下ネタ、パロディ、独特のツッコミ……『銀魂』の真骨頂はギャグパートにアリ!
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2021年1月8日公開のアニメ劇場版『銀魂THE FINAL』に向け、『よりぬき銀魂さん ポロリ篇』(テレビ東京系)が絶賛放送中だ。
アニメ映画や実写映画などはシリアスパートが取り上げられているが、『よりぬき銀魂さん ポロリ篇』はギャグ回がメイン。樋口弘光プロデューサーも「久しぶりにテレビで流れるアニメ銀魂を、時に薄目で、時に生温かく見守って頂きつつ(笑)、大いに笑って、映画へと気持ちを盛り上げて頂けたらと思います」(引用元:https://www.tv-tokyo.co.jp/information/2020/08/20/221509.html)とコメントをしている。
『銀魂』の真骨頂と言えば、そのギャグだろう。ギャグパートがあるからこそシリアスパートが盛り上がる上に、下らないとわかりつつもつい笑ってしまう面白さがある。これは『銀魂』読者の多くが感じていることではないだろうか。
だが、世の中を見渡せばギャグ漫画は多々存在する。『銀魂』のギャグが多くの人の心を掴んだのはなぜなのだろうか。ひとつは、「独特のツッコミ」。例えば、「オイぃぃぃぃ!!」という文字を見れば、それ以外の情報がなくとも『銀魂』であることが分かる。
語尾を伸ばすツッコミは『銀魂』の特徴とも言えるセリフで、真似する人々も多かったように思う。さらに、作者・空知英秋のセンスがキラリと光る例えツッコミもそうだ。『銀魂』のツッコミを見ると、ボケを何かに例えながらツッコむことが多いが、それが絶妙なのだ。
例えば、万事屋メンバーが回転寿司屋で働くマダオこと長谷川泰三の手伝いをする22巻187訓「一度取った皿は戻さない」。寿司を握っていたはずの坂田銀時が作ったパフェを見て、志村新八は「寿司ですらなくなってんだろーが!!」とツッコむ。「文句を言う前にまず食べてみてください 同じ口がきけますかね」という銀時に、「食べねーよ!! なんでパティシエ試験みてーなカンジかもし出してんだよ!」とさらに新八が例えながらツッコむのであった。
そして、読者を置いてけぼりにするほどの「突っ走り感」。『銀魂』は、下ネタがこれでもかと使われている漫画だ。伏せ字やモザイクがかかっているとはいえ、読む人によっては嫌悪感を抱くのではないかと心配になってしまうレベルのものも少なくない。
だが読者に一切媚びず、苦情にも屈しないその突っ走りっぷりは、清々しさすら感じる。特に、江戸幕府代14代将軍・徳川茂茂が下ネタに晒されている回は笑わずに入られない。
もっさりブリーフをいじられたり、万事屋メンバーが店番をしていた髪結床で散々な目に合わされたり、スキー場で銀時に人間ボート……にされてしまったり。将軍が出てくるギャグ回にハズレ無し、とすら言われているほどである。
さらに、所々に散りばめられている「パロディ」も秀逸だ。アニメの制作会社が同じ『ガンダム』をはじめ、『ワンピース』、『ドラゴンボール』、『ドラゴンクエスト』、スタジオジブリ作品など多くの漫画・アニメ作品がパロディとして取り上げられている。
それだけではなく、桂小太郎が初代総理大臣に就任した時には「ドナルド・ヅランプ」としてトランプ首相をもじった時流に沿ったパロディもあった。一部苦情が入ったという説もあったが、「ここまでやるか」というパロディが笑いを誘う。
そして、なんといっても「くだらないことを大真面目にやっている」ところが面白い。例えば、37巻第328訓「カニのハサミは絆を断つハサミ」。お登勢からもらった1杯のカニを3人で分けることになったが、1本余る。すると突然停電になり、暗闇の中で取り合いが始まる。
ついには城取り合戦から『天空の城ラピュタ』のパロディまで発展する壮大な話に展開していた。だが、冷静に考えれば単なるカニの取り合い。くだらない争いをここまで真剣かつ壮大に描くからこそ、笑いにつながっているのではないだろうか。こうした理由が中心となり、『銀魂』のギャグパートは多くの人を笑顔にして虜にしてきたのだ。こんな時代だからこそ、あらためて『銀魂』のギャグパートを読んで、思いっきり笑ってみるといいのかもしれない。
■書籍情報
『銀魂』(ジャンプ・コミックス)77巻完結
著者:空知英秋
出版社:集英社