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ぴあ 総合TOP > 松田聖子『SEIKO MATSUDA 2020』で振り返る“40年の軌跡と新たな魅力” 往年の名曲から今を象徴する新曲まで、深く味わう

松田聖子『SEIKO MATSUDA 2020』で振り返る“40年の軌跡と新たな魅力” 往年の名曲から今を象徴する新曲まで、深く味わう

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 デビュー前の素朴なポートレイト、そして圧倒的なオーラを放つ現在の表情を並べたCDジャケットがまず印象に残る。1980年に「裸足の季節」でデビュー。以来、「夏の扉」「赤いスイートピー」「ガラスの林檎」から「あなたに逢いたくて〜Missing You〜」まで数多くのヒット曲を送り出し、日本のポップス史を代表するシンガー/アーティストとして存在感を放ち続けている松田聖子。40周年を記念したアルバム『SEIKO MATSUDA 2020』には(ジャケットデザインが示唆しているように)彼女の輝かしいキャリアを象徴する楽曲の新バージョン、そしてアーティストとして深みを感じさせる新曲などが収められており、リリース後2日間オリコンデイリーチャートで1位を獲得し、現在もロングセールスを続けている。

 まずは簡単に松田聖子の軌跡を振り返っておきたい。「青い珊瑚礁」のヒットでブレイクした彼女は、デビュー2年目に財津和夫の作曲による「チェリーブラッサム」「夏の扉」によって、“ニューミュージック×歌謡曲”という新しいスタイルを確立した。

 さらに「白いパラソル」からは、作詞家・松本隆が参加。大瀧詠一、呉田軽穂(松任谷由実)、細野晴臣、Holland Rose(佐野元春)などの作曲陣による洗練された楽曲、そして、少女から大人の女性に変わっていく時期を繊細に捉えた歌詞により、さらに幅広いリスナーを獲得するに至った。80年代の松田聖子は“アイドル”という枠を超え、日本の音楽シーンの頂点に君臨する存在だったと言っていいだろう。

松田聖子 – 白いパラソル(Seiko Matsuda Concert Tour 2019 “Seiko’s Singles Collection” より)

 その後、アメリカ進出をきっかけにして、アーティストとしての才能を徐々に示してきた彼女。その最初のピークとも言える楽曲が1996年リリースの「あなたに逢いたくて〜Missing You〜」。自身が作詞・作曲を手がけたこの曲は(約8年ぶりに)チャート1位を獲得し、ミリオンセラーを達成。キャリアのなかでも最大のヒット曲となった。

松田聖子 – あなたに逢いたくて~Missing You~(Seiko Matsuda Concert Tour 2019 “Seiko’s Singles Collection” より)

 優れたクリエイターとともに作り上げた煌びやかなアイドル像、そして90年代以降における自立した女性アーティストとしての存在感。その両方の要素をバランスよく込め、40年という歴史を描き出したのがニューアルバム『SEIKO MATSUDA 2020』だ。

 アルバムの1曲目を飾るのは「瑠璃色の地球 2020」。オリジナルは1986年に発表された。この曲は、地球で暮らす全ての人々が平和であることを願う壮大なバラード。コロナ禍により先が見えない状況のなか、“いまこそこの曲を届けたい”という思いでリテイクされたバージョンだ。松本隆が立ち上げた「『瑠璃色の地球』chorus〜みんなで瑠璃色の地球を歌おう」(神戸在住のアーティストを中心に、「瑠璃色の地球」を歌った動画をYouTubeにアップするプロジェクト)も話題を集めた。

瑠璃色の地球 2020 MV

 さらに初めて全編日本語で歌われた「SWEET MEMORIES 〜甘い記憶〜」や「赤いスイートピー English Version」など、松本隆の作詞による名曲の新バージョンも収録。キャリアを代表する楽曲の新たな魅力を味わえるのも、このアルバムの聴きどころだろう。特に心に残るのは、「セイシェルの夕陽〜40th Anniversary〜」。松田聖子の音楽をアレンジャーとして支えてきた大村雅朗(1997年没)の作曲によるこの曲は、アルバム『ユートピア』(1983年)に収録されたAORテイストのロマンティックなナンバー。松田聖子と大村雅朗の絆が感じられることも、このトラックの魅力だ。

SWEET MEMORIES〜甘い記憶~ Music Video(YouTube Edit)

 また、大瀧詠一が手がけた楽曲「いちご畑でFUN×4」も収録されている。この楽曲は、大瀧の「FUN×4」(1981年リリースの大瀧詠一のアルバム『A LONG VACATION』収録)と松田聖子の「いちご畑でつかまえて」(1981年リリースの松田聖子のアルバム『風立ちぬ』収録)をエディットしたもの。どちらも大瀧自身がプロデュースを手掛けた楽曲で、テンポ、コード感を含めて共通点が多い“姉妹曲”と言っていいだろう。大瀧が自身のラジオ番組で一度だけオンエアした“幻の楽曲”「いちご畑でFUN×4」は、ナイアガラファンにとっても垂涎の音源だろう。

 松田聖子が作詞、財津和夫が作曲した新曲「風に向かう一輪の花」も、このアルバムの軸になる楽曲だ。支えてくれたファンに対する想いを反映した歌詞、心地よい三拍子のリズムと大らかに響くメロディが溶け合うこの曲からは、40周年を迎えた彼女自身のリアルな感情が伝わってくる。この2人による共作は、実に37年ぶり。時の流れのなかで再び邂逅した両者が生み出した、新たな名曲だ。

「風に向かう一輪の花」 ティザー映像 / 松田聖子

 さらに“終わったことは振り返らず、前を向いて進んでいこう”とエールを贈る「La La!! 明日に向かって」、華やかなホーンを取り入れたダンスチューン「40th Party」など、彼女が作詞・作曲を手がけた楽曲もある。1980年代から2010年代までに培ってきたものを糧にしながら、松田聖子は今、新たなフェーズに向かおうとしている。そのことが真っ直ぐに伝わる記念碑的アルバムだと思う。

 アルバムのリリースに先がけ、9月22日にNHK総合で『松田聖子スペシャル 風に向かって歌い続けた40年』が放送。松本隆、松任谷由実、篠山紀信、財津和夫のインタビュー、デビュー当時からの貴重な映像によって40年のキャリアを紹介する内容は、ファンを中心に大きな話題となった。この番組のなかで彼女は「素晴らしい方々に曲を書いていただいて、感謝の気持ちでいっぱいです」「感謝を忘れず、歌い続けていきたい」と涙と笑顔を浮かべながらコメント。アルバム『SEIKO MATUDA 2020』から始まる2020年代の松田聖子にも大いに期待したい。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

■作品情報
松田聖子 40周年記念アルバム『SEIKO MATSUDA 2020』
2020年9月30日(水)発売
<収録曲>
01.瑠璃色の地球 2020 
02.セイシェルの夕陽~40th Anniversary~
03. 赤いスイートピー English Version
04. SWEET MEMORIES~甘い記憶~
05.いちご畑でFUN×4
06.風に向かう一輪の花
07.La La!! 明日に向かって
08.40th Party
09.そよ風吹いたら~I can hear the sound of the waves~
10.赤いバラ手に抱え
※Bonus Track ※
11.瑠璃色の地球 2020 Piano Version(初回限定盤・UM STORE盤のみ収録)

■関連リンク
松田聖子 40周年記念スペシャルサイト
松田聖子 オフィシャルHP
ユニバーサルミュージック HP