橘ケンチ、日本酒擬人化漫画に込めた想い。「お酒の資質と“物語”を知ってほしい」
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インタビュー
EXILE/EXILE THE SECONDの橘ケンチが企画原案を務める漫画『あらばしり』が、少年マガジン公式無料漫画アプリ「マガジンポケット」で連載開始。本作は日本酒を題材にした作品で、“必要としている人しか訪れられない”という謎の日本酒店を舞台に物語が展開。日本酒を人間にする能力を持つ店主、人間になった日本酒たち、そして店を訪れる客が心温まるドラマを繰り広げる。
パフォーマーであることに留まらず、これまでもマルチな活躍を見せてきた橘。原案を務めた作品について、今やライフワークとなった日本酒について、彼に話を聞いた。
琴線に触れるものにするためには
ストーリーがなくてはならない
── まずは、プロジェクトの経緯を教えてください。
橘 4~5年ほど前から日本酒にハマり、これまでに4つの蔵とコラボさせていただきました。そんな中、日本酒業界を盛り上げ、もっと幅広く知ってもらうにはどうすべきかを考えるようになったんです。
日本酒って銘柄だけでも1万以上あり、選ぶだけでも戸惑ってしまうと思うんですね。そうではなく、もっと分かりやすいものとして認識してもらうため、日本酒に関連したエンタメのコンテンツを作ることになりました。
── “日本酒擬人化漫画”という発想はどこから?
橘 元々は、日本酒の銘柄に背番号をつけたら面白いかなと思ったんです。秋田「新政」なら6号酵母だから6番、長野「真澄」なら7号酵母だから7番、日本一有名な「十四代」は14番といったように。だったら、ユニフォームを着せる“人”を作るのはどうだろうと考えるようになって。
それを(共に原案を担当した)平沼紀久さんに相談し、講談社の方も巻き込み、密かに会議をし始めたのが1年半ほど前(笑)。繊細で軽やかなお酒だったら華奢な美青年にしようとか、どんどん妄想が膨らんでいきました。
── 出発点は背番号なのにスポーツ漫画ではなく、美青年になった日本酒と客たちの物語になったのはなぜでしょう?
橘 20歳になってこれからお酒を飲めるようになる世代を含め、若い人たちなど、新しい層を開拓したい想いがありました。もちろん世代や性別を分けるつもりはないんですが、口コミ能力の高い女性たちに飲んでもらえるようにしたいと考えるようになりました。日本酒くんたちが困っている女性の悩みを解決し、読者の方々の共感を誘い、登場キャラクターを好きになり、その奥にある日本酒も好きになる。そんな流れが自然と浮かんだんです。
── 日本酒たちが美青年なのは、日本酒が美しいものだから?
橘 というと美化しすぎかもしれませんが(笑)、クラフトワークとしては美しいものですよね。様々な蔵を回り、作業を見たり、手伝ったりさせていただく中、情熱をかけて何かを造る行為に芸術性を感じることは多々ありました。だからこそ、その美しさを投影した部分もあるかもしれない。
── 物語を考えるのは元々お好きですか?
橘 そうですね。ライブを作る際にも、まずはストーリーを考えますから。単に曲を並べて盛り上げるのではなく、テーマとストーリーが大事。人の心に届けたり、琴線に触れるものにするためにはストーリーがなくてはならないと感じることは多いです。
日本酒にしても、美味しさの奥には蔵の歴史があるわけで。背景を知ることで、感情移入できたりもしますよね。お酒の資質+ストーリーを、登場人物たちには背負ってもらうつもりです。
── 読書家として知られる橘さんですが、漫画もお好きなんですね。
橘 学生時代はむしろ漫画しか読んでいなかったです。親から「もっと本を読みなさい!」と言われていたくらいでした(笑)。
── では、漫画の原案を務める自分に驚きはない?
橘 いや、さすがに原案を務めることになるとは思っていなかったです(笑)。面白い切り口を考えていたら、漫画に行き着いたという流れですね。
自分の側だと思われていないものに
率先してアプローチしたい
── 面白い切り口という点で言えば、日本酒を擬人化する発想自体……、あくまでも褒め言葉なんですが、ほんのりどうかしている発想ではあるかと(笑)。
橘 はははは! “ほんのりどうかしている”っていいですね(笑)。最大級の褒め言葉として、ありがたく受け取らせていただきます。
── 本当に褒め言葉なんです(笑)。そういったユニークな発想に抵抗がないのだなと。
橘 そうですね。ただ、擬人化って今や多いと言えば多いですよね。物語を作るって、自分の好き勝手な妄想が許される行為ですから。どうかしているくらい思いっきり妄想したら、こうなりました(笑)。
── しかも、女性に寄り添った視点で。
橘 確かに、元々は美青年が悩みを解決……なんて発想の人間ではなかったです。むしろ、アル・パチーノが銃をバンバン撃っている映画や物語などが好きでした。
でも、エンタメの世界に長くいる中、元々好きなものだけで自分を縛るのはすごく損だなと思い始めたんです。性別だけでなく、世代でも感覚は全然違いますし。Jr.EXILE世代と呼ばれている後輩のグループたちにしても、僕とは全く違う意識で世界を見ているはず。自分ではない人たちの感覚に、最近特にすごく興味があります。
── 興味を持つことで、自分自身も広がっていきますしね。
橘 以前、『刀剣乱舞』の中国公演を観に行ったことがあるんです。そのとき、「EXILEが『刀剣乱舞』を観に中国に来ている!」とざわついたことがあって(笑)。自分では「これって、ざわつかれることなんだ……」と思ったんですよね。
『ヒプノシスマイク』の舞台を品川で観たときもそんなことがあり。LDHやEXILEのイメージがそうさせるんでしょうが、自分の側だと思われていないものに率先してアプローチしたい気持ちはあります。
意外性が好きなんでしょうね。「ケンチ、漫画を作るの?」「EXILEなのに、日本酒を作るの?」って。そう言われてしまうのが、ちょっと快感なんです(笑)。
── でも、“言われてしまう”ことではあるんですね。
橘 はい、言われます。だけど続けていけば、それがキャラになる。“読書家”と言っていただきましたけど、以前はそんなイメージもなかったでしょうし。
「本が好きなEXILEって違うんだろうな」と思う気持ちは自分の中にもありました。なので、あえて口に出してきませんでしたが、ある日を境に出していったらだんだん認知された。
日本酒もそうですよね。だから、自分の引き出しや可能性を開いていくことに、今は全く抵抗がないんです。
── そんな橘さんにとっての日本酒活動とは?
橘 自分の中で“日本酒”が締める割合が大きくなってきているのは確かですね。もちろん、アーティストが本業ですが、この先の生き方を見据えたときにとても意義のある活動だとも思っています。
様々な場所に行ってお酒を造るだけじゃなく、その地域の方々と仲良くなれるのも大きいですね。そういった出会いによって、地に足のついた経験ができている。だからこそ、ライフワークとして今後も続けていきたいです。
── アーティスト業との相互作用もありますか?
橘 確実にあります。日本酒を飲んで踊りが上手くなるわけではありませんが、生きてきた中で出会った人や経験って全部蓄積されますから。それが、すべて表現になる。日本全国を回っていることが、自分の表現に生かされているのは揺るぎない事実ですね。
── 最後に、今後の日本酒活動について教えてください。
橘 いずれは海外への輸出などもできたらいいなと思っていますし、先々のことはいろいろ考えています。海外に広めていく役割を担うため、英語も北京語も勉強していますし。長いスパンで見て、やれることは全部やっていきたい。そんな気持ちでいますね。
取材・文:渡邉ひかる 撮影:源賀津己
ヘアメイク:水野明美(H.M.C)
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『あらばしり』
連載開始:第1話:12月18日(金)、第2話:12月25日(金)
掲載予定:第3話:1月1日(金)、第4話:1月15日(金) 以降隔週掲載予定
掲載媒体:少年マガジン公式無料漫画アプリ『マガジンポケット』
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