを改めて感じましたね。
塚本 僕は家にいる期間を利用してアサラトっていう楽器を始めたんですよ(参考動画:ラブレターズOfficial Youtube Channel 【アサラト練習動画】Official髭男dismさんの『Pretender』に合わせて演奏してみた。)。今度はMPCというリズムマシンを買ってみようかなと思っていて。だから趣味が増えた、“多趣味な年”ですね。
溜口 所ジョージさんみたいなこと言うな!
板川侑右(イタガワユウスケ)
「勇者ああああ」演出、プロデュースを担当。1985年生まれ、千葉県出身。明治大学在学時は落語研究会に所属。2008年、テレビ東京に入社し「所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!」といった番組のADを経て「ピラメキーノ」でディレクターデビュー。過去に「ゴッドタン」「トーキョーライブ22時」「モヤモヤさまぁ~ず2」などのディレクターを務めた。ゲームと謎解きイベントとお笑いが大好き。QJWebで「芸人キャスティング会議」連載中。
テレ東“ほぼほぼ”無観客フェス「裏勇者ああああ~ゲームあんまり関係ない悪ふざけだけで90分弱やってみます~」
日時:2020年11月28日(土)19:30開場 20:00開演
料金:配信チケット2000円
<出演者>
アルコ&ピース / ななまがり / ハリウッドザコシショウ / ガリットチュウ福島 / 赤もみじ / 怪奇!YesどんぐりRPG / オジンオズボーン篠宮 ほか
ラブレターズ
塚本直毅(ツカモトナオキ)
1984年12月28日生まれ、静岡県出身。
溜口佑太朗(タメグチユウタロウ)
1985年1月19日生まれ、埼玉県出身。
日本大学芸術学部在学中に出会い、「キングオブコント2008」に出場するため即席コンビを結成。2009年4月より正式にラブレターズとして活動を開始した。2011年、2014年、2016年「キングオブコント」ファイナリスト。12月24日(木)から27日(日)まで所属事務所のASH&Dコーポレーションが東京・浅草九劇で行う「ASH&D PRESENTS LIVE『ASH&D NEW DIAMOND』」では塚本が合同コントの脚本を担当。溜口は2021年7月9日(金)に東京・さくらホールで「溜口スーパードリームショー~新・世界で一番熱い夏~」を開催する。YouTubeチャンネルでコント動画を多数公開中。
ASH&D PRESENTS LIVE「ASH&D NEW DIAMOND」
日程:2020年12月24日(木)~12月27日(日)全6公演
会場:東京・浅草九劇
料金:4000円
チケット:11月28日(土)にイープラスで一般発売。
<出演者>
ザ・ギース / ラブレターズ / 阿佐ヶ谷姉妹 / 夙川アトム / 田本清嵐 / 古関昇悟
※この公演は新型コロナウイルスの再拡大を受けて中止となりました。