優里「ドライフラワー」豊かな感情表現でバイラルチャート好調 男女の視点を的確に描いた歌詞と“揺らぎ”のある歌声
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参照:https://spotifycharts.com/viral/jp/weekly/latest
Spotifyの「バイラルトップ50(日本)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spotify Top 50チャート」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたプレイリスト。同チャートを1週間分集計した数値の今週分(11月26日公開:11月19日~11月25日集計分)のTOP10は以下の通り。
1位:Broken kangaroo「水平線」
2位:優里「ドライフラワー」
3位:Ado「うっせぇわ」
4位:LiSA「炎」
5位:HAND DRIP「言えない」
6位:SEKAI NO OWARI「silent」
7位:Eve「廻廻奇譚」
8位:Felixsa Jochen「On Fire – Single Edit」
9位:ALI「LOST IN PARADISE feat. AKLO」
10位:松原みき「真夜中のドア〜Stay With Me」
今回は2位にランクインした男性シンガーソングライター、優里の「ドライフラワー」を取り上げたい。
彼は、2020年以降のバイラルチャート界隈ではすでに知られた存在だが、その名前が広く知られるようになったのは「かくれんぼ」のロングヒットが理由だろう。2019年12月1日にデジタルシングルとしてリリースされた「かくれんぼ」は、Spotifyのバイラルチャートでは、2020年4月27日付のデイリーチャートに15位で初登場。5月17日付のデイリーチャート4位を最高位に、以降も長い間バイラルチャートにランクインし続けた。リリースから1年経った今でもミュージックビデオの再生回数は伸び続け、現在2000万回再生を突破している。さらに、人気YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』内のコンテンツ「THE HOME TAKE」で7月10日に同曲が公開された際には、YouTube急上昇動画ランキング4位に入り、この春以降、彼の存在が右肩上がりに注目されていたことが伺える。ちなみに、「かくれんぼ / THE HOME TAKE」の再生回数は700万回を突破している。
今週チャート2位にランクインした「ドライフラワー」は、前述した「かくれんぼ」のアフターストーリー。両曲とも“終わったばかりの恋愛”を歌った繊細なラブバラードだが、歌詞を見ると「かくれんぼ」は男性目線、「ドライフラワー」は女性目線で綴られている。シンプルな言葉ながら、男女差を的確に表現しているところが、実にリアル。タイトルを並べただけでも、違いがわかる。ドライフラワーなんてタイトル、シュールすぎて個人的に心を抉られる思いがある。2曲の歌詞を比較することで、聴き手がそれぞれの楽曲(という名の物語)により入りやすくなるのは明らかで、聴いていて”感情移入”というよりも”自己投影”に近いような感覚があった。だから筆者自身、心を抉られてしまったわけなのだが。
優里の魅力は、その歌声にある。独特の揺らぎがあるその声質は、とても中毒性がある。さらに、その声質を最大限に活かせるスキルもある。ボーカルアプローチからは、歌詞に寄り添って歌うことがベーシックにあることが伺えるが、ファルセットやロングトーン、ビブラートなども、出してもすぐ引くような潔さがあり、自己陶酔することない抜群のバランス感覚も持ち合わせている。このバランス感は、今後バラード以外の曲でも活かされてくるだろうし、このアーティストのマジョリティに直結している部分でもある。
しかしながら特筆すべきは、何気ないところで繰り出される感情豊かなニュアンスだ。「ドライフラワー」の『THE FIRST TAKE』の歌い出しに、その実力が出ている。ナチュラルすぎて一度聴いただけでは気が付かないぐらいだが、2度目からワンフレーズの中でも、複雑な感情を聴きとることができる。歌詞だけに頼らず、歌声でも感情を紡げる表現力こそ、彼の未来につながる最大の武器だ。
■伊藤亜希
ライター。編集。アーティストサイトの企画・制作。喜んだり、落ち込んだり、切なくなったり、お酒を飲んだりしてると、勝手に脳内BGMが流れ出す幸せな日々。旦那と小さなイタリアンバル(新中野駅から徒歩2分)始めました。
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