『映画プリキュア』はコロナ禍でどう変わった? 公開サイクルの変化が意味するもの
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10月31日から『映画プリキュアミラクルリープ みんなとの不思議な1日』(以下、『ミラクルリープ』)が全国の映画館で公開中だ。新型コロナウイルス感染拡大の影響で公開延期となっていた本作だが、もともと予定されていた公開日の3月20日から、2度の公開延期を経てようやくの公開だった。
『映画プリキュア』シリーズは長らく、春公開となる『プリキュアオールスターズ』などの「クロスオーバーもの」、秋公開となるTVシリーズ最新作の「単独劇場作品」、この性質の異なる2作品が毎年公開されていた。TVシリーズは毎年2月に新シリーズの放送がはじまるので、“春映画”は最新作の顔見せ、“秋映画”は約半年以上続いた最新作のひとつの集大成という意味合いも大きい。『ミラクルリープ』は前者の“春映画”として制作されながらも、結果的に秋に公開という、少々捻れた状況にある作品となったわけだ。
そして『映画プリキュア』シリーズは毎回、映画館に鑑賞しに来た中学生以下の子どもに「ミラクルライト」という、ボタンを押せば鮮やかに光るミニライトの配布を続けていることでも有名。この「ミラクルライト」の扱いについても、『ミラクルリープ』ではコロナ禍の影響で大きな変更を余儀なくされている。
本稿では公開時期、そしてコロナ禍という状況が『ミラクルリープ』にもたらした変化について、お伝えしていく。
恒例だった「ミラクルライト」の使い方レクチャーがなかった『ミラクルリープ』
『映画プリキュア』シリーズが「ミラクルライト」の配布をはじめたのは、2007年秋に公開された『映画Yes!プリキュア5 鏡の国のミラクル大冒険!』から。以降は2015年の春映画『映画プリキュアオールスターズ 春のカーニバル』を除くすべての作品で、物語のテーマに合わせたマイナーチェンジを行いつつも、ライトの配布は続いている。
未就学児童を含む小さなお子さんが手に持ちながら鑑賞を行うことから、映画冒頭でプリキュアや仲間の妖精たちによって「ライトを振り回さないこと」「光を近くで見ないこと」といった注意事項のレクチャーがあるのも恒例。本編のクライマックスでプリキュアがピンチに陥ったとき、「プリキュア! がんばれー!」の声援とともに子どもたちが掲げたライトが劇場を明るく照らす光景は実に壮観だ。
『ミラクルリープ』でも、本作オリジナルキャラクターの“明日をつかさどる精霊”、「ミラクルン」の姿を模した「ミラクルンライト」が、春公開を予定していた時期から変更なく子どもへの入場特典として配布された。ただし、感染対策のため声を出すことが非推奨となっている情勢もあってか、映画鑑賞中のミラクルンライトの使用は控えるようにとの注意も合わせて行われている。実質的に今回のライトは、帰宅後に楽しむための入場特典となっているのだ。
作中には重要アイテムとして「ミラクルンライト」が登場するものの、使用方法のレクチャーもなし。恐らく終盤にあったであろう劇場の子どもたちにライトでの応援を促す展開もなくなっている。
なお、元々はライトでの応援を前提として制作された作品なので、レクチャーをする映像自体は存在しており、その一部はYouTubeの公式動画で視聴することができる(劇場未公開映像は動画3:00以降の一部)。動画の公開からは、映画館で声を上げて応援できなかった子どもたちに、家でこの動画を観て思い切り応援してほしい、という制作陣の心意気が感じられる。
嬉しいサプライズだった「キュアアース」の登場
もうひとつ、公開時期の延期に伴って行われた変更がある。それはTVシリーズ最新作『ヒーリングっど プリキュア』で8月以降に登場した新しいプリキュア「キュアアース」に関することだ。
当然、『ミラクルリープ』本編にこのキャラクターは登場しない。しかし本作にはいつもの「ミラクルライト」のレクチャーがカットされている代わりに、コロナへの感染対策を促す映像が冒頭にあり、ここでキュアアースが登場。『ヒーリングっど プリキュア』の主人公、キュアグレースと一緒に注意喚起を行っている。
プリキュアを視聴している子どもの中にはこのキュアアースがお気に入りの子も必ずいるはずで、そういったファンにとっては非常に嬉しい演出だったのではないだろうか。
映画館でもプリキュアに会える。そう思ってきたのに、いちばん好きなプリキュアが影も形もなかったらきっとガッカリするだろう。こういったところで子どもたちのことを第一に考えてくれているのが、『プリキュア』シリーズが17年にわたって根強い人気を保っている、最も大きな理由ではないだろうか。
変化していく環境に対して一歩踏み出す勇気を与えてくれる作品
すでに情報解禁されているとおり、次回の『映画プリキュア』は『映画ヒーリングっど プリキュア ゆめのまちでキュン!っとGoGo!大変身!!』のタイトルで、2021年3月20日に全国公開される。
『映画ヒーリングっど♥プリキュア ゆめのまちでキュン!っと GoGo!大変身!!』
⭐️2021年3月20日(土)全国公開決定⭐️🎬特報が劇場限定で先行解禁✨
更に「Yes!プリキュア5GoGo!」との
ドリームタッグも決定💕本編初解禁カットも😍💖映画公式HP▼https://t.co/cTkS4IM3zg#映画ヒープリ #プリキュア pic.twitter.com/2v7SfRgZad
— 東映映画公式 (@Toei_films) October 30, 2020
先輩プリキュアである『Yes!プリキュア5GoGo!』も登場する本作は『ミラクルリープ』とは逆に、春に公開となる“秋映画”……というか、こういったカテゴライズで作風を分けて考えるのは今後難しくなっていくのかもしれない。コロナ禍は本当に様々なものを大きく変えてしまった。
次回作以降「ミラクルライト」の扱いがどうなっていくかも気になるところだ。今回は未曾有の感染症に対して安全が最優先ということで上映中のライトの使用そのものができなくなっていたが、今後は声を出さないのであればライトを振るのは問題ない、となるかもしれない。
逆に「ミラクルライト」の配布が今後行われない可能性もゼロではない。未来のことを考えるとファンとして不安も大きいが、『ミラクルリープ』はまさに、変化していく環境に対して一歩踏み出す勇気を与えてくれる作品だった。
多くの映画作品以上に、コロナ禍による影響を大きく受けた『ミラクルリープ』。しかしこんな状況だからこそ、いっそう尊ぶべきテーマが作中では描かれていた。その内容については本稿の趣旨から逸れるので多くは語らないが、昨今の情勢を憂いている人こそ、いまからでも映画館で本作を鑑賞してみてはいかがだろう。
※『ヒーリングっど プリキュア』の半角スペースはハートマークが正式表記。
■小林白菜
ゲームやアニメーション、漫画などを中心に、作品の魅力について紹介する記事を複数のメディアに寄稿。アニメーションでは『プリキュア』シリーズや『アイカツ!』シリーズなど、女児向けの作品を特に好んでいる。note/Twitter
■公開情報
『映画プリキュアミラクルリープ みんなとの不思議な1日』
全国公開中
声の出演:悠木碧、依田菜津、河野ひより、加隈亜衣、武田華、金田アキ、白石晴香、成瀬瑛美、小原好美、安野希世乃、小松未可子、上坂すみれ、木野日菜、吉野裕行、引坂理絵、本泉莉奈、小倉唯、田村奈央、田村ゆかり、多田このみ、野田順子、福島潤
ゲスト声優:平田広明、稲垣来泉
原作:東堂いづみ
監督:深澤敏則
脚本:村山功
音楽:寺田志保
キャラクターデザイン・作画監督:板岡錦
美術監督:渡辺佳人
CGディレクター:大曽根悠介
色彩設計:佐久間ヨシ子
撮影監督:髙橋賢司
製作担当:堀越圭文
配給:東映
(c)2020 映画プリキュアミラクルリープ製作委員会
公式サイト:spring.precure-movie.com