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恋愛ドラマ、なぜ社内舞台を描くのか? 『#リモラブ』『恋あた』『恋する母たち』から考察

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リアルサウンド

 今年の10月期ドラマはいつになく恋愛ドラマの豊作クールと言われている。そして出会いの場が職場であるオフィスラブについて描かれていることが多い。『この恋あたためますか』(TBS系、以下『恋あた』)、『姉ちゃんの恋人』(カンテレ・フジテレビ系)、『恋する母たち』(TBS系)をはじめ、『#リモラブ ~普通の恋は邪道~』(日本テレビ系)や『社内マリッジハニー』(MBS)のように、蓋を開けてみれば、相手が偶然同じ社内の人間だったことが発覚する新たな設定も見られる。

 社内恋愛ものが多い理由として考えられるのは、まず第一に結婚後も“共働き”前提の世にあって、女性にとっても仕事と恋愛は切っても切り離せない関係になっており、人生や生活の一側面として「仕事」が確かに存在するようになった時代背景が挙げられるだろう。先日、恋人のいない30代の割合が過去20年間で倍増していることが東大の大学院の研究によって発表されたが(参照:「恋人いない30代」20年前の2倍に…東大の調査で分かった日本男女の“交際事情”[東京カレンダー])、「そもそも異性との出会いがない」と嘆く恋愛世代も少なくない。そんな中、恋愛至上主義的なキャラクターが偶発的に起きた“棚ぼた”的出会いを手にするシチュエーションはもはや視聴者も感情移入しづらく、リアリティーのない物語になってしまいかねない。以前は医療業界や広告・出版業界、金融業界など特定の業界を題材に、あくまで“仕事”をメインに様々なハプニングを乗り越えていく姿が映し出されることが多かったが、今や業界かかわらず、仕事も恋愛も同時進行で日常の一コマとして描かれるケースが圧倒的に多くなった。

 また『#リモラブ』に代表されるように、社内を舞台にした方がより“今”や“世相”を反映した描写や設定を作品内に取り入れることができ、視聴者の実生活に寄り添った内容になりやすい。昨年放送された『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)は、「働き方改革」が叫ばれるこの“過渡期”を見事切り取って見せてくれた作品だった。社会の変化や流れがどう“働く個人”それぞれの生活や心情、しいてはパートナーシップに影響を及ぼしているのか日常的なシーンで示唆されていた。

 第二に、「職場」であれば「一見接点や共通点の皆無な2人を自然に引き合わせ、否応なしに一定期間強制的に一緒に過ごさせることができる」からだろう。『恋あた』では、コンビニのアルバイトの樹木(森七菜)とその本社社長の浅羽(中村倫也)がとある新プロジェクト発足を通して出会い協業していく。『おカネの切れ目が恋のはじまり』(TBS系)でも、おもちゃメーカーの御曹司の猿渡慶太(三浦春馬)と経理部社員の清貧女子・九鬼玲子(松岡茉優)という正反対の2人の触れ合いを通して人間的成長と恋模様が描かれた。遡れば『リッチマン、プアウーマン』(フジテレビ系)で、小栗旬演じるIT社長・日向徹と石原さとみ扮する就活苦戦中の女子大生・澤木千尋がインターンという形で出会うという設定もあった。

 さらにわかりやすいのは、『恋する母たち』での食品メーカー宣伝部課長の林優子(吉田羊)とその部下で若手ホープ社員の赤坂剛(磯村勇斗)の許されざる恋だろう。“不倫”という形ではなかったが、『きょうは会社休みます。』(日本テレビ系)で描かれたアラサー事務職・青石花笑(綾瀬はるか)と、現役大学生バイトの田之倉(福士蒼汰)との9歳差カップルも当時話題になった。『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)での深田恭子演じるアラサー塾講師の春見順子と、横浜流星扮する男子高校生の“ゆりゆり”こと由利匡平の出会いの場も“塾”という主人公にとっての職場だった。年齢や立場が全く異なる相手と一目惚れですぐに結ばれることは考え難いが、同じ場に決まった頻度で集い、一つの目標に向かって協力し合うことで、いつの間にか心の距離が近づくという過程は自然で受け入れられやすい。

 いつの世も“ドラマ”というのは“もしかしたら現実にも起こり得るかもしれない”という理想と現実のギリギリのところを突いて見せてくれるのが醍醐味であり、それが視聴者に共感やドキドキをもたらしてきた。女性も働くことがデフォルトとなった今、毎日通っている職場で誰かが人知れず自分の存在に気付いてくれて、頑張りを認めてくれて見出してくれる。こういったものを疑似体験することこそが、現代女性にとってのある意味での“シンデレラストーリー”であり、心の癒しになったり日々を頑張る活力、励みになっているのかもしれない。

■楳田 佳香
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter

■放送情報
金曜ドラマ『恋する母たち』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:木村佳乃、吉田羊、仲里依紗、小泉孝太郎、磯村勇斗、森田望智、瀧内公美、奥平大兼、宮世琉弥、藤原大祐、渋川清彦、玉置玲央、矢作兼、夏樹陽子、 阿部サダヲ
原作:柴門ふみ『恋する母たち』(小学館 ビックコミックス刊)
脚本:大石静
チーフプロデューサー:磯山晶
プロデューサー:佐藤敦司
演出:福田亮介
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS