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THE COLLECTORS、限界を超えた先で歌い叫んだ熱狂のステージ ファンと祝った加藤ひさし還暦記念ワンマンを観て

音楽

ニュース

リアルサウンド

 2020年11月23日、大宮ソニックシティ大ホールにて『THE COLLECTORS, HISASHI KATO 60th BIRTHDAY LIVE SHOW “Happenings 60 Years Time Ago”』が開催された。

 タイトルどおり、加藤ひさし(Vo)が前日の11月22日に還暦を迎えたことを祝うワンマンで、新型コロナウイルス禍で今年3月以降のライブがすべて中止になり、以降、配信ライブなども行っていないため、彼らがステージに立つのはおよそ9カ月ぶり。会場が大宮ソニックシティなのは、加藤の地元が熊谷なので、埼玉県内でセレクトしたのだと思われる。

 観客は客席を一席飛ばして座り、ライブの尺は約1時間で一日2回公演、入場者はマスク必須で歓声はNGなど、新型コロナウイルス感染防止のガイドラインに沿った形で行われた。以下、その2回目のステージの模様をお届けする。

 開演時間の19時きっかりにBGMが大音量のSEに切り替わると照明が落ち、赤と青の照明が点滅する中、中央に縦のレッドカーペットが敷かれたステージに、スーツ姿の古市コータロー(Gt)・山森“JEFF”正之(Ba)・古沢“cozi”岳之(Dr)が登場。

 1曲目「MILLION CROSSROADS ROCK」のイントロが始まると、赤とピンクと白のユニオンジャックカラーのジャケット姿の加藤ひさしが現れ、歌い始めるーーというオープニング。カーペットやジャケットのカラーは、無論、還暦にちなんだ演出で、以降のステージ照明も赤が基調で進んで行く。

 2曲目は、1997年の発表以来、ライブにおける必殺曲として機能し続けている「TOUGH」、3曲目は11月18日にリリースされたばかりのニューアルバム『別世界旅行〜A Trip in Any Other World〜』のリード曲であり、曲にもMVにも真島昌利(ザ・クロマニヨンズ)が参加して話題となった「お願いマーシー」。アルバムに収録された音源どおり、イントロや間奏で加藤がハンドクラップを入れると、オーディエンスもそれにならう。

 音源ではイントロのリフをキーボードが担っているが、このリフをコータローがひとりで弾ききったのを受けて、「いやあ、イントロのギター、こんなにかっこいいなら、キーボードでやらなくてもよかったね」(加藤)、「(加藤が)やろうって言うから」(コータロー)、「こんなかっこいいギター弾けると思わなかったから」(加藤)、「俺、うまいよ?」(コータロー)という、ポッドキャスト『池袋交差点24時』そのままのノリの掛け合いに、オーディエンスがみんな笑顔になる。

 「俺、60(歳)なんだけどさ、いつまでも若いままでいようよ」という加藤の言葉から始まった「Stay Cool! Stay Hip! Stay Young!」ではシャッフルのリズムに合わせて、続く「たよれる男」ではギターイントロに合わせて、再びオーディエンスのハンドクラップが響く。ルールを守って誰も歓声を上げないし、ほとんどの人が座ったままだが、その分、こうしたハンドクラップや曲終わりの拍手には、いっそう力がこもっているように感じる。

 開演前に影アナがこのライブのタイトルを読み上げたことに触れ、「影アナで『HISASHI KATO〜』はやめてほしい、(名前を)逆に言われると照れくさい、恥ずかしい」と加藤。「まあ恥ずかしい恥ずかしいと言いながら、こんな衣装を着て、みんなの前に立ってるんだけど。次はコータローくんの還暦の時もーー」と言うと、間髪入れずコータローが「いやあ、遠慮しとくよ」。また客席に笑顔が広がる。

 「TOO MUCH ROMANTIC!」と「1・2・3・4・5・6・7DAYS A WEEK」、1987年のデビューアルバム『僕はコレクター』収録の2曲をメドレー状態で聴かせる。そして、コータローがギターを爪弾き、それに合わせて加藤が最初の一節を歌い、2人がいったんブレイクすると、ウワーッと客席から拍手が。その拍手の音を切り裂くように、コータローのあのリフが響く。スピッツ「チェリー」やエレファントカシマシ「今宵の月のように」などと並ぶ、90年代の日本ロックを代表する屈指の名曲「世界を止めて」だ。ブランクをまったく感じさせずに……いや、逆にブランクがあった分、喉が温存されていたのかもしれないが、加藤のハイトーンがどこまでも美しくメロディを形にしていく。オーディエンスはみな、声は出せないが、マスクの内側で歌詞の一言一句を口ずさんでいるのがわかる。次の2018年リリースの前作『YOUNG MAN ROCK』からの「ひとりぼっちのアイラブユー」で、ステージの4人から放たれる熱はさらに上がっていく。

 11月9日に「お願いマーシー」をYouTubeで公開したところ、再生回数があっという間に15万回を超えたことについて、「俺は自分たちの力だと信じたい」(加藤)、「マーシーのおかげだよ!」(コータロー)、「来年出すシングルは『お願いロビン(=吉井和哉)』にしよう」(加藤)などという、この日三度目の掛け合いをはさんでから、「よし、じゃあ俺たちの限界を超えていこうぜ!」という言葉からの「限界ライン」で、ライブはいよいよピークに。

 これも『YOUNG MAN ROCK』の曲だが、〈さあ!どうする? 明日何する? 世界はいつだってボクたち次第〉〈アインシュタインの話では 常識なんて言うモノは 18までに溜め込んだ 偏見だらけの 馬鹿な 馬鹿な 馬鹿なコレクション〉というラインは、まるで2020年現在の世の中の状況を歌っているかのようだ。

 ラストは『別世界旅行〜』から「旅立ちの讃歌」。バックトラックのピアノがイントロを奏で始めると、ステージ後方の幕が開き、加藤の足元のレッドカーペットがドラムのcoziの後方までまっすぐ伸びており、そこにミラーボールが置かれていることがわかる。サビでミラーボールが全方位に光を放ち、ギターソロで光が回転、ホール内を銀河のように照らしていくーーという、とても幻想的な演出。

 〈Go Now Go Now 二度と旅立てないだろう 今 旅立たなきゃ きっと きっと/二度と輝かないだろう 今 飛び込まなきゃきっと きっと/二度と追いつかないだろう 今 追いかけなきゃきっと ずっと Go Now〉と、朗々と響く加藤のボーカル。60歳でこんな歌を、こんなに切実に、かつこんなに瑞々しく歌うことができるロックボーカリスト、他にいるだろうか。

 再び回り始めたミラーボールの光を浴びながら、コータローが長尺ギターソロを聴かせ、まず加藤がステージを去る。やがて曲が終わり、演奏を終えた3人もステージを下りると同時に、終演SEで「お願いマーシー」がかかる。それに合わせてまた巻き起こる、オーディエンスのハンドクラップ。曲の途中で客電が点いても、そのハンドクラップは止まらずに続いた。

THE COLLECTORS

■兵庫慎司
1968年生まれ。音楽などのライター。「リアルサウンド」「CINRA NET.」「DI:GA online」「ROCKIN’ON JAPAN」「週刊SPA!」「CREA」「KAMINOGE」などに寄稿中。フラワーカンパニーズとの共著『消えぞこない メンバーチェンジなし! 活動休止なし! ヒット曲なし! のバンドが結成26年で日本武道館ワンマンにたどりつく話』(リットーミュージック)が発売中。