乃木坂46 堀未央奈、異例の卒業発表 ソロ曲「冷たい水の中」MVに込められた未来に向けた覚悟
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乃木坂46 堀未央奈が、グループからの卒業を発表した。後に堀自身のブログ、公式サイトのニュースとして文面でもアナウンスされたが、彼女にとって最初で最後のソロ曲「冷たい水の中」のMV内で発表をするという、乃木坂46においても異例の形だ。
振付を担当したのはCRE8BOY、そして監督は堀が映画初主演を務めた『ホットギミック ガールミーツボーイ』の山戸結希。「これまでの7年間はあっという間で、いつの間にか大人になってたっていうのが嘘のない気持ちです」。そんな堀の独白から始まるMVは、やがて堀のダンスパフォーマンスへと移っていく。ダウンジャケットを脱いだ堀が纏っているのは、彼女が初めてセンターを務めた7thシングル『バレッタ』の衣装。MVが公開された日付11月27日は、シングルリリースからちょうど7周年の記念日。公開時間の「午後10:15」は堀の誕生日、10月15日を表している。
MVの中にいるのは乃木坂46であり、一人の表現者としての堀未央奈だ。ビルの屋上でずぶ濡れになりながらコンテンポラリーダンスを踊る堀。柔らかく儚げで、時に力強く拳を握る彼女の目は真っ直ぐ未来を見つめている。
前々からスタッフと何度も話し合いを重ね、卒業の時期が決まったのは今年の夏頃。26thシングル『僕は僕を好きになる』の活動をもってグループを離れ、選抜発表以前からメンバーにはそのことを伝えていたという。卒業の理由を言葉にするならば、楽曲の歌詞にある“ぬるま湯の中にいてはいけないと決心した日/もう一度冷たい水へ”に尽きるだろう。
堀が冒頭で口にしているように、今の乃木坂46は温かい空気に包まれた、いつでもいたいと思える場所。16歳でグループに加入した堀は24歳となり、最近ではお姉さんメンバーに数えられることも多くなった。雑誌『ar』のレギュラーモデルに選ばれ、2冊のソロ写真集も発売。向井葉月や林瑠奈といった後輩からも憧れの存在に挙げられるほどに、自身の色を確立させたメンバーへと成長した。
そんな堀にとって大きなターニングポイントとなったのが『ホットギミック』への出演。この作品以降、堀は様々なインタビューで女優を志望していることを公言しており、卒業後はいちから芝居を勉強していくことを「たくさんの人に何かを届けられる人になりたいです」という思いとともにブログに綴っている。今年10月に『ホットギミック』についてのインタビューの中で堀は、演技について話をする中で「ある意味、嘘がつけないというか、嘘が下手な人はこの世界は向いていないなと。自分も正直にやっていかないといけないなと強く思いました」と語っている(参考:堀未央奈と桜田ひよりにとって『ホットギミック』はどんな作品に? 公開から1年を経て明かす思い)。演技に対する自分なりの考え方が表れた言葉であると同時に、時期的にも女優として前を向き始めた堀の思いが滲み出た一つだったように思える。
この7年間のアイドル人生は堀にとって楽しいことばかりではなく、時に厳しい現実を突きつけられることもあった。センター抜擢からの、アンダーメンバーの経験。葛藤の末に、堀は「諦めないこと、貫き通すこと、なんでも楽しむこと、乗り越えられない壁はないこと」を見出していく。堀のそばにいたのは乃木坂46のメンバー、そして青春をともにした同期の2期生。Instagramに綴られている一人ひとりへのメッセージが、固い絆と惜しみない愛を伝えている。
「バレッタ」の制服を脱ぎ捨て、卒業を発表し、「もっともっと冷たい水の中へ」と新たな世界に身を投じる堀。一人の表現者として、山戸監督ともに作り出した「冷たい水の中」は堀が叶えたかった夢の続きであり、これからの未来に向けた覚悟の証だ。
■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter