amazarashi、むき出しの言葉で希望灯した初オンラインライブ 頭大仏に映し出した、10年の歩みと人々の想い
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amazarashiにとって弾き語りによる初のオンラインライブ『末法独唱 雨天決行』が、12月12日に開催された。
今年はamazarashiが前身となる「あまざらし」から表記を「amazarashi」に変更し、ミニアルバム『爆弾の作り方』でメジャーデビューしてから10周年となるアニバーサリーイヤー。バンドは3月に約3年ぶりの最新アルバム『ボイコット』をリリースし、4~5月には全国6都市を回るライブツアー『amazarashi Live Tour 2020「ボイコット」』を開催する予定だった。
しかし、そのツアーは新型コロナウイルスの感染拡大を受けて延期に。最終的には2021年夏以降へ延期となった。
大きな節目の年でありながら自由に活動できない状況は、秋田にとって非常に悔しいものだっただろう。結果として、今年実現したこの公演以前のライブ関連の活動は、6月のデビュー10周年当日に配信された『朗読演奏実験空間“新言語秩序” Ver. 1.01』(2018年の武道館公演に、秋田ひろむによる弾き語り自宅ライブを加えた映像配信)のみ。今回の『末法独唱 雨天決行』は、初のオンラインライブであると同時に、amazarashiにとって久々のライブとなった。
この日、まず印象的だったのは、配信環境ならではの映像表現が追求されていたこと。ライブは安藤忠雄が設計した北海道札幌市の「真駒内滝野霊園・頭大仏」を舞台に、円形のくぼみに建立された奇抜な構造の大仏殿や大仏そのものにプロジェクションマッピングを重ね、最新テクノロジーを駆使したamazarashiらしい映像美を生み出していた。客席スペースや音響のことを考えると、この規模でライブを行なえるのは配信ならではとも言える。
また、秋田の周囲は無数の灯篭でかこまれており、ひとつひとつに「#雨天献灯」と題したSNS経由で募集したリスナーによる「令和二年にやるせなかったこと」が記されている。その様子は、無観客ライブでありながらも、そこに観客の存在が感じられるような雰囲気を生んでいた。
この公演では、全編を通してプロジェクションマッピングのテーマ(「Disaster Mode」=災害モード)がいくつかに分かれており、ライブが進むにつれて切り替わっていく。まずは「type:RAIN」と表示されて周囲に延々と雨が降り注ぐ中、「夏を待っていました」でスタート。大仏の台座には世界各国の新型コロナウイルスの感染者数と死亡者数が表示され、「ありえたかもしれない未来」への哀愁も含んだ気持ちが歌われていく。その後、「冬になっても 梅雨は終わらない 雨はやまない」とはじまったポエトリーでは、コロナ禍での秋田自身の心情を想像させるような瞬間も。ライブ全編で随所に挟まれるポエトリーからは、今年1年、秋田自身に生まれた様々な想いや思考が伝わってくるような構成となっていた。
以降は「未来になれなかったあの夜に」「あんたへ」「さよならごっこ」「季節は次々死んでいく」といった楽曲を次々に披露。「季節は次々死んでいく」では、歌い出しにあまざらし名義だった当時の初期曲「光、再考」が挿入されたほか、楽曲ごとに歌詞と連動する形で大仏や周囲の壁が姿を変え、空間全体を使って楽曲の世界観を引き出すような雰囲気だ。
全編秋田ひろむによる息づかいまで感じられるようなギター1本の弾き語りによって、楽曲に込められた感情や、amazarashiらしい香り立つ文学性がダイレクトに伝わってくる。中でも中盤の「ワンルーム叙事詩」は、楽曲の後半に向けて盛り上がっていき、音源以上にヒリヒリとした感情表現や、〈雨にも負けて/風にも負けて/(中略)それでも/この自分ってやつには/負けるわけにはいかない〉というむき出しの言葉の強さがアコースティックだからこそ増していたように思えた。
また、この日もうひとつ印象的だったのは、ライブ全体のセットリストが、amazarashiのこれまでの歩みを連想させるものでもあったということ。演奏の合間に挿入されるポエトリーには「10年」というワードを筆頭に、時間の経過を思わせる言葉や言い回しがたびたび登場し、コロナによって時間の進みが遅くなったように感じられた今年1年のことだけでなく、amazarashiが歩んできた10年間のことにも、観客の意識を向かわせるような瞬間が随所にあった。
さらに中盤に披露されたのは、amazarashi/あまざらし結成以前のSTAR ISSUE名義での楽曲「積み木」だ(12月16日発売の最新EP『令和二年、雨天決行』にも、amazarashiの未発表曲として弾き語りで収録)。この曲では〈時が過ぎて/遠くへ来たな〉という、10年以上前に書かれた歌詞が、今になってその後のamazarashiの歩みを思わせる効果を生み、10年経って変わったこと、10年経っても変わらないことの両方を噛みしめながら歌われていた。
ライブ終盤は、プロジェクションマッピングのテーマが「type:PANDEMIC」に変わり、初披露となる最新EPの収録曲「曇天」「令和二年」「馬鹿騒ぎはもう終わり」を連続で披露。その後は「夕立旅立ち」「真っ白な世界」を経て、「『またいつか』『いつか必ず』『いつか上手く行く』その『いつか』に会いに来た」「今日だってどうせやまない雨/くじけることなく、あの光へ進め」というポエトリーを挟んで、ラスト曲「スターライト」へ。この曲ではマッピングのテーマが「type:amazarashi」に切り替わり、直前まで降り注いでいた雨が一気に銀河を巡る星々に変わる中、これからに希望を残すような雰囲気で秋田ひろむの力強い声が広がっていく。最後は秋田が静かにギターを置き、すべての演奏が終了した。
公演名『末法独唱 雨天決行』の「末法」とは、仏教の歴史観で「釈迦の教えが正しく行なわれない、混沌とした不安定な世の中」のこと。それは現在のコロナ禍のことかもしれないし、それゆえ余裕を失った社会や人々のことかもしれない。またはコロナとは別の、誰かが人生で直面した困難のことを指しているかもしれない。だがamazarashiは、たとえ厳しい状況でも、毎日雨が降っていても、「それでも」を歌ってきたバンドである。『末法独唱 雨天決行』と題されたこの日のライブは、「それでも前に進もう」と背中を押すようなステージだった。
■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』もはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。
■配信情報
『amazarashi Online Live 末法独唱 雨天決行』
<アーカイブ配信>
12月12日(土)21:00~12月19日(日)23:59(予定)
<チケット>
APOLOGIES会員向け特典付き視聴チケット
価格:¥3,800(税込)
販売期間:11月19日(木)18:00~12月9日(水)23:59
APOLOGIESサイト
<一般視聴チケット>
価格:¥3,800(税込)
新体感ライブ CONNECT公式Webサイト
ローソンチケットサイト
販売期間:11月19日(木)18:00~12月19日(日)21:00
■リリース情報
amazarashi NEW EP
『令和二年、雨天決行』
2020年12月16日(水)発売
特設サイト
【初回生産限定盤】
CD+DVD+ステッカーセット
価格:¥2,800+税 / 品番:3990 ~ 3992
購入はこちら
<CD(DISC1)>
1. 令和二年
2. 世界の解像度
3. 太陽の羽化
4. 馬鹿騒ぎはもう終わり
5. 曇天
6. 令和二年 acoustic version
7. 積み木 acoustic version
8. 東京 acoustic version
<DVD(DISC2)>
amazarashi LIVE selection 2012 ~ 2019
~「0.7」~
空っぽの空に潰される
カルマ
~「あまざらし 千分の一夜物語 スターライト」~
古いSF
映画
スターライト
~「amazarashi
Live Tour 2016 世界分岐二〇一六」~
収束
季節は次々死んでいく
しらふ
~「amazarashi
360° LIVE「虚無病」」~
虚無病
僕が死のうと思ったのは
~「amazarashi
LIVE「理論武装解除」」~
フィロソフィー
悲しみ一つも残さないで
~「amazarashi
LIVE「朗読演奏実験空間『新言語秩序』」
ワードプロセッサー
リビングデッド
独白
~「amazarashi
Live Tour 2019 未来になれなかった全ての夜に」~
命にふさわしい
未来になれなかったあの夜に
【通常盤】
価格:1,800+税 / 品番:AICL-3993
購入はこちら
<CD>
1. 令和二年
2. 世界の解像度
3. 太陽の羽化
4. 馬鹿騒ぎはもう終わり
5. 曇天
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