光石研が「俳優・大杉漣を浴びて帰ってください」、「教誨師」完成披露に古舘寛治ら
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「教誨師」完成披露試写会の様子。左から五頭岳夫、烏丸せつこ、光石研、古舘寛治、玉置玲央、小川登、佐向大。
大杉漣の最後の主演作「教誨師(きょうかいし)」の完成披露試写会が本日9月21日に東京・神楽座で行われ、キャストの玉置玲央(柿喰う客)、烏丸せつこ、五頭岳夫、小川登、古舘寛治、光石研、監督の佐向大が出席した。
2月21日に66歳で他界した大杉が初めてプロデュースを担当し、自ら主演も務めた本作。受刑者の心の救済に努め、彼らが改心するよう導く“教誨師“の主人公・佐伯が、教誨室という閉ざされた空間を舞台に、世代も境遇も異なる死刑囚6人と会話を繰り広げるさまが描かれる。自己中心的な若者・高宮に玉置、おしゃべりな中年女性・野口に烏丸、お人好しのホームレス・進藤に五頭、家族思いで気の弱い父親・小川に小川、心を開かない無口な男・鈴木に古舘、気のいいヤクザの組長・吉田に光石が扮した。
大杉と同じ事務所・ZACCOに所属する古舘は「大杉さんの初プロデュース映画。たぶん大杉さんはこれを機に、2作目、3作目と映画を撮りたがっていたと思います。大杉さんの今の望みはこの映画をたくさんの人に観てもらうことだと思うので、今日はそのスタートになります。今日はお越しいただきありがとうございます」と挨拶。五頭は「この映画は大杉さんに尽きます。じっくり観ていってください」、烏丸も「漣さんもたぶんここにいらっしゃることだと思います」としめやかに語りかけた。
佐伯と死刑囚による1対1の対話を中心に構成された本作。死刑囚役のキャスト6人たちは、現場で顔を合わせることもなかったという。光石は「大杉さんの胸を借りて。大杉さんと2人だけのシーンを演じられるという喜びが強かった」と撮影を振り返る。「ほとんどしゃべらない役なので楽でした。セリフ覚えが悪いので」と笑いを誘った古舘。死刑が待ち受けている人間を演じることに関して「役者は想像でやるしかない。極端な環境に置かれた人間を演じるのは難しかった」と続けた。
本作で映画初出演を果たした玉置は「現場の雰囲気がとてもよかった。それはずっと現場にいらっしゃった大杉さんが作ったものだと思います。初めての現場でしたが、のびのびと演じることができました」と述懐。唯一俳優ではない小川は「監督とは中学、高校の同級生でして(笑)。彼が自主制作映画を撮ってた頃から出させてもらってます」と出演の経緯を説明する。「大杉さんを前にして演技することの緊張感がすごかった。それをどう克服するかが難しく、対策も立てられないまま本番になってしまいました」と続けると、小川が素人ということを先ほど知ったばかりの烏丸は「びっくり。ものすごい(芝居が)リアル」と称賛した。
企画の始まりは、3年ほど前に佐向が「死刑囚と教誨師が話してるだけの映画を撮りたい」と大杉に持ちかけたことだった。脚本やキャスティングは大杉と相談しながら進めたことを明かした佐向は「現場でも大杉さんがお昼のケータリングを用意してくれることもありました。時には自らサラダを作ってくれたり。主演俳優、プロデューサーという肩書以上にこの映画を支えてくれました」と感謝を述べる。入念なリハーサルを経てクランクインができたそうで「大杉さんが『現場に入ったらすぐにカメラ回してよ』と。スタッフやキャストが戸惑うこともあったと思うんですが、そこですごいものが生まれた。ぜひ皆さんにご覧いただきたい」と伝えた。
最後に光石は「実は今日ここに来る前、今日が完成披露ですというご報告に大杉さんのお墓参りに行ってきました。今着てるジャケットも大杉さんからいただいたものです。だから今日僕は、大杉さんと一緒に来ています」と語り出す。そして「以前から自分は映画には映ってるものしかない、俳優の気持ちや精神なんてものは映らないんだと、偉そうなことを言っていました。すみませんでした。この映画には大杉さんの魂、気持ち、すべてが映っています。顔も体も手も。全身が映っております。ぜひ皆さん、大杉さんを、俳優・大杉漣を浴びて帰ってやってください。よろしくお願いします」と力強い言葉を投げかけ、イベントを締めくくった。
「教誨師」は10月6日より東京・有楽町スバル座、池袋シネマ・ロサほか全国で順次ロードショー。
(c)「教誨師」members