あの海原雄山が認めた「キャベツのスープ」とは? 『美味しんぼ』至高の料理4選
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『美味しんぼ』の登場人物で最も美味にこだわる男、海原雄山。気に入らない料理は容赦なく酷評する一方で、出来の良い物には、惜しみない賛辞を送る。
今回はそんな厳しい海原雄山が高く評価した料理を取り上げてみたい。
本村が炊いたご飯(8巻)
結婚式で、「嫁の領子に料理の基本を教えてほしい」と山岡士郎に依頼した唐山陶人。山岡は「基本といえば、飯の炊き方と味噌汁の作り方ですか」と快諾する。
それを聞いた雄山は「この男にそんなことができるわけない」と笑い、山岡と対決することに。雄山は代理として、かつて自分の下で働いていた本村に「15年ほど前にお前の家で飯を食わせてもらったことを覚えているか? それと同じものを作れ」と命令した。
対決当日、本村の作った料理を食べる唐人夫妻と東西新聞社文化部の3人。唐人はご飯を口に入れると、「この飯は…」と驚き、栗田も「山岡さんのより美味しいわっ」と叫んでしまう。味噌汁もまた、同じだった。
雄山から「なぜここまで味の違うのか」尋ねられ、「材料の差」と苦し紛れに答える山岡。怒った雄山は調理場に山岡を呼び本村に作り方を説明させるると、米粒の形を1つ1つ確認し、形を揃えたうえで米を炊いていたことが明かされる。
この様子を見た雄山は「これが決定的に重要なことなのだ。どんなに火加減に気を配ってもふぞろいだと炊きあがった米に微妙なムラができる」と説明する。また、味噌汁についても味噌を山椒の木の枝で擦り、中のシジミも形を揃えていた。
決して高級ではないが、本村の心のこもった料理を雄山は高く評価していたのだ。そして「良い材料を使えば美味しい」と考えていた山岡を激しく罵った。
中国副主席の中華料理(8巻)
山岡の暗躍もあり、美食倶楽部で食事をすることになった周大人夫妻。そのお礼として、中華街の老舗料理店に、雄山を招く。
味に厳しい雄山だが、出された「シンフェンクォオ」(蒸し餃子)を食べると、「むう……上品でコクのある味だな」と絶賛する。「エイビンチョ」(お粥)には「ああ、この香菜の香りがたまらない」と似つかわしくない発言。
さらに甘い料理「チーマーカオ」には、「ホフホフ……熱い。周りに白ゴマをまぶし、中身が黒ゴマの餡とは。実に妙なる味だ」と大絶賛。次に出された「オウヨンタンイーハウ」には、「美しいですな、半透明の白い肌のモチを青じその菜で包むとは……」と見た瞬間に褒め称える。
そして「むう、この餡は変わっている。色々なものが混ざっていますな」と、絶賛。周大人が中身を説明すると「中国人の想像力には感服する」と褒め、料理人についても「素晴らしい。中国本土でも香港でもこのコックなら第一級の地位を与えられるでしょう」と、褒めちぎった。
雄山が褒めた料理人の正体は、美食倶楽部で食事をすることを断られた中国の国家副主席。料理を絶賛した雄山は、料理の腕に感服し、副主席を美食倶楽部に招いた。味に厳しい雄山がここまで料理を褒めちぎるのは、かなり珍しい出来事だった。
キャベツのスープ(44巻)
自らの披露宴が「究極対至高」の場になった山岡と栗田は料亭・岡星で、作戦会議を行う。
ここで栗田は「究極のメニュー」を完成させるためには山岡が忌み嫌う雄山の協力が不可欠だと話す。山岡はこれに反発し、「雄山なんかくそくらえだ。この期に及んでそんな事言いだすとは裏切りだよ。結婚も考え直さなきゃな」と怒り、店を飛び出してしまった。
「岡星」の冬美は、「栗田さんがよくない」「性急にそんなことを山岡さんに求めるのは無理だ」と指摘し、栗田も非を認めて落ち込んでしまう。困った栗田は偶然会った雄山に「究極のメニュー作りに協力してほしい」「山岡さんと仲直りするにはどうしたらいいか教えてほしい」と、懇願する。
雄山は激怒し、栗田は「何もかも自分でぶち壊してしまったみたい」と肩を落とすが、そこへ中川が駆けつけ、雄山から預かった「重よし」という店に行くように書かれた紙を渡す。
2人の前で出されたのは、お椀に入ったキャベツのスープ。山岡は「この汁のだしが凄い」と驚き、栗田も「旨味の要素がいくつも混ざり合っている」と褒める。そして作り方を尋ねると、店主は北大路魯山人の白菜スープからヒントを受けたもので、鶏ガラから肉を徹底的に削ぐのが、味の秘密であることを明かし、「海原先生にも大変気に入っていただきました。『至高のメニュー』の中に加える価値があるとおっしゃって……」と語った。雄山も、この味を高く評価していたのだ。
雄山のモデルとなった北大路魯山人の料理をアレンジしたキャベツのスープ。その味を彼はかなり気に入っているようだ。
ボウゼの寿司(45巻)
年に一度コハダの新子の寿司を食べることを楽しみに生きている老人を見た山岡は、「究極のメニュー作り」に疑問を持ち、「意味がないものだった」「辞めたい」と言い出す。
栗田はまたも雄山を頼り、美食倶楽部へ行き「山岡さんを考え直させてください」と頼む。「放っておけ」と突っぱねる雄山だったが、北大路魯山人の伝記を書くために、栗田から東西新聞社で保管されていた内密に持ち出した資料を受け取っており、その際に約束した「ご褒美」をもらっていなかったことを指摘されてしまう。
半ば強引に協力を得た栗田は、山岡を徳島へと連れ出す。訪れたのは雄山が紹介した『青柳』という店で、提供された料理はボウゼ(イボダイ)の新子を使った握り寿司。口に入れた山岡は、その鮮烈な味に驚いてしまう。
そして店主から単純に見えるボウゼの寿司に様々な技法が使われていることを教えられた山岡は、単純に見えたコハダの新子の寿司にも実は料理の粋を尽くしたものだったことを忘れていたとして、究極のメニュー作りを再開することを誓った。
万事うまく行ったあと、栗田が美食倶楽部を訪れる。雄山は「あんなクズにボウゼの寿司は過ぎたものだったな」とバッサリ切るなか、栗田は『青柳』でもらったボウゼをしめたものを手土産として、差し出す。
「余計なことを。徳島に行く楽しみが減るではないか」と文句を言う雄山に「そうですか、では持って帰ります」とうそぶく栗田。雄山はおチヨに、台所に下げるよう命じた。
あの雄山が「楽しみ」とまで評価したボウゼの寿司。徳島の『青柳』は実在店舗で、実際に味わうことができる。
雄山絶賛の料理を味わってみよう
雄山絶賛の料理は自分で作る、あるいは店舗を訪れるなどして味わうことができる。これを機に実際に試してみると『美味しんぼ』の新たな魅力に気づけるかもしれない。