アニメ『ヒプノシスマイク』からハマること間違いなし! 無数の入り口がある“ヒプマイ沼”
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キングレコード内のレーベルEVIL LINE RECORDSが手がける、音楽原作のキャラクターラッププロジェクト『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』(以下、ヒプマイ)。男性声優たちがキャラクターに扮して、MCバトルを繰り広げる本作は2017年9月に始動して以降、原作CDをはじめ、コミカライズ、音楽イベント、2.5次元舞台など幅広いメディアミックスを展開してきた。これまで『テニスの王子様』『おそ松さん』といった“漫画”や、『刀剣乱舞』『あんさんぶるスターズ!』など、“ゲーム”を起点に広がりを見せる人気コンテンツは存在したが、あくまでも“音楽”が原作という点でヒプマイは一線を画している。
ヒプマイがいかに人気なのかを理解してもらうために列挙するなら、公式Twitterのフォロワーは77.2万、YouTubeチャンネルの登録者数は91.7万人(12月1日時点)。雑誌『anan』や『ViVi』でも特集が組まれ、2019年の「ネット流行語100」にも10位にランクインするなど、女性を中心に熱狂的な支持を受けている。
そんなヒプマイが今年、新たな動きを見せた。一つは、原作CD(一部オリジナル曲あり)に合わせてリズムゲームをプレイしながら、オリジナルストーリーも楽しめるスマートフォン向けアプリゲームのリリース。そして、もう一つが初のTVアニメ化だ。新型コロナウイルスの影響で延期となっていたが、10月2日にTVアニメ『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rhyme Animaがスタートし、すでに9話まで放送されている。
音楽、漫画、舞台、ゲームとあらゆるメディアを網羅しているヒプマイ。その中でアニメはどのような位置付けとなっているかを考える前に、まずはヒプマイの世界観を改めて紹介したい。舞台は、女性が覇権を握る「言の葉党」によって武力抗争が根絶されたH歴の日本。西暦××年に勃発した第三次世界大戦後という設定なので、仮想の近未来と理解してもいいかもしれない。
戦争で世界人口の3分の1を失ってもなお、武器による争いを辞めなかった愚かな男たちに代わり、言の葉党は男性を完全排除した“中王区”と呼ばれる区画で女性中心の政治を行っている。
一方、男性たちは中王区外のイケブクロ・ディビジョン、ヨコハマ・ディビジョン、シブヤ・ディビジョン、シンジュク・ディビジョンなどの区画で生活。それでも争いは終わらず、言の葉党は人の精神に干渉する特殊なマイク「ヒプノシスマイク」を男性たちに与え、互いの領土を賭けたラップバトルで争わせた。最終的には中王区で行われる決勝トーナメントで各ディビジョンでの予選を勝ち上がったMCチーム同士がぶつかる。プロジェクト始動時、明かされた設定はざっとそのくらい。
あとは、各ディビジョンで圧倒的な力とカリスマ性を誇るイケブクロ代表の“Buster Bros!!!”、ヨコハマ代表の“MAD TRIGGER CREW”、シブヤ代表の“Fling Posse”、シンジュク代表の“麻天狼”の存在。それぞれチームには3人のメンバーが所属しており、第1弾CDシリーズに収録された各ドラマトラックにおいて彼らの結成秘話が描かれた。アニメではまだ放送されていないのでネタバレは避けるが、ラップバトル1回目の優勝チームはファンによる投票で決まっている。
さらに、昨年9月に開催された声優陣出演の4thライブで新たにオオサカ・ディビジョン、ナゴヤ・ディビジョンが追加。ディビジョン・ラップバトル後を描いたCD音源のドラマトラックと、各代表チーム結成前の出来事や、チーム結成からラップバトル決勝までをさらに深掘りした3つのコミカライズで、少しずつヒプマイの全体像やキャラクター同士の関係性が見えてきている段階だ。プロジェクト指導から約3年経ち、かなり内容も複雑化している上に音源CDのドラマトラックやコミカライズなど、様々なメディアを通して物語を把握しなければいけない。
そんな中、始まったTVアニメは初めてヒプマイを知る人にも親切な内容となっている。第1話は「言の葉党」の党首と側近がラップバトル開催にあたり、各ディビジョンの重要チームを監視カメラで調査するといった内容。
視聴者は彼女たちと同じ視点で、メインとなる4つのチームの特徴を知ることができる。少し話はそれるが、前述の通りこの世界には武器というものは存在しない。だが強引な抑えつけが原因か、血の気の多い人間が溢れ治安も悪いのが特徴だ。使用者が特定されない違法マイクも世に出回り、イメージしづらいかもしれないが、強盗犯などは人質にナイフや銃ではなくマイクを向けている(悪人がヒプノシスマイクに順応している姿はちょっと笑えるが、ツッコミながら楽しめるのもヒプマイの愛嬌)。
だからこそ、有名人である各ディビジョンの代表チームには次々と厄介ごとが降りかかるのだが、第2話からはメンバー同士が協力して困難を乗り越える姿が描かれた。きっと観ているうちに、何となく12人に及ぶキャラクター性も把握できたのではないだろうか。
そして、第9話からついに1回目の決勝トーナメントに突入した。若干異なるが、2018年発売のCD「Buster Bros!!! VS MAD TRIGGER CREW」に収録されたドラマトラックの内容にあたる。メンバーに関わる様々な“過去”も要所に散りばめられ、初見の人をヒプマイの世界観に惹き込む仕掛けもばっちり。また、毎話新曲が登場するので、既知のファンにとっても楽しみがある。
ラップバトルを繰り広げる場面はキャラクターが一部3D化され、まるでMVのような気合いの入れようだが、それもそのはず。ヒプマイは“音楽”原作のプロジェクトなので、楽曲作りにはかなりこだわっている。例えば、これまでZeebraやCreepy Nuts(R-指定・DJ松永)、ゴールデンボンバーの鬼龍院翔など、名だたるアーティストが楽曲を提供。さらに、オリエンタルランドの藤森慎吾、『ドラえもん』ジャイアンの声優で知られ、本作ではBuster Bros!!!のリーダー・山田一郎役を務める木村昴も“好良瓶太郎”名義で作詞を手がけている。中毒性のある楽曲と、初挑戦とは思えない声優陣の本格的なラップにも注目だ。
音楽やキャラクター、漫画やゲームなど、あらゆる入り口が準備されているヒプマイ。門をくぐると奥には無数の扉が広がっているため、いつの間にか出口も入り口も見えない“ヒプマイ沼”にハマっているかもしれない。
■苫とり子
フリーライター/1995年、岡山県出身。中学・高校と芸能事務所で演劇・歌のレッスンを受けていた。現在はエンタメ全般のコラムやイベントのレポートやインタビュー記事を執筆している。Twitter
■放送情報
『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』
TOKYO MXほか、毎週金曜日24:00〜放送中
声の出演:木村昴、石谷春貴、天﨑滉平、浅沼晋太郎、駒田航、神尾晋一郎、白井悠介、斉藤壮馬、野津山幸宏、速水奨、木島隆一、伊東健人、小林ゆう、たかはし智秋ほか
原作・音楽制作:EVIL LINE RECORDS
監督:小野勝巳
シリーズ構成:吉田伸
キャラクターデザイン:芝美奈子
総作画監督:芝美奈子、落合瞳、竹内由香里
サブキャラクターデザイン:川口千里、新谷真昼
プロップデザイン:江間一隆
美術監督:岡本綾乃
色彩設計:ホカリカナコ
撮影監督:宮脇洋平
CG監督:野間裕介
編集:西村英一
音楽:R・O・N
音響監督:本山 哲
音響制作:HALF・H・P STUDIO
制作:A-1 Pictures