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芸歴60年 加山雄三に注がれ続ける“憧れの視線” 甲本ヒロト、横山剣、奥田民生ら提供曲に感じる強いリスペクト

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 「君といつまでも」や「お嫁においで」など、今に歌い継がれる昭和の名曲をいくつも生み出した加山雄三。60年代は世にエレキブームを巻き起こし、90年代には『24時間テレビ』でお馴染みの「サライ」を作曲したことはあまりにも有名。現在83歳の加山雄三が、芸能生活60周年を記念した13年ぶりのオリジナルアルバム『DEDICATED to KAYAMA YUZO』を12月2日にリリース。真島昌利、甲本ヒロト、つんく♂、奥田民生などそうそうたるアーティストが楽曲提供で参加のほか、THE King ALL STARSや、グループサウンズの伝説アーティストが集結したTHE G.Sなど、加山と縁のあるアーティストや親交のあるアーティストが集結し、加山雄三へのリスペクトと愛が溢れた作品が完成した。

60年代の加山雄三は若者カルチャーの最先端

【加山雄三】「DEDICATEDtoKAYAMAYUZO」(2020年12月2日発売)

 今から60年余り前の加山雄三は、今で言えば菅田将暉や米津玄師のような、当時の若者カルチャーをリードする先鋭的な存在だった。加山が主演を務めた映画『若大将』シリーズは全17作が製作され、劇中で加山が演じた若大将こと田沼雄一は、当時庶民の憧れだったヨットやサーフィンなどのマリンスポーツやスキーなどのウィンタースポーツをたしなみ、華麗にエレキギターを弾きこなす。それだけでなく柔道、ラグビー、サッカーとスポーツも万能だ。それは決して映画の世界のことだけではなく、加山自身も湘南に育った慶応ボーイであり、学生時代にはバンドやボクシングに熱中し、スキーで国体に出場した経験も持つ。1961年に「夜の太陽」で歌手デビューして以降は『NHK紅白歌合戦』に17度出場、弾厚作というペンネームで作曲も行い、1965年に自身が作曲した「君といつまでも」が350万枚の大ヒットになったほか、24時間テレビのテーマ曲「サライ」を作曲したことでも知られている。

 世代を越えたアーティストとの共演の歴史は、20年以上にも及ぶ。還暦を迎えた1997年に日本初のトリビュートアルバムとして、『60 CANDLES』がリリースされる。これにはカールスモーキー石井、槇原敬之、TUBE、バブルガム・ブラザーズ、TOSHIなどが参加した。2014年には、キヨサク(MONGOL800)、佐藤タイジ(シアターブルック)、古市コータロー(ザ・コレクターズ)、名越由貴夫(コーパス・グラインダーズ)、ウエノコウジ(the HIATUS)、武藤昭平(勝手にしやがれ)、タブ・ゾンビ(SOIL&”PIMP”SESSIONS)、スチャダラパーらとTHE King ALL STARSを結成。『FUJI ROCK FESTIVAL ’14』などに出演し、翌年の2015年にはミニアルバム『I Simple Say』をリリースした。さらに2016年から4回にわたって『若大将フェス』を開催。さだまさしや森山良子などのほか、奥田民生、ももいろクローバーZ、ケツメイシ、氣志團、平井大、KEYTALKなど世代もジャンルも越えた共演が毎回話題を集めた。アルバム『DEDICATED to KAYAMA YUZO』は、加山のそうした世代もジャンルも越えた活動の集大成とも呼べる作品だ。

愛され続ける理由がこのアルバム

 アルバムはキヨサク(MONGOL800)が作詞作曲を手がけた「いつまでも君を」で幕を開ける。「君といつまでも」をオマージュしたスウィートなラブソングで、鼻の横を指でこすりながら照れくさそうに〈幸せだな〜〉と話す「君といつまでも」の有名なセリフが、英語で登場する。奥田民生が作詞作曲した「家においでよ」は、「Boomerang Baby」のオマージュだ。60年代バブルガムポップの軽やかなコーラスとサウンドの上で、加山の色褪せないボーカルが心地よく響く。また斉藤和義の「キミの涙」は、Aメロの冒頭を聴いて加山の「夜空の星」のオマージュだと感じた人は多いだろう。加山の様々なテイストを凝縮しながらメッセージも込めたところは、さすが斉藤といったところだろう。

 加山と言えばモズライトギターの名手としても有名で、エレキギターをかき鳴らしながら歌う「蒼い星くず」や、加山雄三とザ・ランチャーズ名義によるインストのサーフロックナンバー「ブラック・サンド・ビーチ」などが有名。横山剣(クレイジーケンバンド)が作曲したインストナンバー「Little Tokyo」には、「蒼い星くず」やザ・ベンチャーズなどを思わせるフレーズがたくさん登場。TUBEの前田亘輝が作詞、春畑道哉が作曲した「夏のひまわり」も同様、歌モノではあるが、加山のGS色や60年代のサウンドに対するリスペクトが随所に感じられる楽曲になった。

 今作には、現代のアーティストが60年代のGSブームと融合するといった側面も持っている。今作には、前述のTHE King ALL STARSの他、THE G.S、ハイパーランチャーズ、加山雄三ツアーバンドが各曲の演奏を務めている。THE G.Sは、ブルー・コメッツの三原綱木、ザ・ワイルドワンズ、パープル・シャドウズの今井久、ザ・ゴールデン・カップスのミッキー吉野といった、60年代のGSブームの立役者が名を連ねる。ハイパーランチャーズもザ・ワイルドワンズのメンバー二人が参加し1994年に結成されたバンドだ。加山と同じ時代を共に過ごした盟友による名演、そこに現代のアーティストが加わる時代を越えた共演は必聴だ。

 ザ・クロマニヨンズの甲本ヒロトと真島昌利による先行配信曲「愛しのキャンディマン」と「行こうぜBABY!」は、2人の加山に対するシンプルで熱い思いがほとばしり、それを真っ向から受け止める加山の懐の深さ。この2曲は、アルバムに参加したアーティスト全員の思いが体現されているようで感動的だ。

 甲本による「愛しのキャンディマン」はシンプルなガレージパンクといった雰囲気で、加山=キャンディマンが自分にとってどれほど大きな存在かを歌う。加山の歌は実に清々しく、甲本の呼びかけに対するアンサーのようで、まるで楽曲の中で対話をしているようだ。ラストの真島昌利による「行こうぜBABY!」はメロウなロックバラードで、加山がどんなに追いかけても追いつけない儚くて憧れの存在であることを歌う。スケールの大きな演奏も聴き応えがあり、最後にクラップと共に奏でられる哀愁のあるギターソロは、60年という時が走馬灯のように流れるようで何とも感動的だ。

 近年はゲーマーであることで注目を集めたほか、バラエティ番組でDAIGOや千葉雄大と親戚であることが判明するなど、新鮮な話題を提供し続けている加山。たゆまぬ努力と好奇心で新しいものを追い求め、それが仕事であっても、音楽であっても趣味であっても、とことんまで追求する。こんな歳の取り方をしたいと思う、憧れの存在がここにいる。加山雄三が時代を越えて多くのファン、多くのアーティストから愛され続ける理由の答えが、このアルバムの中にはある。

■榑林史章
「山椒は小粒でピリリと辛い」がモットー。大東文化大卒後、ミュージック・リサーチ、THE BEST☆HIT編集を経て音楽ライターに。演歌からジャズ/クラシック、ロック、J-POP、アニソン/ボカロまでオールジャンルに対応し、これまでに5,000本近くのアーティストのインタビューを担当。主な執筆媒体はCDジャーナル、MusicVoice、リアルサウンド、music UP’s、アニメディア、B.L.T. VOICE GIRLS他、広告媒体等。2013年からは7年間、日本工学院ミュージックカレッジで非常勤講師を務めた経験も。

■リリース情報
『DEDICATED to KAYAMA YUZO』
12月2日(水)リリース
¥3,000(+税)
ジャケットデザイン:吉田ユニ   
購入はこちら

<収録楽曲>
1.「いつまでも君を」作詞/作曲:キヨサク
2.「Little Tokyo」作曲:横山剣(Instrumentaral) 
3.「キミの涙」作詞/作曲:斉藤和義 
4.「愛しのキャンディマン」作詞/作曲:甲本ヒロト 
5.「愛しの流れ星」作詞:Elvis Woodstock 作曲:つんく♂ 
6.「夏のひまわり」作詞:前田亘輝 作曲:春畑道哉  
7.「ワイキキシェル」作詞:比嘉栄昇  作曲: 上地等
8.「桑港   – San Francisco -」作詞・作曲:横山剣 
9.「家においでよ」作詞/作曲:奥田民生 
10.「行こうぜBABY!」作詞/作曲:真島昌利

<Bonus Track>
11.「Forever with you~永遠の愛の歌~」/加山雄三&The Rock Chippes
作詞:さだまさし 作曲/編曲:高見沢俊彦
歌:加山雄三、森山良子、谷村新司、南こうせつ、さだまさし、THE ALFEE

楽曲データ
1.「いつまでも君を」
キヨサク(MONGOL800)dedicated to KAYAMA YUZO
作詞/作曲:キヨサク 編曲:高野勲 
演奏:THE King ALL STARS
名越由貴夫(Co/SS/gZ)、ウエノコウジ(the HIATUS)、池畑潤二(ROCK’N’ ROLLGYPSIES)、タブ・ゾンビ(SOIL&” PIMP”SESSIONS)、高野勲
※Additional member:美央ストリングス

2.「Little Tokyo」(Instrumentaral)
横山剣(クレイジーケンバンド)dedicated to KAYAMA YUZO
作曲:横山剣 編曲:THE G.S
演奏:THE G.S
三原綱木(ブルー・コメッツ)、鳥塚しげき・植田芳暁・島英二・加瀬友貴(ザ・ワイルドワンズ) 、今井久(パープル・シャドウズ)、ミッキー吉野(ザ・ゴールデン・カップス)

3.「キミの涙」 
斉藤和義 dedicated to KAYAMA YUZO
作詞/作曲:斉藤和義 編曲:THE G.S
演奏:THE G.S
三原綱木(ブルー・コメッツ)、鳥塚しげき・植田芳暁・島英二・加瀬友貴(ザ・ワイルドワンズ) 、今井久(パープル・シャドウズ)、ミッキー吉野(ザ・ゴールデン・カップス)

4.「愛しのキャンディマン」
甲本ヒロト(ザ・クロマニヨンズ) dedicated to KAYAMA YUZO
作詞/作曲:甲本ヒロト 編曲:高野勲 
演奏:THE King ALL STARS
藤井一彦(THE GROOVERS)、フミ(POLYSICS)、武藤昭平( 勝手にしやがれ)、山本健太、高野勲

5.「愛しの流れ星」
リリー・フランキー、つんく♂ dedicated to KAYAMA YUZO
作詞:Elvis Woodstock 作曲:つんく 編曲:鈴木俊介

6.「夏のひまわり」 
TUBE dedicated to KAYAMA YUZO
作詞:前田亘輝 作曲:春畑道哉 編曲:THE G.S
演奏:THE G.S
三原綱木(ブルー・コメッツ)、鳥塚しげき・植田芳暁・島英二・加瀬友貴(ザ・ワイルドワンズ) 、今井久(パープル・シャドウズ)、ミッキー吉野(ザ・ゴールデン・カップス)

7.「ワイキキシェル」 
BEGIN  dedicated to KAYAMA YUZO
作詞:比嘉栄昇  作曲: 上地等 編曲:五十嵐宏治 
演奏:加山雄三 ツアーバンド
五十嵐宏治、沼澤尚、山内薫、稲葉政裕
※Additional member:今野均、坂井”ラムジー”秀彰、芳賀義彦

 8.「桑港   – San Francisco -」 
横山剣(クレイジーケンバンド)dedicated to KAYAMA YUZO
作詞/作曲: 横山剣 編曲:五十嵐宏治 
演奏:加山雄三ツアーバンド
五十嵐宏治、沼澤尚、山内薫、稲葉政裕

9.「家においでよ」
奥田民生 dedicated to KAYAMA YUZO
作詞/作曲:奥田民生 編曲:宮澤謙 
演奏:ハイパーランチャーズ
島英二、植田芳暁、柴山好正、宮澤謙、脇山剛、山内薫
※Additional member:安奈陽子

10.「行こうぜBABY!」
真島昌利(ザ・クロマニヨンズ) dedicated to KAYAMA YUZO
作詞/作曲:真島昌利 編曲:高野勲 
演奏:THE King ALL STARS
古市コータロー(THE COLLECTORS)、佐藤タイジ(シアターブルック)、 ウエノコウジ(the HIATUS)、クハラカズユキ、高野勲
※Additional member:美央ストリングス

Bonus Track

11.「Forever with you~永遠の愛の歌~」
加山雄三&The Rock Chippers
作詞:さだまさし 作曲/編曲:高見沢俊彦 
歌:加山雄三、森山良子、谷村新司、南こうせつ、さだまさし、T HE ALFEE

加山雄三公式HP