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裕一と音に重なるアキラと華の姿 『エール』母親の思いがシンクロ

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リアルサウンド

 アキラ(宮沢氷魚)が華(古川琴音)との結婚の許しを得るため、古山家にやってきた。NHKの連続テレビ小説『エール』が最終週の初日を迎え、華を想うアキラのひたむきさと、娘の幸せを願う裕一(窪田正孝)と音(二階堂ふみ)の親心が伝わる回となった。

 アキラは真剣な表情で古山家にやってきた。宮沢氷魚演じるアキラの魅力は素直さだと考える。普段は軽い印象のアキラだが、華に告白するシーンで、彼女のほうへきちんと向き直り、想いを伝えたことからも分かる通り、実はとても実直な青年だ。そんな彼は結婚の許しを得る緊張から、玄関前で転び、裕一と音の前では体をこわばらせ、普段の軽さは一切感じられなかった。

 裕一と音とのやりとりで強く印象に残るのは、アキラの正直すぎる回答だ。華との結婚に反対する裕一は「音楽で稼いだ収入はいくらありますか?」「今まで何人の女性と付き合ってきた?」と挑発的な質問をする。しかしアキラは質問自体にはうろたえることなく、正直に「まだ少しです」「16人です」と答え、むしろ裕一や音、華のほうがうろたえていた。交際した女性の中には遊びの人もいた、と答えるアキラに、華もさすがに「正直に言えばいいってもんじゃないから」とあきれ気味だ。

 ここでのやりとりはコミカルで、あまりにも素直な回答には思わず笑ってしまう。しかしアキラは決して軽率なキャラクターではない。アキラを演じる宮沢の力みすぎず、けれども凛とした佇まいが、どんな場面においてもアキラの誠意を感じさせる。彼の一挙一動、そして華を思って作った曲から、華への嘘偽りのない想いが伝わってくる。

 裕一はアキラの仕事、音は女性関係に不安を感じていたものの、彼らはふと、自分たちの結婚を、自分たちを信じる気持ちで親が許してくれたことを思い出した。音が口にした台詞が心にしみる。

「頭は駄目って言ってるけど心は行けって叫ぶの」

 かつて音の母・光子(薬師丸ひろ子)が、裕一と音の結婚に反対しながらも、彼らの背中を押したときに口にした言葉だった。アキラが結婚の許しを得られるかどうかは翌日に持ちこされた。だが、きっと、自分たちの子どもを信じる気持ちを思い出した裕一と音の答えは決まっているはずだ。

■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)~11月28日(土)予定(全120回)
※9月14日(月)より放送再開
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、中村蒼、山崎育三郎、森七菜、岡部大、薬師丸ひろ子ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/