『美味しんぼ』山岡士郎、なぜグータラなのに尊敬される? ほっこり人助けエピソード4選
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『美味しんぼ』の主人公、山岡士郎。食に妥協しない姿勢と権力に媚びず、「ダメなものはダメ」と立ち向かっていく姿勢は、読者に広く尊敬されている。
山岡は、劇中料理を通じて多くの人を救ってきた。今回はそんな「山岡の人助け」を振り返ってみたい。
双子のラーメン屋を救う
栗田ゆう子が同窓会に参加すると、双子の兄弟、揚紅龍と白竜が経営するラーメン屋にそれぞれ嫁いだ双子の姉妹と再開する。2人は「ゴット姉ちゃん」似の先生に「悩みがある」と涙を見せる。
悩みの理由は、それぞれの夫である兄弟の仲違い。店がガイドブックに掲載されると、「どちらのおかげで美味しいのか」を冗談半分で話すうちに喧嘩になり、白竜が別の店を向かいに出し、いがみ合うようになったのだ。
栗田が「味を判定できる人物」として協力を頼んだのが山岡。「競馬の馬券を買ってあげる」ことを条件に、解決を頼む。「女に競馬はわからん」とうそぶく山岡だが、おもむろに仲違いの原因となった雑誌「中華そばマニア」編集部に連絡を入れる。
どうやら山岡は編集部と知り合いだったようで(アニメで編集部に出向き、編集長が「久しぶり」と声をかけている)、編集部員を引き連れ、取材と称して紅龍と白竜それぞれの店を訪れ、味を食べ比べることにした。
中華そばマニアの編集部員たちは、紅龍と白竜の作ったラーメンを食べると「どちらの店にも星はあげられない。今年は掲載できない」「評価の対象にならなくなった」と酷評する。
ショックを受ける兄弟に助け船を出したのが、それぞれがラーメンを作る様子を暖簾越しに凝視していた山岡。紅龍の作った麺で、白竜が調理するよう依頼する。山岡は紅龍の麺づくりの能力と白竜の調理能力が合わさることで美味しいラーメンができていることを、わずか数分で見抜いていたのだ。
これをきっかけに嫁たちの後押しを受け、両者は仲直りし1つの店に戻る。山岡はラーメン店と兄弟の仲違いを、鋭い料理の観察眼で救った。(2巻)
うどん屋と元格闘家を救う
相撲観戦を楽しんだ山岡と田畑、花村、栗田の4人。帰りがけ山岡馴染みのうどん店「力屋」に行くと、かなり寂れている様子。痩せ細った店主と話し、うどんを待っていると反社会的勢力と思われる男たちが来店し、女性陣に絡む。そこで店主は男たちのせいで客足が遠のき、寂れてしまったことを明かす。
山岡の機転で逃げることに成功した4人。その帰り道、橋から身を投げようとする力士、大谷と出会い、命を救う。その後東西新聞社を訪れた大谷を食事に誘うと、柔道日本代表の大山、プロレスラーの大馬と一緒になる。
食事中の会話から3人がそれぞれの競技を引退し、再就職先に困っていることを知った山岡は、力屋に紹介。天職を得た3人は早速暴れに来た男たちをそれぞれの道で鍛えた技で追い出すと、パワーを生かしたうどん作りで店をあっという間に繁盛させた。
暴力被害に悩むうどん店と、再就職先に困った大男を救う。山岡が一気に4人の人生を成功へと導いたのだ。(4巻より)
自殺未遂をした鈴子を救う
美食倶楽部の料理人、岡星良三が泣き崩れる様子を見た山岡と栗田。兄の精一とともに美食倶楽部主任・中川に話を聞くと、想いを寄せていた仲居の鈴子が恋人に裏切られ、自殺未遂をしたことに心を痛めていることを知る。
中川はその後鈴子が入院し、全く喋ることなく、食べ物も受け付けなくなってしまったことを説明。そして海原雄山も自分の預かっていた娘がそんな状態になったことに責任を感じ、名医を呼ぶなどしているが変わりがなく、良三が自ら志願して雄山の献立を作り食べさせる係を買ってでたことを告げられた。
「野次馬として海原雄山の失敗を見に行く」と鈴子の病室を訪れた山岡は、雄山と鉢合わせしたことでヒートアップ。鈴子の故郷である伊豆へと向かい、食材を集める。そして海岸で子供が幅海苔を取っている様子を見て、海苔作りに着手する。
帰りの電車で、栗田と鈴子の好きなものリストに海苔が入っていなかったことを不思議そうにする山岡。その後鈴子の病室に行き、ブダイの刺身など、買ってきたものを食べさせるが、全く反応を示さない。そんな状況で山岡は病室に七輪を持ち出し、海苔を炙ってうちわで扇ぐ。するとその匂いに反応した鈴子が「磯の香り…」と呟き、海苔を食べる。そして「これは良三さんが?」と語りかけた。
戸惑う良三に、山岡は自分が作ったにもかかわらず「そうだよ。君のために、良三さんが」と答える。鈴子は海苔を食べながら「私、生き直したい」と泣く。すると雄山と中川が見舞いに訪れ、中川が「鈴子が食べている」と喜びを見せる。
信じられない雄山が「何をしたんだ」と山岡に語りかけると、「鈴子さんが子供のときの生命力を取り戻す手助けをしたまでさ」と言い放ち、病室を去っていった。なおアニメ版では、物語の最後に良三と鈴子が伊豆の海岸をデートする描写が付け加えられている。(10巻より)
良三のために力を尽くし、食べ物を受け付けなかった鈴子を蘇らせた手柄も良三に譲った山岡。その優しさがひときわ目立った話だった。また、雄山が自殺未遂をした鈴子に心を痛め、頻繁に病室を訪れる、最高の名医を紹介するなどの優しさを見せたことも見逃せない。
子供の園を救う
東西新聞社に借金取りが押しかけ、ロッカーの陰に隠れる山岡。栗田は僅かな金額であることから、貸すことにする。
その利子は、「子供の園」で働くこと。サンタクロースに扮して、子供たちと戯れる。そんなとき、スーツに身を包んだ地上げ屋が現れ、園長に法的根拠を示したうえで1ヶ月以内の立ち退きを迫った。
移転先がないと嘆く園長を見た山岡は新しい土地の持ち主が洋東興産であることを知ると、ニューギンザデパートの板山社長を通じて洋東グループの盛口会長と接触する。板山社長とパーティに出かけ、会長が自慢する田鶏(蛙)の唐揚げに、「これは田鶏ではありませんよ。アメリカ原産のウシガエルですよ」と注文をつける。
素直に間違いを認める度量の広さを見せた盛口会長に、山岡は「蛙よりも美味しい唐揚げをご馳走させてほしい」と切り出す。同席した板山社長や栗田が焦るなか、「田鶏よりまずかったらホテルの下働きを一生する」と啖呵を切った。
そして山岡は「岡星」に盛口会長を呼び、トラフグの頭の唐揚げを出す。この味を盛口会長は絶賛し、「君の勝ちだ。君はホテルの下働きを一生すると言った。私はどうすればいい?」と切り出されると、山岡は「ちょっとお願いが…」と話す。
すると「子供の園」で山岡が子供と遊ぶシーンになり、園長が「どういうわけか突然洋東物産が計画を変えて、この土地を寄付してくれることになったの」と笑う。山岡の身を挺した勝負で、「子供の園」は運営を続けることができることになったのだ。栗田はこの話を聞いて「利子がこんなに大きくなるなんて…」と喜んだ。(15巻より)
山岡が危険を顧みず盛口会長に挑みかかり、子供の園を救う。その勇気と功績はかなり大きな物があった。
多くの人を惚れさせる山岡
東西新聞社では「グータラ」と罵られることが多い山岡だが、実際は多くの人を救ってきた。そんな人間的魅力と勇気が、多くの人を惚れさせる要因なのかもしれない。