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「血が、汗が、涙がデザインできるか」  伝説のデザイナー石岡瑛子の世界初の回顧展をレポート!

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展示風景より シルク・ド・ソレイユ「ヴァレカイ」衣装

アートディレクター、デザイナーとして世界を舞台に活躍した石岡瑛子の足跡を辿る展覧会『石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか』が2021年2月14日(日)まで東京都現代美術館で開催されている。彼女についての世界で初めてとなる大規模回顧展だ。

石岡瑛子(1938〜2012)は、東京藝術大学美術学部を卒業後、資生堂に入社。当時、女性としては非常に珍しかったアートディレクターとして、広告キャンペーンのデザインやディレクションに携わっっていった。なかでも、1966年に前田美波里を起用した夏のキャンペーン広告は、それまでの「やまとなでしこ」的な女性が好まれていた化粧品広告にはなかった健康的な女性と力強いデザインが評判となり、社会現象にまでなったほどだ。

展示風景より。前田美波里をキャンペーンガールとして起用した資生堂のポスターなど

本展は彼女の活動を時系列で追い、「Timeless:時代をデザインする」、「Fearless:出会いをデザインする」、「Borderless:未知をデザインする」の3章で構成されている。展覧会タイトルの「血が、汗が、涙がデザインできるか」は、2003年に行われた世界グラフィックデザイン会議での講演で彼女が語った言葉に由来したものだ。

展示風景より「Timeless:時代をデザインする」の章

「Timeless:時代をデザインする」の章では、資生堂での活躍後、1970年に独立した彼女の活躍を紹介する。パルコの広告キャンペーンのほか、本の装丁やパッケージデザインなどさまざまな分野を手がけ、時代の空気そのものを作りだしていたことがわかる。

展示風景より パルコの校正紙

石岡の赤字を入れた校正紙から、僅かな陰影や文字間にまでクオリティを追求する市井が伺える。

味の素AGF インスタントコーヒー「マキシム」(1989年)

ちなみに、インスタントコーヒー「マキシム」のパッケージデザインも彼女の仕事。ボトルのデザインは、これまた世界的なデザイナー、倉俣史朗によるものだ。

順風満帆にキャリアを積んだ石岡は、1980年に日本を離れ、ニューヨークに拠点を移す。第2章の「Fearless:出会いをデザインする」では、この時期の彼女の活動を紹介する。

石岡は、アメリカで活動を開始するにあたり、日本でのキャリアをまとめ、『石岡瑛子風姿花伝 EIKO by EIKO』として日米で書籍化した。この本がきっかけとなり、アメリカでも次々と大きな仕事を任され始める。彼女は自分自身の人生や出会いも自らのクリエイティブを武器に切り開いていったのだ。

『M.バタフライ』(1988年)

石岡瑛子は初めてのブロードウェイの仕事であったにもかかわらず、『M.バタフライ』で舞台美術とコスチュームの2部門でトニー賞にノミネートされる。

フランシス・フォード・コッポラ『ドラキュラ』の衣装(1992年)

さらに、『地獄の黙示録』日本版ポスターを手がけた縁で、映画監督のフランシス・フォード・コッポラとの縁も深かった石岡は、コッポラの依頼で映画『ドラキュラ』の衣装をデザイン。1993年の第65回アカデミー賞で、衣裳デザイン賞を受賞するに至るなど、アメリカでも華々しいキャリアを築いていく。

映画『ドラキュラ』の衣装のためのスケッチ(1992年)

そして最終章「Borderless:未知をデザインする」では、晩年の15年間に手がけた仕事を中心に展示される。

この頃の石岡は映画の衣装デザインだけでなく、冒頭のシルク・ド・ソレイユのようなサーカス、ビョークやグレイス・ジョーンズなどのミュージシャンの舞台美術やミュージックビデオ、コンセプトメイキング、そしてオリンピックにおけるウェアや開会式のコスチュームを手がけるなど、あらゆる分野のクリエイティブを手がけていった。

ターセム・シン監督『落下の王国』(2006年)の衣装と映像
ソルトレイク・オリンピック ウェア(2002年)

そして、展覧会の最後では彼女のクリエイティブの原点ともいえる作品で締めくくられる。それがどのようなものかは、会場で確かめてほしい。

常にクリエイティブの最先端を走り続け、その勢いを止めることのなかった石岡瑛子。彼女の尽きることのない創造性にふれることができる貴重な展覧会だ。

取材・文:浦島茂世

【開催情報】
『石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか』
11月14日(土)~2021年2月14日(日)、東京都現代美術館にて開催
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/eiko-ishioka/
※予約優先チケットの販売あり。詳細は公式HPを参照のこと

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