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『BLEACH』チャドはなぜ戦い続けたのか? 友との約束が強くする拳

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リアルサウンド

 連載終了から4年が経ってもなお高い人気を誇る久保帯人『BLEACH』。家族を護るために悪霊である虚を退治する死神となった高校生・黒崎一護と、死神、人間、滅却師といった仲間たちとの戦いを描く。

 今回、ピックアップするのは一護のクラスメイトで中学時代からの親友でもある茶渡泰虎だ。

一護を支えていた心優しき戦士

 メキシコのクォーターで、たくましい体、悪そうな奴らとつるんでいるかと思えば学校の成績も良い。寡黙だが心優しい茶渡。一護からは「チャド」と呼ばれている。多くは語らないし、常に一緒に行動しているというわけではないが、一護とチャドは信頼し合っている。

 そんなふたりが共に戦うようになるのは自然な流れのように見えるが、チャドにはもともと特別な能力があったというわけではない。織姫と同じように一護の霊圧に刺激されて、次第にその力を開花させていく。

 そんなチャドの意外な面がかわいいもの好きということだ。初めて虚と出くわすことになったのも、かわいいもの好きがきっかけ。インコを憑代とする子どもの霊を護るため(霊の見えないチャドからすると“よくしゃべるインコ”を護っているという形だが)、見えない敵・虚と戦う。強い腕力、丈夫な身体、恐怖心が鈍いところから虚にも臆することなく攻撃を仕掛けていき、居合わせたルキアを驚かせた。

 人間界ではおそらく桁違いの強さを持っているチャド。しかし、昔からそうだったわけではない。

他人を護るために振るう拳

 両親を早くに亡くしたチャドはメキシコの祖父の元で育てられた。体が大きく(公式プロフィールでは197cmとある)、力も強かったので気に食わないことがあるとすぐに相手を殴り飛ばすという粗暴な子どもだった。

 そんなチャドが変われたのは祖父の存在があったから。乱暴なチャドを叱り、粗暴さをただし、“自分のため”に拳は振るわないと祖父と約束する。目立つ見た目だから絡まれることも多かったが決して応戦しなかった。そんなやられっぱなしのチャドを助けたのが一護だった。自分のために拳は振るわないと、祖父との約束を話すチャドに一護はこう言う。

「オマエは今まで通り 自分のために誰かを殴ったりしなくていい。
その代わり、俺のために殴ってくれ。
俺はオマエのために殴ってやる。
オマエが命かけて守りたいモンなら 俺も命かけて守ってやる」

 交わした男同士の約束。だから、一護がルキアを助けるために尸魂界に乗りこむときも迷うことはなかった。

「一護が命をかけてるんだ。
俺が命をかけるのにそれ以上の理由は必要ない」

 何よりも約束を重んじる。それが茶渡泰虎という男なのだ。それは誰にでもできることではない。

強くなっていく一護にチャドは……

 一護は戦いを重ねていく中で、その強さに磨きをかけていく。尸魂界からも一目置かれ、敵からは要注意人物とされる。

 その中でチャドとの間に戦力の差が生まれていく。怪我を負い、治癒中に破面に襲撃された際は一護に助けられる。それだけでなく、「俺に任せて退っていてくれ」と言われてしまう。この言葉に強いショックを受けるチャド。

「俺はもうお前と並んで戦えないのか」

 ここで全ての戦いから撤退する、という選択肢もチャドにはあったはずだ。しかし、そうはしなかった。浦原に頼み込み、修行をしてほしいと頼み込む。そこでチャドの修行の相手をしたのが恋次だった。

 チャドは十分強いが、もうワンランク上に上がるためには卍解を使える死神が相手である必要があった。そこで浦原はたまたま居候していた恋次に頼んだ(押し付けた)のだった。

 チャドは、恋次との修行の中で新たな力を手に入れ、再び一護と共に戦うことになる。自分のために拳を振るっていたのだとしたら、チャドの心はとっくに折れていただろう。周りと力の差がありながらも、最後まで一護の戦友であり続けた。それは一護のためにある拳だったからだ。

 時を経て、大人になったチャドはプロボクサーとなり、世界タイトルに挑戦するまでになった。その試合を見るために、仲間たちが集った最終回。友のために振るった拳が今は、友を繋ぐ拳となっているのかもしれない。

(文=ふくだりょうこ(@pukuryo))

■書籍情報
『BLEACH』(ジャンプ・コミックス)74巻完結
著者:久保帯人
出版社:株式会社 集英社
https://www.shonenjump.com/j/rensai/bleach.html