「夏、至るころ」池田エライザの監督手腕をリリーが称賛「70歳のベテラン」
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池田エライザ
「夏、至るころ」の初日舞台挨拶が本日12月4日に東京・シネクイントで行われ、キャストの倉悠貴、リリー・フランキー、原日出子、監督を務めた池田エライザが登壇した。
本作は福岡県田川市を舞台に、幼なじみの高校生2人と不思議な少女のひと夏の出来事を描いた青春映画。映画24区が「地域」「食」「高校生」をキーワードに全国の自治体と組んで製作する「ぼくらのレシピ図鑑」の第2弾作品であり、池田が監督デビューを果たした。倉と石内呂依が幼い頃から祭り太鼓を一緒に叩いてきた親友同士の大沼翔と平川泰我を演じているほか、ギターを持った不思議な少女・都にさいとうなり、翔の祖父母にリリーと原が扮している。「ぼくは麻理のなか」「青と僕」の下田悠子が脚本を担当した。
リリーは開口一番「おじいちゃん役をやったのが初めて。演じると老けますね。ここにもおじいちゃんとして呼ばれてるわけですもんね」と挨拶し、笑いを誘う。コロナ禍での延期を経てようやく初日を迎えた池田は「2年前から動き始めて、やっと皆様にお届けすることができる。1人ひとりが少しでも穏やかな気持ちになればいいなと思って作ってきた映画です」と感無量の表情を見せた。
本作で映画初主演を務めた倉は、クランクインの2週間前から田川に住み込み、和太鼓の練習に励んでから撮影に臨んだ。「2週間ずっと。手が血だらけになるぐらい大変でした。でも太鼓があったおかげで役に入り込みやすかったという思いもあります。イヤホンでは田川弁の音声を聴いていて、撮影のときには素で田川弁が出るようになっていました」と回想。池田は「合宿前と後では体つきも顔つきも、方言のなじみ方もぜんぜん違くて。街の空気をまとってる感じがして、その瞬間すごく感動したのを覚えてます」と倉の変貌ぶりを語った。
NHKの音楽番組「The Covers」でMCをともに務め、かねてから親交のあったリリーと池田。リリーは、その監督としての手腕を「すごく安定感のある的確な監督。仕上がりを観ても、23歳のかわいらしい女の子が撮ったと言うより、70歳のベテランのじいさんが撮った映画のよう(笑)。でもセリフやエピソードの細かいところに、池田監督のメッセージがちりばめられてる」と称賛。「翔が抱える思いは大人になってもあるジレンマ。今年の夏は皆さん出かけることもできなかったと思うので、この映画で夏の甘酸っぱさをコリコリしてもらいたい」と、アピールした。
続く原も「現場の監督を見ていて間違いないという確信はありました。若い監督だと迷って頭を抱えながら撮影する現場もたくさんある。けど池田監督は迷いがない。とても俳優がやりやすくて、無駄な画がないし、スムーズな現場。本当にびっくりしちゃった。優秀な映画監督です」とべた褒め。さらに「特に若い俳優さんたちが魅力を引き出されてる。初主演でここまで魅力を引き出してもらった倉くんは本当にラッキー」と重ねた。ベテラン俳優陣の演技にはそこまで演出を付けなかったという池田は「大先輩である皆様方は、それぞれ気持ちの部分は素敵に解釈されてる。こういう言い方はおかしいですけど、とても気が楽でした。若い俳優もリリーさんや原さんと共演するときは、いい顔をするもので。ここは私がああだこうだ言うより、お二人の空気感に現場を任せてもいいのかなと思ってましたね」と、現場での立ち振る舞いを明かした。
池田とのタッグを「1シーン1シーン向き合って、一緒に作り上げた感覚」と語る倉は、劇中で翔が涙するシーンに言及。「最初は感情がなかなかうまく入らなくて、でも、池田監督がすごく優しく寄り添ってくれた。そこで『池田監督も翔なんだ』と気付いて、すっと感情が入ってお芝居できたんです」と振り返る。池田にとっても印象深い出来事だったそうで「もちろん倉くんは涙を流せるんだけど、現場の緊張感や若いなりの整理のつかなさで感情の辻褄が合わなかった。1回撮影を止めて、あくまで翔ちゃんに対して何が悔しかったの? 何が嫌だったの?と話しかけ続けて」と自身の演出を述懐。そして「すごく魅力的な画が撮れました 」と手応えを語った。
最後に、池田は「伝えたいことをこの映画に素敵な形で閉じ込めることができました。未来への不安は募る日々ですが、まず観ていただいて、観たあとに、ぜひ自分のことを大切にされる時間を取ってほしい。みずみずしいお芝居と熱い和太鼓を楽しくんでください」と呼びかけ、イベントの幕を閉じた。
「夏、至るころ」は東京・WHITE CINE QUINTO(ホワイト シネクイント)、福岡のユナイテッド・シネマ キャナルシティ13ほか全国で順次ロードショー。
(c)2020「夏、至るころ」製作委員会