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内田真礼、Ray、電音部……声優/メディアミックスコンテンツに訪れた、“エレクトロポップ”ムーブメントを考察

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 11月25日にリリースされた声優・内田真礼の11thシングル『ハートビートシティ/いつか雲が晴れたなら』には、kz(livetune)×TAKU INOUEの豪華タッグによる2曲が収録された。また、魔法×アイドルがテーマのメディアミックスプロジェクト『ラピスリライツ』の伝説的ユニット・Rayのシングル『Beautiful World / HYBRID』や、ダンスミュージックをテーマにした音楽原作キャラクタープロジェクト『電音部』など、声優/メディアミックスコンテンツに、エレクトロサウンドを基調とするアーティストらが次々と参加。新たなムーブメントが広がり始めている。

TAKU INOUEら、エレクトロ/クラブ寄りのアーティストによるイメージの一新

 これまで内田真礼は、R・O・N、田淵智也、Tom-H@ck、大石昌良などロック寄りのクリエイターを多く迎えていたが、新シングルでは、エレクトロ/クラブ寄りのアーティストを招きイメージを一新。新たな表情を見せている。

 TAKU INOUEの作詞・作曲、kz(livetune)の編曲による「ハートビートシティ」は、ファンタジックで浮遊感溢れるサウンドと軽快な四つ打ちのビートに乗せて、内田はリラックスしたやわらかい歌声を聴かせている。kz(livetune)の作詞・作曲、TAKU INOUEの編曲による「いつか雲が晴れたなら」は、kzらしいピアノのイントロが印象的。これまでの元気で明るいロックやポップスを信条としてきた内田が、キラキラとした胸キュンのエレクトロサウンドと高揚感溢れるビートによって、新たなステージへとクラスチェンジした1枚となった。

内田真礼 11thシングル「ハートビートシティ/いつか雲が晴れたなら」Music Video

 kz(livetune)は初音ミクのオーソリティーで、アニメファンの間ではClariSの「irony」を手がけたことや、中島愛、三森すずこ、花澤香菜、水瀬いのり、鈴木みのりなどへの楽曲提供で知られているが、一方でZEDDやAfrojackなどの楽曲リミックスを手がけるなど、DJとしてもワールドワイドに活躍している。TAKU INOUEも同様、『アイドルマスター』シリーズなど人気ゲームの楽曲を手がける一方、STU48やVTuberの月ノ美兎、キズナアイなどを手がけ、エレクトロとアイドルの架け橋的な起用が際立つ。

 TAKU INOUEは、11月25日にリリースされたRayのニューシングル『Beautiful World / HYBRID』も手がけている。『ラピスリライツ』は、魔法×アイドルをテーマに、ゲームやアニメなどメディアミックス展開されているコンテンツ。その中で、すでに解散した伝説のユニットという設定なのがRayで、各キャラクターを演じる声優も、花澤香菜、南條愛乃、雨宮夕夏、上坂すみれ、佐倉綾音と伝説級だ。これだけの人気声優5人が一つの作品で顔を揃えるという奇跡もあいまって、どちらの表題曲にも「尊い」との声が寄せられている。

【試聴動画】Ray「Beautiful World / HYBRID」【ラピスリライツ】

 「Beautiful World」は、TAKU INOUEが作詞・作曲・編曲を務め、もう1曲の「HYBRID」は、ヒゲドライバーが作詞・作曲、編曲をヒゲドライバーとTAKU INOUEが務めている。世界を慈しむようなポジティブな歌詞と高揚感溢れるビート、無限の宇宙空間を想像させるスケール感で、聴く者を至福の時へと導いてくれる「Beautiful World」。ファンにはたまらない口上で始まるアイドルソング「HYBRID」は、多彩な展開と疾走感溢れるサビのメロディが秀逸。各メンバーのボーカルの個性が際立っており、非常に聴き応えがある。

エレクトロの高揚感と声の癒やしが求められる時代

 そしてもう一つ注目なのが、今年6月にプロジェクト始動が発表されたメディアミックスプロジェクト『電音部』だ。『電音部』は、アキバ、ハラジュクなど東京の各都市を代表する高校の電音部がしのぎを削るという内容で、輝夜月などを手がけるイラストレーターのMika Pikazoによるキャラクターデザインも話題だ。すでにアキバエリアの外神田文芸高校による『New Park』、ハラジュクエリアの神宮前参道學園による『New Pallet』という2作のミニアルバムがリリースされており、今月下旬と来年1月にもリリースが続く。

【11/25CD発売】Future (feat. ミディ)試聴動画 #電音部

 参加クリエイターは、前述のkz(livetune)とTAKU INOUEの他、“おしゃかわポップ”ユニット=TEMPLIMEのトラックメイカーであるKABOSNIKKI、水曜日のカンパネラのケンモチヒデフミ、声優・小野坂昌也のEDMユニット=EMERGENCYを手がけたDJ/トラックメイカーのYunomi、Ujico*名義でも活動するエレクトロアーティストのSnail’s House、DTM音楽ユニットのパソコン音楽クラブ、「ホロライブゲーマーズ」のテーマソングも手がけた韓国のエレクトロミュージシャン=Aiobahn、福岡出身のシンガーソングライターでトラックメイカー/プロデューサーとしても活動するYUC’eなど、多彩なクリエイターが参加している。

 これまで女性声優アーティストは様々な音楽ジャンルと融合し、かつて一世を風靡した音楽ジャンルを新たなブームとして再ブレイクさせてきた。かつては渋谷系、近年はシティポップ、そして次に注目されているのが、2000年前後のフロア志向のエレクトロポップだろう。これは、近年増えているアニソンのクラブイベント=アニクラや、リズムゲームにおいて既存曲をリミックスしたりオリジナル曲を提供するDJ/トラックメイカーに対する、注目度の高さとも符号する。また、VTuberとの相性度が高いトラックメイカーも多く、彼らのサウンドはネットを通じて急速に世界へと広まっている。コロナの時代、エレクトロの高揚感と2.5次元のキャラクター、声優の声の癒やしが求められているのかもしれない。

■榑林史章
「山椒は小粒でピリリと辛い」がモットー。大東文化大卒後、ミュージック・リサーチ、THE BEST☆HIT編集を経て音楽ライターに。演歌からジャズ/クラシック、ロック、J-POP、アニソン/ボカロまでオールジャンルに対応し、これまでに5,000本近くのアーティストのインタビューを担当。主な執筆媒体はCDジャーナル、MusicVoice、リアルサウンド、music UP’s、アニメディア、B.L.T. VOICE GIRLS他、広告媒体等。2013年からは7年間、日本工学院ミュージックカレッジで非常勤講師を務めた経験も。