奥野瑛太、前原滉、細田善彦ら、これからを担う若きバイプレイヤーたちをチェック!
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良作には、脇を固める達者な役者たちが揃っていることが往々にしてある。ひいてはバイプレイヤーの名前があるだけで、おもしろい作品に違いないと信頼できる。そんな、“バイプレイヤー”という名称そのものを認知させたのは、皆が知る人気のおじさん俳優群だが、若い役者たちも負けてはいない。これからますますの飛躍が期待できる、20、30代の若きバイプレイヤーたちをピックアップした。
鋭く意思のある瞳で惹きつける、奥野瑛太
1986年生まれ、34歳の奥野瑛太。今年は連続テレビ小説『エール』(NHK総合)での吟(松井玲奈)の夫・鏑木智彦役を思い浮かべる人が多いだろう。意思の強さを感じさせる瞳が特徴的な奥野には、昭和の礼儀正しい軍人役がとてもよく似合い、登場シーンやセリフは多くなくとも、ひと言ひと言を、きっちり見る者の心に届けた。
そんな奥野は、そもそも映画ファンには、映画デビュー作でもある『SR サイタマノラッパー』(09)と、主演を務めた『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』のMC MIGHTY役で知られる。シニカルな中に、どこか温かさも感じさせる本作は、入江悠監督をインディーズから第一線へと押し上げた。その後も『男子高校生の日常』の松居大悟監督、『クローズEXPLODE』の豊田利晃監督、『TOKYO TRIBE』の園子温監督、『ソレダケ / that’s it』の石井岳龍監督らとの仕事を重ねていったが、近年の作品で特に印象を残したのは大友啓史監督の『3月のライオン』前編(2017年)だ。ここでのスキンヘッドに眉なしの棋士・山崎順慶は、見た目のインパクトもさることながら、内面の葛藤を強く滲ませ、深い印象を残した。鋭さと土臭さに体温を感じさせる奥野の持つ独特のオーラは、これからも重宝され続けるはず。
いい人にも悪い人にも振り切れる幅を感じさせる、前原滉
1992年生まれ、27歳の前原滉は、事務所に所属したのが2015年と、まだ長いキャリアがあるわけではないが、達者な演技と独特の存在感を放つ。一般に認知されたのは2018年の朝の連続ドラマ『まんぷく』(NHK総合)でのいわゆる塩軍団のひとり、眼鏡をかけた小松原完二を演じた時。軍団のなかにあって、ケンカの仲裁をするなど、バランス力のある青年を演じた。また『まんぷく』と同時期に『獣になれない私たち』(日本テレビ)で主人公・昌(新垣結衣)の彼氏、花井京谷(田中圭)の父の若き頃を演じた。そして昨年はNHK大河ドラマ『いだてん』序盤や、田中圭が主演を務めた『あなたの番です』(日本テレビ)のウザ系管理人として爪痕を残した。また2017年の映画『あゝ、荒野』での存在感も光った。
現在は、『バベル九朔』(日本テレビ)に出演中のほか、上映中の映画『とんかつDJアゲ太郎』では、主演の北村匠海と、加藤諒、栗原類、浅香航大とともに、稼業の3代目ブラザーズとして愛すべき仲間のひとりを好演。また来年はすでに『彼女未来』『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』と2つの主演映画が控えており、また違った顔を見ることができるかもしれない。いい役にも悪い役にも振れる幅があり、サラリとしていそうでいて、頭に残るオーラで、ますます出演作を増やしていくに違いない。
長身ですっとした二枚目ながらクセを持った、細田善彦
1988年生まれ、32歳の細田善彦のデビューは2004年。15年以上のキャリアを誇る。今市子のホラー漫画を実写化した『百鬼夜行抄』(日本テレビ系)で主演を務めた同年の2007年に、『ライフ〜壮絶なイジメと闘う少女の物語〜』(フジテレビ系)で狂気的な佐古克己を演じて評判を呼ぶ。182センチの長身と、涼しげな顔立ちで、二枚目路線も自然な容姿だが、どこかクセのある役柄を捉えるのが上手い。
近年の人気作『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)では、ちょっとピントのずれたところのある、みくり(新垣結衣)の兄を淡々と演じて、少ない登場シーンながら印象を残した。また今年は『竜の道 二つの顔の復讐者』(カンテレ・フジテレビ系)で竜一・竜二の復讐に巻き込まれる霧島源平の長男・晃、そして現在放送中の『35歳の少女』(日本テレビ系)では、愛美(橋本愛)の元恋人のサラリーマン・相沢、『共演NG』(テレビ東京系)では戦隊もの出身の俳優・佐久間と、それぞれに個性の異なる役柄を自然に成立させている。一方で主演映画『ピア〜まちをつなぐもの〜』(2019年)のような真摯な役柄での姿も馴染む。だが、二枚目ながら少しクセのある役柄を、より見たいと思わせる役者だ。
年齢不詳で朴訥とした空気感の、森優作
1989年生まれ、30歳の森優作は、塚本晋也監督の『野火』(2015年)の兵士役で注目を集めた。本作が俳優としての本格始動作品にも関わらず、作品の色を表す存在感を残す。そしてNHKの連続テレビ小説は『べっぴんさん』(スペシャルドラマ含む)での子供服店「キアリス」の社員・中西役、『半分、青い。』の鈴愛(永野芽郁)の「運命の相手?」こと小林役などで知名度を上げた。また同じくNHKで放送され、高い人気を得た『アシガール』では、ヒロインの唯(黒島結菜)を美しく変身させた女形の役者・あやめを好演し、第4話のみの出演ながら、「あやめ姉さんを演じたのは誰?」と話題になった。
新型コロナによる公開延期を経て、来年公開が決まった大泉洋主演の話題作『騙し絵の牙』では、大泉演じる速水が編集長を務めるカルチャー雑誌「トリニティ」の編集部員を飄々と演じている。年齢不詳で朴訥としていながら、奥底に何かを秘めていそうな、それでいてニュートラルな空気で、どんな役にでもするりと溶け込む。通訳を目指してイギリスに留学していた経歴があり、英語での芝居へと活躍の場を広げていく可能性もある。
キャリアを積めば積むほどに味が出て、作品を支える強い土台になっていくバイプレイヤー。その存在がいてこそ、形作られる世界がより深く、魅力的になっていく。今回挙げた4人だけでなく、自分なりのバイプレイヤー探しをしてみるのも、また楽しい。
■望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。
■公開情報
『佐々木、イン、マイマイン』
新宿武蔵野館ほか全国順次公開中
監督・脚本:内山拓也
出演:藤原季節、細川岳、萩原みのり、遊屋慎太郎、森優作、小西桜子、河合優実、井口理(King Gnu)、鈴木卓爾、村上虹郎
制作:槇原啓右
プロデューサー:汐田海平
配給:パルコ
(c)「佐々木、イン、マイマイン」
『とんかつDJアゲ太郎』
全国公開中
出演:北村匠海、山本舞香、伊藤健太郎、加藤諒、浅香航大、栗原類、前原滉、池間夏海、片岡礼子、ブラザートム、伊勢谷友介、新田真剣佑(友情出演)
原作:『とんかつDJアゲ太郎』原案:イーピャオ/漫画:小山ゆうじろう(集英社ジャンプ・コミックス刊)
監督・脚本:二宮健
脚本協力:喜安浩平
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2020イーピャオ・小山ゆうじろう/集英社・映画「とんかつDJアゲ太郎」製作委員会
公式サイト:agaru-movie-tda.jp
公式Twitter:@tonkatsuDJmovie
■放送情報
『35歳の少女』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜22:54放送
出演:柴咲コウ、坂口健太郎、橋本愛、田中哲司、富田靖子、竜星涼、鈴木保奈美、細田善彦、大友花恋
脚本:遊川和彦
チーフプロデューサー:池田健司
プロデューサー:大平太、諸田景子
演出:猪股隆一ほか
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/shojo35/
公式Twitter:@shojo35
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)~11月28日(土)全120回
※9月14日(月)より放送再開
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、中村蒼、山崎育三郎、森七菜、岡部大、薬師丸ひろ子ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/