Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
ぴあ 総合TOP > 『VS嵐』と『嵐にしやがれ』は“自然体の5人に会える番組”だった 愛情と感謝にあふれた2番組の終了に寄せて

『VS嵐』と『嵐にしやがれ』は“自然体の5人に会える番組”だった 愛情と感謝にあふれた2番組の終了に寄せて

音楽

ニュース

リアルサウンド

 嵐の活動休止を目前に控えて、10年以上の長期にわたって愛された2つの冠番組もそれぞれ一旦の幕を引いた。『嵐にしやがれ』(日本テレビ系)と『VS嵐』(フジテレビ系)。どちらの番組も互いに負けず劣らず、嵐の魅力を引き出すバラエティ番組であったことは言うまでもないだろう。まだ名残惜しく後ろ髪を引かれる思いを抱えながらも、この2つの番組がここまで愛された理由はなんだったのか、振り返りながら考えてみたいと思う。

 『VS嵐』は木曜19時といういわゆる「ゴールデンタイム」で放送されていたことから、視聴者層は子供から大人まで幅広いと想定される。それに合わせてか、番組のロゴやセット、衣装は明るくポップで、ゲームアトラクションを中心とした構成ともあわせて、誰もが笑って楽しめる番組だ。『VS嵐』のタイトルの通り、嵐とゲストが対戦するというコンセプトのため、より「チーム感」の強い嵐の姿を見れることが、ファンにとって一番の見どころだったように思う。

 また、最終回で二宮和也が「闘争心があまりないグループだからこそ(『VS嵐』は)続いたのかも」とコメントしていたように、「勝っても負けても」笑顔で終わるのがミソだったのではないだろうか。これは嵐特有のアドバンテージなのかもしれないが、彼らには「格好がつかない」「肝心な所で締まらない」ことさえも「これが嵐らしいよね」と持ち味に変えてしまう魅力がある。勝てば当たり前にかっこよく、負けてもチャーミングでかわいい。どちらに転んでも魅力に変えてしまえることは、嵐の大きな強みである。『VS嵐』はその「ハズしてこそ嵐」な魅力を存分に発揮させるため、「クイズ松本潤」や「二宮くんの月イチ攻め衣装」など、あえてズレている部分を見せていくコーナーやギミックも搭載していき、それが決して「やりすぎ」とはならない絶妙なバランスで組み立てられ、番組の強みとなっていったのだ。

 一方、『嵐にしやがれ』は土曜21時に放送され、『VS嵐』と比べ、視聴のターゲットはどちらかというと20代以降が想定されるだろうか。番組は放映当初から振り返ると色々と変遷がありつつも、近年は前半がスタジオ収録、後半は個人ロケという構成がメインとなっており、個性豊かな一人ひとりのキャラクターがクローズアップされているところもこの番組の特徴のひとつだ。

 珍回答も多数生まれた「グルメデスマッチ」では、前身番組の『嵐の宿題くん』の頃からの名残とも思える、クイズ形式のパートと「食べる」シーンが見られ、それらは『嵐にしやがれ』の持ち味のひとつにもなっていたと思う。クイズでのコント的な面白さももちろんのこと、嵐の「食べる」シーンが見られるのも良い。彼らはとにかく幸せそうに食べるので、見ているだけでこちらまで幸せが伝播する。メンバーの、この「美味しい顔」を週末の癒し、楽しみに待っていたファンも多いだろう。

 個人コーナーでは、嵐のプライベートな一面が垣間見えるところもファン心をくすぐる。相葉雅紀のツーリングコーナーや大野智の釣り・ソロキャンプなど、趣味全開でのびのびと自由に楽しむ姿が見られるありがたい企画だった。また、「THIS IS MJ」に櫻井翔がゲスト出演したり、相葉のツーリングに二宮が呼ばれたりと、メンバー同士での「ゲスト」あるいは「コラボ」などの豪華サプライズもこの番組ならではの魅力だ。

 2つの番組はそれぞれきっちりと棲み分けをしながらも、確固たる共通点もある。それは、根底に流れる「メンバーの仲の良さ」だ。どちらの番組も最後の放送に「5人だけのロケ」を組み込んだことが、それを裏付けている。最終的にファンがみたい嵐は「自然体の、5人でいる時の嵐」だということを、どちらの番組スタッフも心得ていたのであろう。それは、「嵐5人に自由に楽しんでもらうこと」であり、スタッフがいかに嵐に信頼を寄せているかがわかる。そして、その信頼を勝ち取ったのは、まぎれもなく嵐自身の功績である。そう、2番組をここまで長く愛される番組にしてきたのは、彼らの「周りへの感謝の心と愛情」なのだ。

 両番組とも最終回にこれでもかと内容が詰め込まれ、スタッフからゲスト、スポンサーに至るまで、関係各所からの「全力の愛情」による演出の数々がそれを物語っている。まず、スタッフやゲストへ向けた、嵐からの「愛情と感謝」の積み重ねがあった。そして、それは大きな愛となって嵐に戻ってきたのだ。ファンや視聴者のことを考え、スタッフのことを考え、ゲストのことを考えて、いつも誠実に真摯に向き合う彼らだったからこそ、10年以上も愛される番組の一旦のフィナーレを、華々しく飾ることができたのだろうと確信している。

 「愛情と感謝」とはシンプルな理由だが、それをたゆまず継続するのは難しい。嵐はそれをきっちりと実現させた、稀有なアイドルなのだ。

「嵐へ贈る30秒」TVCM

 嵐を愛し、嵐に愛された愛情あふれる2つの番組が幕を引いたことは、心の底から名残惜しく寂しい気持ちでいっぱいだが、こんなにも多くの人に愛されている嵐を確認できたことは、ファンにとって僥倖であり、またいつか5人の笑顔に会える日を待つ原動力ともなった。

■佐久良夏生
1988年生まれ。茨城出身。日本の音楽・コミック・サブカルチャーが好きです。