Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
ぴあ 総合TOP > THE RAMPAGE、2020年シングル4作を振り返る 表題曲とカップリングで見せたこれまで以上に多彩な表情

THE RAMPAGE、2020年シングル4作を振り返る 表題曲とカップリングで見せたこれまで以上に多彩な表情

音楽

ニュース

リアルサウンド

 THE RAMPAGE from EXILE TRIBE、13枚目のシングル『MY PRAYER』が12月9日に発売された。

 表題曲はABEMAオリジナル『恋する週末ホームステイ』の主題歌であり、シンプルかつ壮大なラブバラードとなっている。聴きどころはなんといっても川村壱馬、RIKU、吉野北人の声質と繊細なボーカリングであり、その両方がなんとも心地よい響きを織りなしている。バラードがよく似合う吉野の優しい歌声から始まり、各パートがほぼ等分にあたるように入れ替わる、という歌割りも彼らの曲では意外に珍しい。

 この曲を象徴するキーワードは、3人のハーモニーが魅力的な最後のサビで歌われる〈手遅れになってしまう前に〉ではないかと思う。自分の思いを大切な人へ伝えるということがいかに尊く、価値ある行動なのかーーそれを普遍的なポップサウンドを通して伝えるこの曲は、それまで当たり前のように存在し続けたものが多く失われた今だからこそ、より深く心に響くはずだ。

THE RAMPAGE from EXILE TRIBE / MY PRAYER (MUSIC VIDEO)

 続いて2曲目「ESCAPE」はゆったりとしたエレクトロポップだ。出だしからリバーブに包まれて鳴る優しい口笛の音は肩の力を抜いてくれるし、暖かみのある柔らかなシンセとゴリっとしたベースのグルーブ感には思わず横ノリしたくなってしまう。〈旅に出ようか Babe/たまには 息抜きにさ〉〈霧の晴れるような 笑顔探しに行こう〉などの詞が持つメッセージ性は前作『FEARS』に収録の「LIVIN ‘IT UP」にも似ているが、この曲は一層リラックスした空気感があり、タイミングを選ばず耳に馴染むような心地良さがある。

 一方で3曲目「BAD LUV」は、先の2曲のどちらとも大きく趣が異なり、閉鎖的かつ退廃的なラブソング。ディープハウス調のトラックと低音の強調されたメロディはクセになるような聴きどころが多く、濃艶な世界観を表現しつつも中毒性のある仕上がり。また、歌い出しの川村の深くスモーキーな歌声が象徴する通りボーカリングにおいても、これまで以上に繊細なニュアンスが求められており、3人の新たな歌唱表現が多数味わえるのも楽しい点だ。

 なお、『MY PRAYER』のジャケットが朝焼けのような淡い空を背景としているのに対し、「ESCAPE」のストリーミング配信時のジャケットは日が昇った後のような青空だ。これはつまり『MY PRAYER』の3曲が“1日の中で移り変わっていく空模様”を心象風景として切り取った1つの作品になっていると考えられる。“純愛”をテーマとした「MY PRAYER」から対極に位置する楽曲「BAD LUV」までの流れ、その中で徐々に音域が下がるボーカルライン、そして楽曲ごとに別人のように表情を変える3ボーカルの歌声ーーこれらはそのまま、人の心の中にある多面性を映し出しているのではないだろうか。と、考察を巡らせたくなるほどに、『MY PRAYER』は表現面での奥行きがある作品となっていた。

 そもそも『MY PRAYER』に限らず、2020年のTHE RAMPAGEは特にそれまでのイメージを覆すような楽曲を表題曲とし、また一方で対照的な楽曲をカップリングに据えるという実験的な構成の作品が多かった。

 ここからは、2021年2月24日に発売となる3rdアルバム『REBOOT』に向けて、それらを1作ずつ振り返っていきたい。

 2020年最初のリリースは1月、シングル『FULLMETAL TRIGGER』であった。ダンス&ボーカルグループには珍しいミクスチャーロックを意識したスピード感のある表題曲、そして高揚感の強いEDM調のカップリング曲「WAKE ME UP」はそれぞれグループとしても革新的な楽曲だったと言える。このシングルを引っ提げたツアーの中でいっそう楽曲として磨き上げられ表現を広げていくかに思われたが、残念ながら新型コロナウイルスの影響により4公演で中止となった(ちなみにその後、9月に行われた配信ライブ『LIVE×ONLINE IMAGINATION』では、同ツアーの内容を再現したライブが行われ好評を博した)。

THE RAMPAGE from EXILE TRIBE / FULLMETAL TRIGGER (Music Video)

 その後、緊急事態宣言下の4月にはシングル『INVISIBLE LOVE』が発売された。トラップの要素を取り入れた中毒性の高いトラックが魅力の表題曲では、倒錯的な恋愛観がかつてない聴き味を生んでいた一方、カップリングの「INTO THE LIGHT」は澄み切った水のように爽やかで真摯なバラードであった。“異色のバラードと正統派バラード”という、これもまた新鮮な構成を伴った作品となっていた。

THE RAMPAGE from EXILE TRIBE / INVISIBLE LOVE (Music Video)

 その後、新たなライブエンタテインメントとして開始された無観客配信ライブ『LIVE×ONLINE』などを経て9月にリリースされたのは、まだ記憶に新しい『FEARS』だ。表題曲「FEARS」はロック歌謡の趣もあるバラードで、閉塞感や恐怖を演出したサウンドメイクや、その世界観をさらに押し広げた耽美的なMVが話題を呼んでいた。カップリングはTHE RAMPAGEにとって馴染み深いニュージャックスイングを取り入れた陽気な楽曲「LIVIN’ IT UP」と、これまで以上にウェストコーストヒップホップの世界観を追求した硬派な楽曲「FAST LANE」という、やはり1曲ごとのジャンルや世界観が大きく異なる構成。さらに『MY PRAYER』と同様に、「未曾有の災禍の中で苦難を強いられた彼らが、それまでのスタイルを踏襲しつつも新たな地平へ進んでいく」というストーリー性が3曲を通して感じられるような作品であった。

THE RAMPAGE from EXILE TRIBE / FEARS (MUSIC VIDEO)

 昨年リリースされたアルバム『THE RIOT』は、THE RAMPAGEがデビュー時から突き詰めてきたヒップホップスタイルの一つの集大成的な作品となっていた。そして、こうしてリリース楽曲を軸に振り返ると、次回のアルバムは各種タイアップ等にも合わせてリリースごとにガラッと表情を変えてきたシングル表題曲に加え、よりクラブミュージックに近づいていった印象のあるカップリング曲群という、かなりバラエティに富んだ一作になると思われる。『THE RIOT』のリード曲「Move the World」が“第二章”を予見させる楽曲であったことを考えると、やはりアルバム撮り下ろしのリード曲の内容が気になるところである。ひとまず、続報を待ちたい。

■日高 愛
1989年生まれの会社員。