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『この恋あたためますか』四角関係の矢印逆転? 浅羽の手に戻ったスノードームが意味するもの

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リアルサウンド

 返されたスノードーム。それは食べてもらえなかったスイーツと同じく、交わすことができなかった想いの化身だ。

 『この恋あたためますか』(TBS系)第7話。樹木(森七菜)は、浅羽(中村倫也)への想いを断ち切るために、スノードームをボックスの中に隠す。樹木の告白が聞こえていたという浅羽から「君の気持ちには応えられない」とハッキリ告げられたからだ。浅羽の思いを聞いて、ますます気持ちの整理をつけなければと思うのだが、隠すだけではやっぱり忘れられない。そこで、本人に返すことを決意する。

 プレゼントされたものを返すのは失礼なことだとはわかっていた。だが、どうしても自分の手で捨てることなどできなかった。かといって、持っているうちは気持ちを消すことができない。だから、この恋心と共にスノードームを浅羽の手にねじ込んだのだ。

 「いらなければ捨てればいい」と言いながら、受け取ったスノードームを車の中で一番目のつくところに置く浅羽。樹木が返すシーンを見ていなかったとしても、里保(石橋静河)にはわかってしまう。浅羽が自分の趣味でスノードームなど買わない。これは、かわいいキーホルダーを選んだ樹木の存在が絡んでいることを。そして、そこに確かな気持ちがあるということを……。

 浅羽にとってそのスノードームは、もう旅先のお土産店で売っていたただのスノードームではないのだ。“樹木にあげたスノードーム”だから、言葉とは裏腹に無下に扱うことなんてできなかった。それは、浅羽が土壇場になって「ココエブリィ」を売却できなかったのと同じ理由。ただの会社ではなく、そこに樹木がいる場所だから、売り飛ばすことなどできなかったのだ。

 人はいつも手に入れたいものばかりに目がいくが、なくしたくないものにこそ真意があったりする。浅羽にとって、ずっとすぐそばにあって当然だと思っていた樹木の好意。それは、まるでコンビニスイーツのような安心感。「特別じゃない」なんて言って手放しても、変わらずそこにあるものだと、どこかで高をくくっていたのかもしれない。

 一方で、樹木は新谷(仲野太賀)の告白を受け入れる。「クリスマスまでに、俺が樹木ちゃんの特別になる」新谷のひたむきな想いもまた、樹木にとっては変わらずあるものだと思っていた。一緒にいると安心する。悔しいときも、嬉しいときも、いつもそばにいてくれた新谷と、恋人になれたらきっと楽しいだろう。実際、そんな友達から始まる恋も大アリだ。

 それは浅羽のように、自分が想像もしていなかったような世界に連れて行ってくれる刺激的な恋ではないかもしれない。でも、代わりにあるのは、地に足のついたホッとする幸せ。今は、浅羽への恋心を忘れたい一心ではいるけれど、もしかしたら「特別」と想い合える仲になれるかもしれない。そんな奇跡をクリスマスまでの日々に賭けてみることにしたのだ。
気づけば、新谷→樹木、樹木→浅羽、浅羽→里保への恋の矢印は、里保→浅羽、浅羽→樹木、樹木→新谷と視線の向きが逆転していた四角関係。求めて求めて……それでも手に入らない恋よりも、変わらずそこにあると思っていたものが手からこぼれ落ちていく瞬間のほうが、ずっと切ない。

 樹木が新谷と付き合うことになったと聞いたときの浅羽の表情は、まるで心が停電したような目をしていた。同時に、新谷が落ち込んだ樹木に「また俺が再起動してあげるから」と励ましていたことを思い出す。そういえば、このドラマのタイトルはネオン管で光っていた。ふとしたことで接触不良を起こしたり、バチッと通電したり。気まぐれで、制御が難しい電気と恋心は似ているのかもしれない。

 樹木も、浅羽も、里保も、新谷も。できれば、全員の恋が叶ってほしい。でも、そうはいかないのが、恋の非情なところ。だが、願わくば樹木に告白を受け入れてもらえたことを、あんなにも喜んだ新谷の笑顔が曇ってしまう展開は見たくない。仕事も恋も不器用ながら健気に努力を続ける里保が報われないのも辛い。と言いながら、やっぱりヒロインである樹木と浅羽にも幸せになってもらいたい……。うまくいかないからこそ人を成長させるのも恋の魅力。四角関係の先に、4人がどんな成長を遂げるのか。切ない気持ちを堪えながら、最終章を見届けたい。

■放送情報
『この恋あたためますか』
TBS系にて、毎週火曜22:00~22:57放送
出演:森七菜、中村倫也、仲野太賀、石橋静河、飯塚悟志(東京03)、古川琴音、佐藤貴史、長村航希、中田クルミ、佐野ひなこ、利重剛、市川実日子、山本耕史
脚本:神森万里江、青塚美穂
プロデュース:中井芳彦
演出:岡本伸吾、坪井敏雄
主題歌:SEKAI NO OWARI「silent」(ユニバーサルミュージック)
製作著作:TBS
(c)TBS