2020年は7作もの映画に出演 萩原みのりが語る、役者としての現在地
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全国公開中の映画『アンダードッグ』と『佐々木、イン、マイマイン』の両作に出演する女優、萩原みのり。今年は『転がるビー玉』『37セカンズ』など7作もの映画に出演し、それぞれの作品で印象的な演技を見せている。
今回、リアルサウンド映画部では萩原にインタビュー。『アンダードッグ』『佐々木、イン、マイマイン』の2作での北村匠海、藤原季節との共演から、2020年の変化、今後の俳優としてのビジョンまで語ってもらった。
「悠二が季節くんでよかった」
ーー『アンダードッグ』『佐々木、イン、マイマイン』と萩原さんが出演する2作が同日公開となります。ある意味正反対とも言える役柄ですが、どのように演じ分けましたか?
萩原みのり(以下、萩原):私は、ほかの人がこういうキャラクターだからこういう風にしようとか、バランスを取ろうとかあまり考えていなくて。自分がその役を演じる上で見えたもの、思ったことを徹底すれば、自ずとバランスは取れるだろうと思っています。自分が周囲を見渡せるほど器用じゃないからというだけなんですが(笑)。
ーー役柄は違えど、やるべきことは変わらないと。
萩原:はい。ただ、『佐々木、イン、マイマイン』に関しては、別れているのに同棲を続けている2人というちょっと複雑な設定で。私が演じるユキと(藤原)季節くん演じる主人公・悠二の関係は、普通はあまり理解されないものだと思うんです。それでもどこか素敵に映ったらいいなとは思っていました。
ーー藤原季節さんとは初共演となります。
萩原:実は18歳のときからかわいがってもらっているお兄ちゃんでもあるんですよ。
ーープライベートでの交流も深い分、やりやすかった?
萩原:そうですね。季節くんって正直な人だから、自分も自然体で会うことができるんです。東京に来てから仲良くなった友達って、女優として現場で会った人たちが多いから、どこか別のスイッチが入る感覚があるんですが、季節くんと会うときはそれがないんです。だから、つい今悩んでいることや不安なことばかり話して、かっこ悪い姿ばかり見せていて。それが逆に、共演する上でよかったと思っています。悠二が季節くんでよかったと思うし、悠二を季節くんがやるんだったら、「ユキは私しか無理でしょ!」ってちょっと強気に言えてしまうというか(笑)。
――相手が季節さんだったからこそできた演技もあったと。
萩原:プライベートでの付き合いが長い分、どうなるのか現場に入るまでは正直わからなかったんです。でもいざ現場に入ったら、季節くんではない、悠二がそこにいて。だから、私もなにも考えずに、ユキとしていることができました。季節くんのおかげだと思います。
――一方の『アンダードッグ』では北村匠海さんと夫婦役での共演です。
萩原:今回初めて夫婦役、母親役を演じさせていただいたのですが、実年齢が二人とも若いので、すごく変な感じでしたし、私たちがちゃんと夫婦、お父さんとお母さんに見えるのかという不安はクランクインの前にはありました。
ーー『アンダードッグ』ではどのように役作りを?
萩原:撮影の初めの段階で赤ちゃんと一緒のシーンを撮ったんですが、匠海くんと2人で抱っこしたり、話しかけたりしていたら、自然と「お父さんとお母さん」という関係性が出来ていった気がします。あと、匠海くんは身体づくりのために、私たちと食べるものが違ったりするんです。そういうディテールを間近で見ることで、隣に寄り添う奥さんとしての気持ちを、お芝居の中だけではない時間で作ることができた気がします。
ーー藤原さんとはもともと親しい仲とのことでしたが、北村さんとの共演はいかがでしたか?
萩原:今回を機に仲良くなりました(笑)。サウナ好きとか、カレー好きとか趣味が似ていたりして。現場でも、一緒にいて楽しかったです。
「どこかこれまでの集大成にも近い」
――この2作での藤原さん、北村さんとの共演は、萩原さんの中では少し特別なようにも感じます。
萩原:そうですね。今まで彼氏や夫がいる役を演じたことがあまりないんですが、今回は2作とも共通して、誰かと一緒にいる役なんです。相手の役者の方と一緒に作り上げるからこそ生まれるものがすごく多くて、不思議な体験でした。季節くん演じる悠二と匠海くん演じる龍太にすごく助けらました。
――改めて、『アンダードッグ』『佐々木、イン、マイマイン』の現場を振り返ってみていかがですか?
萩原:自分が初めて出演した連続ドラマのクランクアップのときに、ある共演者の方から「いつか振り返ったときに、きっとこの現場ほど頑張れた現場ってなかなかないと思う」ということを言われたんです。それがずっと頭に残っていて。そのときの台本を今でも読み返すんですが、もう文字が読めないくらいに書き込みだらけで。見ていて恥ずかしくなるくらいなんです(笑)。たしかに、ここまでの熱量を持って取り組むことって、頭でそうしているつもりでもなかなかできることじゃないと思っていました。でも、この2作とも自信を持って「絶対におもしろいです」「絶対に映画館で観てください」と言える作品なんです。今年が終わる手前の11月27日にこの2作が上映されることが、私としてはどこかこれまでの集大成にも近くて。そんな作品に自分が関われていることがすごくうれしいし、公開が楽しみです。
――2020年の萩原さんはすごく多くの作品に出演されています。萩原さんご自身で、ここ1年で役者として成長したという実感はありますか?
萩原:そう言っていただけるのはすごくうれしいんですけど、まったく実感はないです(笑)。
――ただ、『アンダードッグ』『佐々木、イン、マイマイン』同様に出演作それぞれで経験したものは大きい?
萩原:そうですね。やっぱりいろんな作品に出れば出るほど、自分自身の引き出しが増える感覚はあって、それがすごく楽しいです。役者というお仕事は、いろいろな経験が全てお芝居に活かされることが魅力の一つなのかなと最近ふと思いました。去年より今年の方が経験したものは多いし、来年はさらに多いからもっと楽しくなる……そう思うと、すごくいいお仕事だと思います(笑)。
――2020年の作品の撮影当時を振り返ってみて、具体的にご自身の中でどのような変化を感じますか?
萩原:どんどん不安を口に出せるようになりましたし、監督に相談もしやすくなりました。昔は「そんなこといちいち聞くな」とか「自分の役だろ」とか言われたらどうしようってずっと思っていたから(笑)。最近は、分からなければ聞くし、分かっていることでも分かっている気になっているだけかもしれないから、どんどん監督やスタッフさん、共演者の方々と密にコミュニケーション取るようになりました。その方が、現場も楽しくなるんです。特に去年から今年は、現場での振る舞い方が変わりました。現場で皆さんと一緒に作品を作っているという感覚が強まりました。
――より仕事自体も楽しめるようになったと。
萩原:前向きに現場に行けるようになりました。やっぱり、自分が殻に閉じこもってしまったら、スタッフや監督の方々ともコミュニケーションはできないし、それがそのまま画に映ってしまう。だけど、私が楽しくいろんな方々と会話ができれば、より良いものを映像に残せる。その感覚に、だんだんやみつきになってきている最中です(笑)。
「まだまだ役者を続けていたい」
――役を演じているときの感覚でも変化を感じますか?
萩原:お芝居に関しては、根っこの部分はデビューしたときから何も変わっていなくて。何も変わってなくていいのかと不安にもなるんですが、変われないんですよね(笑)。9年ぐらいずっとこのやり方でやってきたから。あるとき、季節くんにいろいろ悩みを相談させてもらっていたときに、「みのりちゃんの悩みって、昨日お芝居始めた人みたいな悩みだよね」と言われて(笑)。周りに言われるまで気付かなかったことですね。でも、それがいいって彼は言ってくれました。
――ほかの役者の方々とは違う部分かもしれないですね。
萩原:現場に来たときから、すでに楽しそうな方とか、本番で急にお芝居を変えたりする方とか、見ていてうらやましいです。ある意味、『佐々木、イン、マイマイン』で悠二が佐々木を見ていたときと同じような感じかもしれないです。「やっぱり私はああいう風にはなれない」という劣等感というか、悔しさみたいなものはずっとあります。努力してもなれる類のものでもない、ある種の「才能」を感じてしまいます。
――ただ、萩原さんご自身が先ほど語っていたように、ポジティブにはなっている?
萩原:そうですね。だけど、ちゃんと前に進んでいるという自信はまだ得られていないんです。だから、私がずっとテレビで観ていたような方が私の芝居を好きだと言ってくれたり、ファンの方からあたたかい言葉をかけていただけるとすごく救われます。作品のリアクションはすごく気にしちゃいます(笑)。
――二宮隆太郎監督作『お嬢ちゃん』の際は、オファー当時、役者を辞めることばかり考えていたというコメントもありました(参照:萩原みのり×二ノ宮隆太郎監督『お嬢ちゃん』公開へ 萩原「役者で生きていく、という決意の作品」)。あれから時間が経って、役者をやっていてよかったと思う瞬間は増えましたか?
萩原:デビューした頃にお仕事した監督やスタッフの方々と、久しぶりに現場でお会いすることが最近多くて。覚えていてくださったことも嬉しいし、「ちゃんと成長したね」と言ってもらえたときに、何年もの苦労が報われる感じがします。ついこの間、久しぶりにお会いした方も、デビューしてすぐお世話になった監督だったんです。その方は当時、なぜかは分からないんですが、クランクアップの際に私に「向いてるから、辞めちゃだめだよ」って言ってくださって。だから、この前お会いしたとき、すごく嬉しそうにしてくださって。そのときの監督の笑顔を見ただけで、続けていてよかったと思えました。その監督との作品も、公開はまだなんですが、改めて「お芝居ってすごく楽しい」と思わせてくれた作品なんです。そういうタイミングが節目ごとにあるから、まだまだ役者を続けていたいと、自信を持って言えるようになりました。
――萩原さんご自身の中で、最終目標は設定していますか?
萩原:先のことは全くわからないです(笑)。このお仕事を始めた当時も、こんな今になっているとは思っていなかったですし。今がピークになったらどうしようという不安がすごいです(笑)。そうならないように目の前のことを頑張ろうと思っています。
ーー今後挑戦してみたいことはありますか?
萩原:まだまだ一緒にお仕事をしたことがない監督ばかりなので、たくさんの監督の現場に行ってみたいです。もちろん、いろいろな役者の方々ともお芝居したいし、季節くんや、今回は共演シーンが少なかった細川岳くんとも、また一緒に仕事したいです。楽しみはいっぱいあります。周りの方々がもっと喜んでくれるくらいお仕事したいとは思っています。今年こうやって、自分が出演した映画が公開できると、皆さんすごく喜んでくださるんです。そんな環境がもっとずっと続いたら嬉しいです。「萩原みのりを好きでよかった」と言ってもらえるような役者になっていきたいです。
■公開・配信情報
劇場版『アンダードッグ』【前編】【後編】
ホワイトシネクイントほかにて全国公開中
配信版『アンダードッグ』
ABEMAプレミアムにて、2021年1月1日(金)〜配信開始
出演:森山未來、北村匠海、勝地涼、瀧内公美、熊谷真実、水川あさみ、冨手麻妙、萩原みのり、風間杜夫、柄本明
監督:武正晴
原作・脚本:足立紳
音楽:海田庄吾
企画・プロデュース:東映ビデオ
制作プロダクション:スタジオブルー
配給:東映ビデオ
製作:ABEMA、東映ビデオ
(c)2020「アンダードッグ」製作委員会
公式サイト:underdog-movie.jp
公式Twitter:@Movie_UNDERDOG
『佐々木、イン、マイマイン』
新宿武蔵野館ほか全国公開中
監督・脚本:内山拓也
出演:藤原季節、細川岳、萩原みのり、遊屋慎太郎、森優作、小西桜子、河合優実、井口理(King Gnu)、鈴木卓爾、村上虹郎
制作:槇原啓右
プロデューサー:汐田海平
配給:パルコ
(c)「佐々木、イン、マイマイン」
公式サイト:https://sasaki-in-my-mind.com
公式Twitter:@sasaki_inmymind