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Eve×loundraw×タムラコータロー監督『ジョゼと虎と魚たち』鼎談 アニメーションと音楽がもたらすクリエイティブの相乗効果

音楽

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リアルサウンド

 2020年12月25日に公開となるアニメーション映画『ジョゼと虎と魚たち』の主題歌「蒼のワルツ」と挿入歌「心海」を手がけたEve、コンセプトデザインを担当したイラストレーターのloundraw(FLAT STUDIO)、そしてタムラコータロー監督の鼎談が実現した。

アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』ロングPV

 これまでのMVでもクリエイターとの共同作業により音楽とアニメーションが深く結びついた作品を発表してきたEve。イラストレーターとしての活躍に加え、ユニット・CHRONICLEを率いて物語と音楽とアートがシンクロした表現を開拓しているloundraw。以下の鼎談でも明かされているが、両者にとって、リモートによって行われたこの取材が初の顔合わせの機会だったという。

 『ジョゼと虎と魚たち』にそれぞれがどう関わり、どんなイメージが共有されていったのか。映画の制作の裏側、12月23日にリリースされたEveの新作『廻廻奇譚 / 蒼のワルツ』について、さらにはアニメーションと音楽がクリエイティブの相乗効果をもたらす原理について、語ってもらった。(柴那典)

タムラ監督が引き合わせたかったEveとloundraw、同世代二人の才能

——今回の『ジョゼと虎と魚たち』の主題歌の話はいつ頃から始まったんでしょうか?

タムラコータロー(以下、タムラ): Eveくんにお願いすることが決まったのは2019年の4月くらいのことで、1年半以上前になりますね。loundrawくんと顔合わせしたのはもっと前で2017年の6月くらい。だいぶ経ちましたね。

——loundrawさんは映画のコンセプトデザインということですが、これはどういった形の携わり方なんでしょうか。

loundraw:イメージボードという、映画全体のキーシーンや、各場面の印象を作る仕事をさせていただきました。たとえば、昼の風景だとしても、二人の感情から少し寂しそうに描いたり、もしくは楽しそうに描くなど、伝えるべきことを色合いなどのビジュアルから設計しています。大事な場面だからライティングを強めにする、ということもしますね。映像そのものの演出に携わる部分をタムラ監督と一緒に作らせていただいた感じです。

——タムラ監督とloundrawさんはEveさんのこれまでの曲への印象は、どんなふうに感じていましたか?

loundraw:僕は昔からEveさんの曲を聴かせていただいていて。印象として、誰しもにすごく真っ直ぐに届く曲を作られるなと思っていたんです。しかも、そこに自分の色がある。それはすごく難しいことなので、リスペクトがあります。

タムラ:さっき言った2019年4月より前に、Eveくんの名前が一度挙がったことがあって。その時に聴いた曲はかなりアップテンポだったんですね。曲としてはすごく良かったんですけど、そのときは『ジョゼ』の世界観とハマるかどうかわからなかったんです。でも、その後にもう一度Eveくんの「迷い子」を聴いた時に「いけるんじゃないかな」って思ったんですよね。可能性の引き出しをすごく感じた曲だったんです。それまでのEveくんの曲とまたちょっと違うバランスを探ってる感じがあった。それを聴かせてもらった時に、『ジョゼ』と組み合わせることでEveくんの新しい可能性を引き出せるんじゃないかと思ったのを覚えています。

——Eveさんは『ジョゼと虎と魚たち』の物語は以前からご存知でしたか?

Eve:実写映画を以前に観たことがあったので、タイトルはもちろん知っていました。ただ、これがアニメーション映画になるというお話を聞いて、最初はどういう形になるのかあまりイメージが湧いてなかったんです。けれど、タムラ監督からお話を聞かせていただいて、新しい『ジョゼと虎と魚たち』を感じることができました。そこから音楽を作っていきました。

——制作にあたっては、タムラ監督とloundrawさんとEveさんで集まって打ち合わせをしたり、意図を共有する話し合いがあったりしたと思うんですが、それはどんな感じでしたか?

タムラ:いや、個別にいろんなことを話し合いながら作っていったので、実はloundrawくんとEveくんが一堂にいるという状態は、これが初めてなんですよ。今まで接点がなかったのが不思議なくらいで。

——そうなんですか?

タムラ:なので、正直、今回のような鼎談の機会をずっと待っていたんです。僕としては、この座組がすごく大事だと思っていて。主人公の恒夫くんが22歳で、ジョゼが24歳で、そのあたりの世代に刺さる作品を作りたいと思っていたんです。だから、イラストレーターとして輝いているloundrawくん、音楽界で輝いているEveくん、この二人が一緒の作品に入ってくれた時点で、僕の中ではある程度の勝算がありました。

——Eveさんはloundrawさんの作品はどんな風に見ていましたか?

Eve:初めて知ったのはTwitterで自主制作の作品を見たのがきっかけで、それにすごく衝撃を受けたのを覚えています。だから、この『ジョゼと虎と魚たち』のお話をいただいた時に、loundrawさんが参加されていると知って勝手に親近感を覚えていたんです。あとはloundrawさんがやっているCHRONICLEというプロジェクトも、映像があって、音楽があって、そこに物語が付随している。それは僕の音楽にも共通してる部分で、そういうところにも勝手に親近感を覚えていました。だから作品でご一緒できてすごく嬉しかったです。

——loundrawさんとしてはどうでしょう?

loundraw:本当に光栄です。Eveさんの楽曲やミュージックビデオを拝見していても、曲のバックボーンになる物語のイメージが、Eveさんの中にとても強くあるように感じるので。そういった形で僕の活動を見てくださってることも、また親近感を覚えてくださることも、僕からしたらすごく光栄で。実は今回お話しできるのも楽しみにしていました。

Eve: 嬉しいです。ありがとうございます。

——お互いがお話しするのが初めてだというのが意外なくらい共通点のあるお二人だと思うんですが、そういうloundrawさんとEveさんを結びつけるという狙いがタムラ監督にあったということでしょうか。

タムラ:まさにそうですね。このお二人に参加してもらえたのは本当に良かったです。僕自身も音楽と映像の親和性をすごく重視して作っているので、そういう意味ではloundrawくんもイラストレーターではあるけども音楽に対してすごくこだわりがあるし、Eveくんもミュージシャンでありながら映像に対する造詣も深いので、こちらが音楽と映像で奏でたい方向性みたいなものに共感してもらえるのが早かったと思います。

——『ジョゼと虎と魚たち』には実写映画の作品もありますが、loundrawさんは映画全体の印象を作る上で、実写版との違いやアニメーションならではの表現は意識しましたか?

loundraw:僕が一番意識したのは、アニメでやることに意味があるものにしないといけないというところでした。当然、実写版がすでにありますし、『ジョゼと虎と魚たち』というお話自体も、ある意味、現実ベースの地に足のついた作品なので。その中で映画を観た人が緩急を感じて、感情移入できるものを作らなきゃいけない。そのために、意図的に画面の色の変化を大きく作ったりしています。実写の場合は過剰演出になってしまうラインがありますが、そこを今回は上手く行き来して、現実の話だけれどアニメとしてビジュアル映えするものを作っていく。そういうところでアニメとして意味があるものにしたいと思いました。

——Eveさんは、どんなところをとっかかりに楽曲を作っていったんでしょうか。

Eve:脚本を全て読ませていただいて、コンテとイメージボードを見せていただいて。まずその絵がすごく繊細だったんですよね。映像が飛び込んでくるかのような体験をさせてもらえた。そこで音楽を作る上でのイメージが湧いたのを覚えています。それから、監督も丁寧に楽曲と向き合ってくださったんですけど、その中で「時代を超えても色褪せないものは何か」を大事に考えました。先ほども監督がおっしゃってましたけど、自分が今までやってこなかったような音楽になったというか、『ジョゼ』っていう作品に新しい面を引き出してもらった2曲になったと個人的には思っています。

——曲に取り掛かったタイミングはいつ頃でした?

Eve:2019年の夏から秋くらいです。先に「心海」ができて、ほどなくして「蒼のワルツ」ができました。その2曲を監督に聴いていただいて、「蒼のワルツ」を主題歌で、「心海」を挿入歌で使っていただくことになりました。

タムラ:アニメの制作スタジオにいた時に曲を受け取ったんですけど、最初に聴いて、プロデューサーと「これはいけるんじゃないかな」と話をした記憶があります。すごく良かったですね。まだラフの段階だったんですけれど、その時点である程度完成されていて。こちらのオーダーにも答えていただきつつ、なおかつEveくんの新しい引き出しが開いた感じもあった。それでいて、いろんな世代の方にも共感してもらえる曲になりそうな感じもあったんですよね。あと僕的に嬉しいポイントとしては、カラオケに行きたくなる曲、歌いたくなる曲だということ。メロディが複雑すぎる曲だと聴くだけで満足しちゃうんですけれど、映画館を出た後に歌いたくなる曲になった。そこはものすごく大きかったと思います。あとは、歌詞もすごく良かったです。印象的な台詞も引用してもらったり、本編を読み込んで『ジョゼ』のために作ってくれた感じがして、それも良かったですね。

Eveがloundrawのイメージボードに影響を受けて制作した2曲

——歌詞に関してはどんなところから書いていったんでしょうか?

Eve:やっぱりこの『ジョゼ』という作品にいろいろなものを与えてもらった感じはありますね。特に、恒夫とジョゼはすごく真っ直ぐなんです。恒夫の夢を追う姿勢、ジョゼの不器用なところが共感できる部分も多くて。二人を見ていて、初めてのものに触れたときの記憶や、前に進む勇気や、昔持っていたけれどいつの間にか忘れてしまったようなピュアな気持ちを思い出させてくれるような作品だと感じたんです。それに、過去の後悔や、あやまちや、自分が失敗だと思っていたものも、全てかけがえのない、意味のあるものだったと気づかせてくれるような、そういう不思議な魅力を持った作品だとも感じていたので。そこと自分の音楽との共通項だったり、寄り添い方を探っていきながら作っていきました。

——ご自身の音楽との共通項というのは、どんなところに感じましたか?

Eve:やっぱり内面的な部分が多いんじゃないかなと思います。『ジョゼ』には二人以外にも様々な人達が出てきて物語が進んでいくんですけど、彼ら彼女たちが抱える葛藤とか思いみたいなものって、今まで自分が作ってきた音楽や言葉もそういうところから出ている部分があるように思うんです。なので、彼ら彼女たちが抱えている内面的な部分の共通項を探って書いてきました。

——サウンドや曲調については、どんなイメージから組み立てていったんでしょうか?

Eve:初めてのアニメーション映画に関わらせていただいたので、スケールの大きいものを作りたいなという意識はありました。映画館という、音楽を浴びられる場所でかかるものだからこそ、いつも作っている音楽よりも壮大なものを作ろうというのは意識しながら詰めていきました。

タムラ:Eveくんに曲を発注した時点では、あまり制作資料がなかったんですよ。本編の絵コンテの初稿が完成していたくらいだったかな。その時に手がかりになったのがloundrawくんのイメージボードだったと思います。あとは絵本奈央さんのキャラクター原案とジョゼの家の美術設定がいくつか。だから、きっとEveくんはこのボードを見ながら曲をイメージしてくれたんじゃないかと。

Eve:それはすごくありました。特に色味みたいなところによって曲のカラーも決まってくるので。そういう部分では、この2曲はイメージボードに影響を受けて、そこに自分のフィルターを通して出来ていった感じはありますね。

――loundrawさんのイメージボードから曲のアイデアが膨らんだんですね。

Eve:それこそ曲のタイトルに「蒼」がついていたり、空や海のイメージがあったり、そういうところはイメージボードからの影響かもしれないです。僕はイメージボードが好きなんですけど、イメージボードって、そこから無限の想像ができるというか、その一枚から見る人の数だけいろんな物語が生まれると思うんです。そういう意味では、最初からたくさん情報を与えていただくより、いくつかのイメージボードとコンテから作るほうが自分にとってはすごくやりやすくて。自由に作らせてもらった感覚はあります。

タムラ:イメージボードのいいところって、他のセクションが進んでなくても単体で完結できるので、キャラクターと背景込みの叙情的なシーンのイメージがいろんな人に共有できるところにあるんですよ。曲の発注段階では映像側の実制作は全然進んでなかったんですけど、前もって「こういう作品を作りたい」というイメージをEveくんにさっと伝えられる。それはすごく大きかった。

loundraw:イメージボードはあくまで映像、ビジュアル面のイメージ共有のために作らせていただいたものではあったので、それが曲の参考になったという話を聞けて、すごく嬉しいです。映画の雰囲気をつくるという部分で、ちゃんと役に立ったんだなと改めて思えました。担当できて良かったです。

——そもそも、アニメーション制作においてイメージボードが大きな役割を果たすようになったというのは、ここ最近のことなんでしょうか?

タムラ:年々、比重が高くなってきていると思います。loundrawくんも『ジョゼ』のイメージボードをお願いする前に『名探偵コナン』の劇場版のイメージボードを手がけていますし、徐々にそういう職業が求められるようになってきているんですね。アニメーションって、デジタル化してやれることが増えたんですよ。でも、やれることが増えたことで多様なアニメーションが出来るのかと思っていたら、意外と画一的なものが出来上がるようになってきちゃったんですね。現場にいるアニメーターと美術さんだけで作ると、どうしても既存の枠組みからなかなか出られない。どこかで見たことのあるものになりがちで。新しいイメージを生み出すためには「こういうゴールを目指しましょう」という話し合いをするためのコンセプトイラストが必要になってくる。今回はloundrawくんの透明感のある絵を見たときに、彼ならこの『ジョゼ』の世界観を作ってくれるだろうという確信があったので、それが功を奏したという感じですね。

——loundrawさんは、イラストやアニメーションなどいろんなお仕事をされるなかで、イメージボードはどんな仕事というふうにご自身で位置づけていますか?

loundraw:挑戦の場だと個人的には思っています。先ほどEveさんの話の中で「新しい扉を開けた」という話がありましたけれど、僕にとってもそうだったんですね。イメージボードというのは一本の映画の中では演出のひとつとして存在するので、決して常に必殺技が求められているわけではないんですよね。イラストには「こう描けばポップで目を惹く」みたいなセオリーが多少なりともありますが、一本の映画で観る時には、暗いシーンをちゃん暗く描かなきゃいけない、地味なものをちゃんと地味に描かなきゃいけない、ということが求められてくる。なので僕がイラストレーターとしてはおそらく描かなかったであろう絵や色を、今回はむしろ必要としてくださった。そこに応えようと努力できたので、すごく楽しかったですね。

——タムラ監督としては、「心海」を挿入歌として作品の中にどういう風に落とし込んでいったんでしょうか。

タムラ:挿入歌は当初考えてなかったんですが、Eveくんと顔合わせした時に入れようという話が出て。その時にこのあたりのシーンで使おうかという話をしていたんです。「心海」はすごく上手くハマったと思います。特にイントロがすごく好きなんですよ。気持ちが上がっていく感じがある。あの一連のシーン、最初は恒夫の息芝居をまんべんなく入れていたんです。中川大志くんの芝居も好演していてすごく良かったんですけれど、最終的には音楽に委ねたほうがよさそうだと思って、歌が始まったところで曲だけにしちゃいました。

——「蒼のワルツ」に関してはどうでしょうか?

タムラ:実は、シナリオの段階ではエピローグをどうするか、決まっていなかったんです。ある程度の目星はつけていたんですけれど、「エピローグを入れると余計なんじゃないか」とか「観た人の想像に委ねた方がいいんじゃないか」と思ってた部分もあって。ギリギリまで迷ってたんですけど、「蒼のワルツ」が上がってきて曲を聴いていたら恒夫とジョゼのその後が浮かんできてしまって。すごく前向きな曲なので、そういう曲にあわせて二人を描けたらすてきだなと思って、脚本になかったシーンまで足してしまった。曲の力ですね。曲ありきで、エピローグのシーンが生まれたと思っています。

——Eveさんは曲がアニメーション映像に合わさった段階で最初にご覧になった時の印象はどんな感じでしたか?

Eve:「心海」については、本編の中でかかる場所は事前に聞いていたんですけど、実際アニメの映像と一緒に流れてくる音楽を聴くと、また違った印象を受けるというか。すごく映像とマッチしていたのでホッとしたというのがひとつです。主題歌の「蒼のワルツ」は、物語が全て終わって、あれがかかった時に、この「『蒼のワルツ』を作れてよかったな」と思いました。エンドロールの絵にもグッときましたし、試写会で初めて見たんですけど、すごく感動したのを覚えてます。

——タムラ監督としては、最終的に完成しての手応えはどんな感じでしょうか?

タムラ:映画は一人じゃ作れないなとすごく思いましたね。もちろん、発注する時は「こういう方向でやりたい」という青写真は描いて、みんなにプレゼンするんですよ。でも、イメージしていたものよりも、むしろもっと良いものになった。本当に良かったですね。特にエンドロールに関しては、先ほども話したように当初は絵を入れるか迷っていたんです。でも、Eveくんの曲を聴いたら、絵を入れたくなっちゃった。描かされたなと思いましたね。僕がloundrawくんに発注して、loundrawくんから出たものをもとにEveくんが曲を作って、それが翻って僕がさらに絵を追加するっていう流れになったので。制作現場はめちゃくちゃ大変だったんですけど、すごく良い循環ができたなと思います。

蒼のワルツ – Eve MV
心海 – Eve MV

——これは作品と関係なく皆さんにお伺いしたいと思います。タムラ監督もloundrawさんもEveさんも、『ジョゼ』の今回のプロジェクトに限らず、いろんなやり方でアニメーション映像と音楽の新しい有機的な結びつきを形にしていると思うんですね。音楽シーン全体を見ても、90年代から今に至るまで、それがどんどん進化して、より深いつながりが生まれるようになってきている。このあたりをどう見ていますか?

Eve:僕は音楽の聴き方として、学生の頃から動画サイトで音楽を聴くことが当たり前だったんですね。そこで聴く音楽には絵や映像が必ず一緒についている。そういうものを通して音楽に触れてきたので、音楽を作る立場になった今も、今までずっと音楽とアニメーションも同じ熱量で作っているんです。曲が出来てから映像を発注するっていう形ではなくて、作っていく過程から一緒に映像も音楽もゴールまで進んでいくという作り方をずっとしてきたので。今回は映画という大きなものに参加させてもらったんですけど、自分が今までやってきたものに近くて、そういう意味では僕にとっては当たり前の形だったと思います。

タムラ:動画サイトの普及は、本当に大きいですよね。90年代はVHSビデオしかなかったし、ミュージックビデオはMTVのような専門チャンネルでしか観られないのがほとんどでした。映像と音楽を一緒に観るって、なかなか無い体験だったと思うんですよ。でも、動画サイトの普及でその体験が増えた。それによってイマジネーションを広げることができるようになった。映像の方は音楽があることによって気持ちの良いものになるし、音楽の内容の深さを絵で補うこともできる。このバランスが親和性の高さの理由だと思うんですよね。アニメの予告も音楽を中心に作ることが多いですし、それによって作品の内容をよりエモーショナルに伝えることができる。Eveくんとloundrawくんはそういうところへの理解を非常に持ってこの作品に挑んでくれた。幸せなことだったなと思ってます。

loundraw:僕としては、ふたつあるのかなと思います。まず単純に技術的なことからいくと、タムラ監督がおっしゃられていたように、デジタル化というのがすごく大きくて。音楽と映像を同時に観ながら、人の認識を超えた0.1秒みたいな世界をコントロールできるようになった。これはすごく大きな進歩だと思います。もう一つはEveさんがおっしゃられていたことですが、動画サイトがあり、曲に映像があるのが当たり前になっている。そうなると、音が良いと絵が良く見えるし、絵が良いと曲が良く聴こえるみたいなことが往々にして起きる。全てのコンテンツが相乗効果というか、体験を重視するようになってきたんだと思うんです。そういう意味で、あらゆるものが新しい時代に入っているなと思います。

『廻廻奇譚/蒼のワルツ』生まれた楽曲はできるだけ早く届けたかった

——では最後に、Eveさんに他の曲も含めたEP全体のお話も聞かせてください。まず、この『ジョゼ』のための「蒼のワルツ」と「心音」、そして『呪術廻戦』の主題歌として書き下ろした「廻廻奇譚」という非常に強い2作品への曲があったうえで、これを7曲入りのEPとしリリースするという意図はどういうところにあったんでしょうか?

Eve:もともと2月に『Smile』というアルバムが出て、その次はシングルを出そうかということを漠然と思っていたんですけれど、今年はコロナっていう誰も予想だにしなかった大きな問題があって、ライブも出来なくなってしまった。そのことによって、家で制作する時間もできたんですよね。そういう中で楽曲もどんどん生まれていったし、生まれた楽曲はできるだけ早く届けたいという思いがあって。そういう意味ではちょうどこの12月のEPを発売するタイミングに7曲っていう曲が揃ったから出そうっていう、すごく自然な考えでした。

——「廻廻奇譚」は、歌詞に関しても『呪術廻戦』が描いているものと非常に重なるところが大きいように思いますが、これはどういう経緯で作っていったんでしょうか。

Eve:もともと、この作品はすごく好きだったんですよね。2年前くらいにアニメ化が決まった時にもすごく喜んでいたのを覚えています。だから今年になって『呪術廻戦』のオープニングを書かせてもらうことが決まった時は、嬉しかったのと同時に「まさか」というびっくりした気持ちもあって。昔から読んでいた原作をもう一度読み返して、そこから作っていきました。ちょうど3月から4月にかけての頃ですね。自分も5月にアリーナでライブをする予定だったんですけれど、リハーサルもできなくなったし、ライブも延期になってしまって。そういう意味では時間はたっぷりあったので、自宅で制作をしている日々でした。

廻廻奇譚 – Eve MV

——「約束」はミュージックビデオも公開されていますが、これはいつ頃にできた曲でしょうか?

Eve:「約束」という曲は一年以上前からできていた曲ですね。特にMVがつくもの、アニメーション映像がつくものっていうのは、制作にすごく時間のかかるものなので。ただ、あの曲はあの曲で、このタイミングで『廻廻奇譚/蒼のワルツ』のEPに収録できるっていうことは何か必然的なものだったんじゃないかなと今は思います。

約束 – Eve MV

——『Smile』以降の感覚の変化についてはどうでしょう。どんなことを感じていますか?

Eve:アルバムが2月に出て、その後に一度もライブをやらないまま、新しいCDが出るということで、自分の中ではどこかふわっとしているところがあるんです。改めてライブの大切さみたいなものを再確認させられたというか。他の人に比べたら数も少ないとは思うんですけど、それでもその一本のライブがやれないことがとても大きかった。そこでお客さんからエネルギーをもらうというのは、自分にとって無くてはならない、必要なものだった。そういうことも改めて感じた。そういういろんなものの大切さを改めて考えさせられた年でもありました。

——『Smile』と『廻廻奇譚/蒼のワルツ』はどういう関係を持つ2作と位置づけていますか?

Eve:今回、EPにタイトルをつけていないのもそうなんですけど、どこかまだ『Smile』の余韻を引きずっているような、コロナ禍で先の見えないトンネルが続いている状況だと思うんですよね。なのでまだ自分の中では『Smile』が続いてるような感覚があります。来年3月に延期になったライブを開催することが決まっているんですけれど、その中で『Smile』と今回のEPを自分の中で消化して、そこまた新しい次の一歩を踏み出せるような気がしているので。ただ、ポジティブに考えるなら、今は沢山曲が生まれていて。EPの中にもコロナになってから書いた曲もあるので、意識せずとも、おのずとそのことが色濃く出ているとも思います。そういう部分も感じ取っていただけたら嬉しいですね。

■ライブ配信
『Christmas Eve Radio#1【200万人記念】』
12月24日(金)20:00(~22:00)
配信はこちら
※アーカイブは残りません

■リリース情報
New EP『廻廻奇譚 / 蒼のワルツ』
12月23日(水)リリース
特設サイトはこちら

ジョゼ盤【初回限定盤/CD+GOODS】¥2,500(税込)

<収録曲>
1.蒼のワルツ アニメ映画「ジョゼと虎と魚たち」主題歌
2.心海 アニメ映画「ジョゼと虎と魚たち」挿入歌
3.廻廻奇譚 TVアニメ「呪術廻戦」オープニング主題歌
4.宵の明星
5.遊遊冥冥
6.約束
7.杪夏

呪術盤【初回限定盤/CD+DVD】¥2,500(税込)

<収録曲>
1.廻廻奇譚 TVアニメ「呪術廻戦」オープニング主題歌
2.蒼のワルツ アニメ映画「ジョゼと虎と魚たち」主題歌
3.心海 アニメ映画「ジョゼと虎と魚たち」挿入歌
4.宵の明星
5.遊遊冥冥
6.約束
7.杪夏

通常盤【CD only】¥2,000(税込)

<収録曲>
1.廻廻奇譚 TVアニメ「呪術廻戦」オープニング主題歌
2.蒼のワルツ アニメ映画「ジョゼと虎と魚たち」主題歌
3.心海 アニメ映画「ジョゼと虎と魚たち」挿入歌
4.宵の明星
5.遊遊冥冥
6.約束
7.杪夏

<封入特典>
オンラインイベント「胡乱な円卓」参加シリアルコード

<早期予約特典>
「いのちの食べ方」Music Video DVD+オリジナルステッカー付き
※11月20日までの予約者対象

<先着店舗特典>
・アニメイト/アニメイトオンラインショップ…弾き語り音源CD(「廻廻奇譚」「蒼のワルツ」2曲収録)
・Amazon.co.jp…缶バッチ(全2種の内からランダムで1種)
・TOWER RECORDSおよびTOWER mini、TOWER RECORDS ONLINE…オルゴールCD(「廻廻奇譚」「蒼のワルツ」「心海」3曲収録)
・HMV/HMV&BOOKS online…クリアファイル(A5サイズ)
・ヴィレッジヴァンガード…特典CD(ぼっちラジオ4)
・TSUTAYA RECORDS※オンラインショッピングは予約分のみ対象…ステッカーシート 
・楽天ブックス…クリアしおり
・TOY’S STORE…ジャケットステッカー(通常盤Ver.) 
・応援店…告知ポスター(B2サイズ)
※応援店特典は、上記オリジナル特典対象店舗は対象外

Eve 公式サイト

■タイアップ情報
アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』
12月25日(金)公開
公式サイト
公式Twitter
©2020 Seiko Tanabe/ KADOKAWA/ Josee Project(国内・海外・共通)
©2020 S.T/ K/ J.P(短縮版)

TVアニメ『呪術廻戦』作品情報
毎週金曜日深夜1時25分からMBS/TBS系全国28局ネット“スーパーアニメイズム”枠にて放送中
公式サイト
公式Twitter(@animejujutsu)
©芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会