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『MIU404』の裏テーマは“正義を語る”だった 脚本家・野木亜紀子が裏話とともに明かす制作秘話

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リアルサウンド

 ドラマ『MIU404』(TBS系)のBlu-ray&DVDが、12月25日に発売を迎えた。大人気ドラマ『アンナチュラル』(TBS系)チームの再集結、綾野剛と星野源のダブル主演と、放送開始前から注目を集めていた本作。新型コロナウイルスの影響による撮影中止、放送延期、話数の調整……と様々な困難を前にしても、エンタメの力を信じ続ける作り手の気概に、多くの視聴者が胸を熱くした。その本気は、Blu-ray&DVDにおいても例外ではない。

 ディレクターズカット版全11話(540分)に加えて、特典映像はなんと180分。放送時間上泣く泣くカットした未公開シーン、微笑ましいNG映像、主要キャストのロングインタビューにHappy Birthday Movie……また、特典音声として最終話には、綾野剛×星野源×脚本家・野木亜紀子×監督・塚原あゆ子によるオーディオコメンタリーを収録。さらに封入特典として、脚本家・野木亜紀子による各話ライナーノート“nogi note”掲載のブックレットまで付いてくるというから、ファンにはたまらない。

 今回、リアルサウンド映画部では、Blu-ray&DVDに収められる特典たちの、さらに裏話を聞こうと脚本家・野木亜紀子にインタビューを実施。 「“nogi note”ライナーノート」的に、お楽しみいただけたら幸いだ。(佐藤結衣)

このディレクターズカット版こそ正規版 最終話は5分以上長い

――『第58回ギャラクシー賞上期』テレビ部門入賞おめでとうございます。高い評価を得ていますが、どんなお気持ちですか?

野木亜紀子(以下、野木):ありがとうございます。面白いことが言えなくて申し訳ないんですが、もはや「みんな頑張った!」としか言いようがないです。

――ディレクターズカット版をご覧になられていかがですか?

野木:やっぱり監督がほしかった“間”とか本来の構成や流れっていうのが、ディレクターズカット版はすべて入っているので、「もともとこうしたかったんだ」っていうのを楽しんでいただける形になっていると思います。今回は、入り切らなかったものが多くて。このディレクターズカット版こそ正規版と言えるものになっているので、できれば観ていただきたいですね。特に、最終話は5分以上長くなってます。

――一足先に拝見させていただいたのですが、あの方が機捜うどんをすするシーンは観られてよかったです。

野木:オンエアの放送時間には収まりきらなくて、カットになってしまったんですよね。志摩(星野源)のシーンも短くなっていましたからね。最終話は15分拡大放送だったのに、拡大にさえ入り切らなかったっていう(笑)。「収まりきらない脚本を書いてしまった私が悪いよ、ごめんね」って感じで、ちょっとなんとも言えないところではありますが。

現場で出るアイデアたちを伝えたくて始めた“nogi note”

――“nogi note”についても読ませていただきました。こちらは、いつごろ執筆されていたのでしょうか?

野木:11月半ばすぎに書き上げました。本来であれば放送が終わってすぐに書くつもりだったのですが、公式メモリアルブックで演出解説を書き下ろすと言ってしまったために、その締め切りに追われつつ書き進めて。もともと、このライナーノートは『アンナチュラル』のBlu-ray&DVD BOXのときにもやっていて。というのも、『アンナチュラル』のときは脚本ばかり注目されてしまったので、私だけではなくて「この部分はプロデューサーさんのアイデアだよ」、「ここに関しては演出でこうなったんだよ」っていうところも知ってもらいたくて書いたものだったんです。今回は演出解説については公式メモリアルブックに書くことができたので、その部分は“nogi note”では少なめになっています。

――公式メモリアルブックと“nogi note”と……解説スペースが増えて、ファンとしては嬉しい限りです(笑)。

野木:増えたら増えた分だけ書けるもんだなって(笑)。ほかにも「役者さんのここがすごい」みたいなことも、書こうと思えばいくらでもあるんですけど、そういうのは観ればわかるっちゃわかるところでもあるので、なるべくみなさんがテレビで観ていても知ることができないところ、言われてみないとわからないようなところを中心に、ちょっとしたガイドみたいな気持ちで書いています。

14話から11話へ、それもまた「not found」

――実際に“nogi note”でも、「スタッフからアイデアを募り」という部分もありましたね?

野木:『MIU404』は、もともと14話という少し長いドラマを予定していたので、「これ書いてほしいみたいなネタがあれば書くよ」と言ってあったんです。そうしたら塚原あゆ子監督がスタッフからアイデアを募ってくれたり、新井順子プロデューサーからも簡単な箇条書きをもらったんですよ。もらったんですけど、どれも本当に一行程度のアイデアなので「これをどうしろっていうんだ!?」というものばかりで(笑)。「どこかで使えるところがあったら使うよ」なんて言ってたなかで使ったのが、7話のあの部分でしたね。

――「撮影前日滑り込みでお願いした」というお話もありましたが、ギリギリでアイデアを反映させていくというのも興味深かったです。

野木:全く褒められることじゃないんですけど、執筆と並行して撮影していると、ときどきあるんですよね。今回は菅田将暉さん演じるクズミの動きだったんですけど。4機捜の人たちにとってクズミの顔がわからない状態でイメージ映像が入ったとき、やっぱり特徴的な何かをつけなければと思ったんです。昔からある手法で言えば、“腕にドラゴンのタトゥーが入っている”とか“変わったプレスレットを付けている”みたいなのもあるんですけど、今どきそれもベタなので。特徴を動きで見せたほうがいいのかもなと思って「まだ足せる?」って訊いたら「撮影は明後日です」っていうから「じゃあお願いします」って(笑)。今度発売される『MIU404 シナリオブック』では、その箇所は差し込み原稿を反映させた形で収録しています。

――もともと14話だったというお話でしたけれど、あと数話あったらこのアイデアを活かしたかった、という構想はありましたか?

野木:無線大会や職質大会はやりたかったですね。事件を想定した技術を競う大会が警察署内であるそうなんです。今までドラマで見たことがないし面白いよねって、結構取材もさせていただいてたんですが、日の目を見ずに終わってしまいました。あと、本当はちょっと権力の話もやりたいと思っていたんですけど、できなかったな。ただ、もはや今となっては全11話で完成したものなので、それもまた「not found」というか。

――あったかもしれない世界線……。

野木:そうですね。でも今の世界線では存在しません。

今こそ、正義を語る意味があるんじゃないか

――権力の話を描きたかったとおっしゃいましたが、全体を通して正義に対して改めて考えさせられるストーリーだったと思います。

野木:正義については、今ちょっと必要なんじゃないかという気がしているんです。そもそもこのドラマを始める前に、実は新井プロデューサーと編成の人に「今回、表立っては言わないけれど、正義の話をちゃんとしないといけないんじゃないかと思っている」とは話していて。公式メモリアルブックに、メインキャラ5人がそれぞれ正義をどうとらえているかが掲載されているんですけど、企画書から取っているんです。人物設定をするときに、それぞれ正義をどう思っているのかというところを考えたので。10年くらい前、アメリカ映画で「正義を疑う」「正義とはなんぞや」みたいなテーマが一時期広がったと思うんです。その後はなんとなく食傷気味というか、「また正義話か」みたいなムードもあったんですけど、この数年の世の中の様子を見ていて、もう一度ちゃんと考えたり、表現しなきゃいけないんじゃないかという気がして。今こそ、正義を語ることに意味があるんじゃないかと。

――新井プロデューサーは、なんておっしゃっていましたか?

野木:新井さんも編成の人も「え、10年前にそんな空気あったんですか?」って(笑)。それを聞いて、ドラマ視聴者にとっては全然食傷気味じゃないんだなと思って、「じゃあ、やるよ」って。そういう流れで、裏テーマとして正義を語ろうと決めたんですが、やっぱり正義ってすごくデリケートなもので、刑事ドラマは今回初めてやったんですけど、本当に難しいなと思いました。

語るべきテーマを作品に合わせて描いていく

――『アンナチュラル』から『MIU404』が繋がったように、次にこのチームでドラマを作るとしたらこのテーマを描きたい、といった思いはありますか?

野木:語るべきテーマというものは、実は無限にあって、どういうジャンルの作品をやるかによって選んでいく感じでとらえています。つまり、「警察ドラマをやるなら今だったらこれを語るべきだよね」とか、「恋愛ドラマを今作るならこういうことができるよね」というように。テーマ主義で考えていくと、お話って小さくなってしまうような気がしているんです。なので、この数年はそうした形で作っています。ただ、私の中では『逃げ恥(逃げるは恥だが役に立つ)』(TBS系)の批評が『けもなれ(獣になれない私たち)』(日本テレビ系)で、『アンナチュラル』の批評が『MIU404』なんですよ。そして『けもなれ』の反省を含んだ『コタキ兄弟と四苦八苦』(テレビ東京系)と『MIU404』でもあるので、全部繋がってはいるんですよね。『MIU404』の反省や、やりきれなかったところは、また次の作品で違う形でやっていくんじゃないかなという気はしています。

――では、ジャンルとしてやってみたいものは?

野木:SFですね。現実とは違う世界だからこそ、できることがあると思うのと、単純に私自身まだやっていないという理由からなんですけど。だから、SFをやったらまた違うジャンルのものがやりたくなると思いますね。あまり同じジャンルのものを何度もできないというか、飽きちゃうところがあるので。『MIU404』を書いたから、しばらくは刑事ものはいいやって気分ですもん(笑)。

――今持てる最善を注ぎ込んで作られているからですよね。では、最後に改めて今回のBlu-ray&DVDを手に取られる方へのメッセージをお願いします。

野木:Blu-ray&DVDというのは、プロデューサーの裁量次第の部分が大きくて、どこまで頑張るかっていう話なんですけれど、今回は新井順子プロデューサーがとにかく気合が入りまくってて、特典映像が180分ですからね。「大丈夫ですか?」ってくらい入っているので、ぜひ観ていただきたいなと思います。それからブックレットには“nogi note”だけでなく番組公式SNSのまとめも入っているんですよ。放送前や放送中のことを振り返れて懐かしい気持ちになれます。ネット上で浮遊して流れていく情報が、紙として残るのは嬉しいですよね。あと、今回の主演二人はアドリブしすぎで。それが「ほとんどカットされてる」と言っていて、「ただでさえ尺がないのに、そりゃカットされるだろ」って話なんですが、なんと特典で観られます!(笑)。お宝映像なので、お楽しみください。

■リリース情報
『MIU404』
Blu-ray&DVD発売中

【Blu-ray】
価格:28,800円(税別)
仕様:2020年/日本/カラー/本編(540分)+特典映像(180分)/16:9 1080i High Definition/Vol.1~3:2層、Vol.4:1層/音声:リニアPCM2chステレオ/字幕:日本語(本編のみ)/全11話/4枚組(本編ディスク3枚+特典ディスク1枚)

【DVD】
価格:22,800円(税別)
仕様:2020年/日本/カラー/本編(540分)+特典映像(180分)/16:9LB/片面1層/音声:ドルビーデジタル2ch/字幕:日本語(本編のみ)/全11話/6枚組(本編ディスク5枚+特典ディスク1枚)

<特典映像>
・ポリまる presents 未公開&NG集 一挙公開スペシャル!
・見どころ初動捜査スペシャル!特別版
・オールアップ集
・SNSジャック! ライブ配信会見+アフタートーク 
・ロングインタビュー集(綾野剛 星野源 岡田健史 橋本じゅん 麻生久美子)
・「MIU404」ベストシーン×「感電」
・Happy Birthday Movie(岡田健史 伊吹藍 志摩一未)
・伊吹&志摩のシートベルトMovie
・MIUチャンネル
・SPOT集

<特典音声>
最終話オーディオコメンタリー(綾野剛×星野源×脚本・野木亜紀子×演出・塚原あゆ子)

<初回生産限定>
劇用車「まるごとメロンパン号」クラフト(PP素材)
※数に限りがございますので、無くなり次第終了となります。

<封入特典>
ブックレット(脚本家・野木亜紀子による各話ライナーノート“nogi note”を掲載!)

出演:綾野剛、星野源、岡田健史、橋本じゅん、黒川智花、渡邊圭祐、金井勇太、番家天嵩、菅田将暉、生瀬勝久、麻生久美子
脚本:野木亜紀子
主題歌:米津玄師「感電」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
音楽:得田真裕
発売元:TBS
発売協力:TBSグロウディア
販売元:TCエンタテインメント
(c)TBSスパークル / TBS