BTS(防弾少年団)、ファン=ARMYはなぜ団結力が強い? アイドルとの“適度な距離感”を考える
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『LOVE YOURSELF 結 ‘Answer’』で2度目の米ビルボード・アルバム・チャート1位を獲得するなど、K-POPアーティストの中でも特に高い人気を誇るBTS(防弾少年団)。先日、『アメリカン・ミュージック・アワード 2018』の「トップソーシャルアーティスト」に選出され、改めて“ファンダム”の強さを見せつけている印象だ。なぜ他のグループ以上にBTSのファン=ARMYは団結力が強いのか。K-POPアーティストに詳しいライターのDJ泡沫氏に聞いた。泡沫氏はまず、BTSの海外人気の理由について以下のように語った。
「BTSはもともと、韓国以上に海外で人気のあったグループです。韓国でのブレイク前からファンの間でも日本の方が人気がある、と言われていたほどです。また、デビュー直後から規模は小さいながらアメリカでショーケースツアーを行なったり、海外向けのK-POP紹介イベント『KCON』に毎年出演するなど、欧米圏のファンにとってはK-POPアーティストの中でも“よく来てくれるグループ”というイメージもあり、親しみがあったのではないでしょうか。また、『防弾少年団のアメリカンハッスルライフ』(Mnet)という番組で、ブレイク前のBTSがLAでウォーレン・Gやクーリオたちとコラボして曲を制作していたこともありました」
続けて韓国本国の“ARMY”の団結力の理由の一つを教えてくれた。
「韓国にはファンが集まる“コンカ(公式カフェ)”があるのが大きいかもしれません。コンカに登録して会員になって、そこでたくさん発言したり、熱心に参加したりした人が準会員から正会員になることができ、楽しめるコンテンツが増えるというシステムがあります。コンカにいるのはそのグループが好きな人たちだけなので、その中で団結しやすい。日本は公式ファンクラブしかないので、集まると言ってもTwitterなどのSNSやオフ会くらいで、大勢で団結したり、コンサートでサプライズをするのは難しい。一方、韓国ではコンカで告知すればほとんどのファンが見ることができるので、コンサートでのサプライズなどもやりやすいというメリットもあります」
最近では、11月に日本で発売されるシングル収録曲に秋元康が作詞を行うことに対し、韓国本国のファンを中心に議論が巻き起こったことも記憶に新しい。中には所属事務所のBigHitエンターテインメントに直接抗議したファンもいたという。これについて泡沫氏は「コンカで団結したファンが事務所に抗議や要求を出すのはよくあること」と教えてくれた。
「こうした場合、事務所側は何らかの反応を示すことはあっても、実際に要求がそのまま通ることは少ないです。そもそも韓国は“市民の力で国を変えた”という経験があるためか、不満があったら団結して組合を作って事務所に抗議する、という動きがアイドルシーンでも昔からあります。今はネットも発達し、バーチャル上でも繋がれるのでファンの間での団結力がより強くなっているのかもしれません。特に、最近はファンが団結して投票することで獲得できる賞があったり、CDではなくストリーミングがメインになったことで1日中曲を流しっぱなしにして1位にしたりすることができる。ファンの熱意がそのまま数字に表れるようになり、ファンが力を持ちすぎてしまっているところもあるのではないでしょうか」
こうしたファンからの意見の影響は不明だが、秋元康が作詞を手がけた楽曲「Bird」は制作の都合上、今作には収録されないことになった。これに対し泡沫氏は「事実はどうあれ、結果として事務所が韓国のファンの言うことを聞いたように見えてしまう」と懸念する。
「BTSは“自分たちの意思を曲やクリエイションに反映している”のをウリにしており、特にアメリカなどのファンはそこに惹かれている人も多いのですが、今回は最初から最後までメンバーがどういうつもりでやったのかや、この結果に対する意見も分からない。秋元さんの存在が『PRODUCE 48』を通じて韓国でも知られたというタイミング的な問題もあったと思いますが、今やBTSは一年の半分は海外で活動するような世界的人気を誇るグループで、韓国で活動する機会が減っている。韓国ファンからすると、日本オリジナル曲や日本独自の活動への不満もあったのではないでしょうか」
泡沫氏は最後に、今も昔も“アイドルを守りたい”というアイドルファンの気持ちは変わらないのでは、と語ってくれた。現在はインターネットやSNSの発達で以前よりもアイドルへの意見や思いが届きやすくなったように感じるが、今後アイドルとファンの“適度な距離感”について改めて考えていく必要があるのかもしれない。
(文=村上夏菜)