NMB48、吉田朱里の初センター&卒業シングルがオリコン首位 個性豊かなカップリング曲に見られる“グループの強み”
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参考:https://www.oricon.co.jp/rank/js/w/2020-11-30/
コロナ禍もあり、現在ではアイドルがYouTubeでさまざまな動画の配信をすることがごく普通になっています。そんな状況で思い出すのは、2年前、すでにYouTubeをやっていた、あるアイドルの女の子に理想のYouTuberの名前を聞いたところ、NMB48の吉田朱里の名を挙げていたことでした。メイクなどの「女子力」動画で、すでに吉田朱里は確固たる地位を築きあげていました。
そして、そんな吉田朱里の卒業シングル曲であり、彼女が初めてセンターを務めたのがNMB48の「恋なんかNo thank you!」です。11月30日付のオリコン週間シングルランキングで初登場1位を獲得し、通算21作目のシングル1位獲得となりました。
「恋なんかNo thank you!」のMVは、吉田朱里が他のメンバーのためにメイクアップアーティストや衣装を用意し、YouTubeの撮影を模したシーンも挿入されるなど、まさに彼女が築いてきたものをNMB48で表現する内容です。そして、フックをきかせまくったサビのメロディが強力。作曲の杉山勝彦は乃木坂46に多くの楽曲を提供しており、「制服のマネキン」や「サヨナラの意味」、2021年1月発売予定の「僕は僕を好きになる」も作曲しています。エレキギターやストリングスを前面に押し出した編曲は、48グループのアレンジの要である野中“まさ”雄一。堂々の48歌謡、といった感もあります。
そうしたスタイリッシュな「恋なんかNo thank you!」と対を成しているのが、カップリングの「アイラブ豚まん」。大阪のローカル色の濃い歌詞とともに歌われるポップなナンバーで、多用されているフルートの音色がいいアクセントになっています。
形態ごとのカップリング曲も聴いていきましょう。Type-Aに収録されているTeam Nによる「ダンシングハイ」は、歌謡色が強い楽曲。こうした濃いめの味つけの楽曲も歌いこなせるのはNMB48というグループの強みでしょう。Type-Bに収録されているチームMによる「我が友よ 全力で走っているか?」は、疾走感の強いナンバーで、いっそロックナンバーにしてもいいぐらいですが、そうしないところにNMB48の美意識を感じます。
Type-Cに収録されているチームBIIによる「青春念仏」はすごいタイトルですが、NMB48には2012年の「北川謙二」もあったので驚くべきではないでしょう。そして「青春念仏」は、今回のなかでもっともファンキーなアレンジ。ブラックミュージックが好きな人にはType-Cがおすすめです。劇場盤に収録されている難波鉄砲隊其の九による「告白の空砲」は、1970年代の歌謡曲の香りがします。ブラスセクション映えするメロディです。
そして、吉田朱里のソロ曲「一番好きな花」は完全生産限定盤に収録。穏やかなピアノに導かれて、甘く柔らかな吉田朱里の歌声が響き出します。秋元康による〈一番好きな花を1人探しに行こう〉という歌詞は、48グループのなかでも独自の道を切り拓いてきた吉田朱里を描き出します。
AKB48の紅白落選は、時代の変わり目とも言われます。たしかにシーンは変化しているでしょう。しかし、NMB48は最近のグラビア攻勢によって、48グループのなかでも存在感を以前より増しているようにも感じます。そして何より、音楽的な厚みは『恋なんかNo thank you!』でも変わっていないのです。
■宗像明将
1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter