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『ルパン三世 THE FIRST』から考える山崎貴監督の作家性 ポイントは原作へのオマージュにあり

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リアルサウンド

 11月27日放送の『金曜ロードSHOW!』(日本テレビ系)にて、山崎貴監督作『ルパン三世 THE FIRST』が放送される。11月20日には脚本・共同監督を務めた『STAND BY ME ドラえもん 2』も公開を迎えるなど、いまだ根強い人気を誇る山崎監督。その人気の理由はどこにあるのだろうか。

 ライターの久保田和馬氏は『ルパン三世 THE FIRST』について、次のように分析する。

「『ルパン三世』の映画と聞いてまず思い浮かぶのは、やはり宮崎駿監督作『カリオストロの城』じゃないでしょうか。何回もテレビで放送されていますし、オリジナルのアニメシリーズを観ていなくてもこの作品は知っているという方も多いかと思います。その意味で、『ルパン三世 THE FIRST』は、『カリオストロの城』しか観ていない人に向けた作品のようにも感じます。あまりルパンを知らない人でも“ルパン感”を味わえるのが魅力の一つではないでしょうか。あるコンテンツの最も馴染みやすい型を意識しながら、原作への敬意も欠かさない……という山崎監督の定番の手法で作られたものと言えます」

 そんな山崎監督の手法について、久保田氏は“オマージュ”がポイントだと評する。

「いわゆるオマージュ作家的な手法が特徴です。今回の『ルパン三世』に現在公開中の『ドラえもん』、『宇宙戦艦ヤマト』や『ドラゴンクエスト』など、既存の人気コンテンツを新たな形で映画にして、改めて紹介する試みがすっかり定番化しています。近い立ち位置の監督を挙げるとすれば、ロバート・ゼメキスが思い浮かびます。ゼメキスも『ロジャーラビット』で古典アニメへ、『ホワット・ライズ・ビニース』ではアルフレッド・ヒッチコック監督へオマージュを捧げるなど、オマージュ作家としての印象が強い監督です。CGなどその時々の最先端の技術に敏感なこと、実写だけでなくアニメーションも手がけること、スティーヴン・スピルバーグから影響を受けていたりと、共通点が多いように感じています。両者ともデビュー作が愛すべき青春映画だったことも触れておきたい部分ですね」

 山崎監督はどのように既存のコンテンツを映画にしているのだろうか。久保田氏は、山崎監督の特徴として最先端技術の使用を挙げる。

「山崎監督が手がける作品は、原作ファンの熱量がとくに高いものが多いので、反発も一定数はあるかと思います。しかし、原作の魅力を損なわずに映画を作ることができる、娯楽作家としての下地がある人なのは間違いないです。長編2作目の『リターナー』は、当時の日本映画で珍しいタイプのアクション映画でしたし、代表作となった『ALWAYS 三丁目の夕日』は、昭和という風景がどのようなものだったのかを当時最先端のVFX技術で徹底的に再現していました。つまり、映像化にあたってハードルとなっている部分や構図も、技術力で可能にしてしまうことができる。長く続くコンテンツというものは、どうしてもマンネリ化してしまうものです。だからこそ、その技術で次の世代にどう受け入れてもらえるか考えながら作っているように思えます」

 久保田氏は、『ルパン三世 THE FIRST』を今改めて観る価値を、以下のように語る。

「『ルパン三世』のアニメ映画は、『名探偵コナン』とのコラボ作品や、『LUPIN the Third -峰不二子という女-』などを除くと、1996年作『ルパン三世 DEAD OR ALIVE』以来なんです。今回の放送で、初めて『ルパン三世』を知る世代もいるかもしれません。これを機に原作やオリジナルのアニメ版に目が行くきっかけになればと願っております」

 今回の放送を機に、原作にも触れてみることでより新たな世界が広がるかもしれない。

■放送情報
『ルパン三世 THE FIRST』
日本テレビ系にて、11月27日(金)21:00〜22:54放送(※地上波初放送)
原作:モンキー・パンチ
脚本・監督:山崎貴
音楽:大野雄二
出演:栗田貫一、小林清志、浪川大輔、沢城みゆき、山寺宏一、広瀬すず、吉田鋼太郎、藤原竜也
制作:トムス・エンタテインメント マーザ・アニメーションプラネット
(c)モンキー・パンチ/2019映画「ルパン三世」製作委員会