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【『スリル・ミー』キャスト対談第2弾】 成河×福士誠治 ~“資本主義の病”を描く旅人ペア~

ステージ

インタビュー

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成河(左) 福士誠治(右) 撮影:杉映貴子

「私」と「彼」、たったふたりの出演者が一台のピアノと共に繰り広げる100分間ノンストップのミュージカル、『スリル・ミー』。実際にあった衝撃的な殺人事件を題材にアメリカで生まれ、日本では2011年に初演された人気作が、2021年4月に2年ぶりに再演される。これまで様々なペアが演じてきた「私」と「彼」は、日本初演10周年となる今回もトリプルキャスト。3組のうち、2018-19年公演に引き続いての登板となるペア、成河(私)と福士誠治(彼)に話を聞いた。

“再演”ではなく“リクリエイション”

──まずは、今作に再び挑もうと思った理由をお聞かせください。

福士 僕、“再演”って人生で初めてなんですよ。同じ役をまたやることに対して、「ん……」っていう気持ちが実はあるのですが、今回に関しては流れるように決まりましたね(笑)。ソンちゃん(成河)とまたやれるなら、スケジュール的には大変だけどやるか! と思いました。

成河 めっちゃ分かる。僕も前回一緒に作った誠ちゃん(福士)とじゃなかったら、またやることに興味は湧かなかったと思います。日本には1か月稽古して1か月公演しておしまい、という文化がありますけど、僕は演劇って、本来は5年くらいかけて作り続けるものだと思ってるんですよ。だから今回も、“再演”でも一から作るのでもなく、前回からの“続き”だと思って臨むつもり。その価値があると思える限り、まだまだ何年もやれると思ってます。

福士 そこには性格の違いがあって、僕は芸術追求タイプのソンちゃんと違って燃え尽き症候群タイプだから、1回1回「終わったー!」ってなるんですけど(笑)。

成河 もちろん僕も、その都度燃え尽きながらはやりますよ(笑)。でも少し時間が経って、自分たちが描いた絵を俯瞰で見ながら創作を続けられるって、贅沢なことじゃないですか。

福士 渦中にいるとどんどん描き足していっちゃうけど、俯瞰で見ると消しゴムで消せるからね。邪魔だったものを消して、作品を研磨するイメージで臨めたら、とは僕も思っています。

成河 そうそう。そういう意味では“再演”じゃなく、“リクリエイション”っていう言葉がふさわしいのかなと思いますね。

プライベートは大嫌い!? でも似ているところがいっぱいあるふたり

──ふたり芝居ということで、お互いの信頼関係が大事になってくると思います。おふたりは前回が初共演でしたが、どのように信頼関係を築いていかれたのでしょうか。

成河 一緒にいっぱい旅行をしました! …嘘です、1回も行ってない(笑)。

福士 行ってないね(笑)。心の旅行はいっぱいしましたけど。

成河 いやだって、分かるでしょう? ふたりともめちゃめちゃ照れ屋でナイーブだからこそ、こんだけお喋りなんですよ(笑)。

福士 でも僕、ソンちゃんとはずっと喋っていられるな。何かひとつ話題をポンって置いたら、それに対してふたりであーだこーだ言えるところが、わりと最初からあった気がするんですよ。

成河 懐かしい、前回の稽古中もそうだったね。誠ちゃんとは、好きなもの嫌いなものは全然違うんですけど、色んな物事に対する距離感が似てるんじゃないかと思います。

福士 あと、現場が楽しくないとダメなところ。もちろんプロとしてお仕事をしているんだけど、根本に楽しい気持ちがあったほうが面白い、って思ってるところが似ているんじゃないかな。

成河 すごく分かる。あと僕がものすごく共感してるのは、オールラウンダーだっていうところ。ひとつのジャンルを極めることも大事ですけど、俳優ってそんな単純なものじゃないような気が僕はしているから、色んなジャンルに垣根なく挑戦する誠ちゃんに共感するし、僕もそうありたいと思ってます。だから誠ちゃんのこと、ずっと“旅人”って呼んでるんですけど(笑)。

福士 そ、僕たちはゴールのない“旅人”(笑)。

成河 本当、似てるところがいっぱいあるふたりだよね。プライベートは大っ嫌いだけど!(笑)

福士 あはははは! それめちゃくちゃ面白い、すげー“垣根”あるじゃん(笑)。

──大っ嫌いなんですか(笑)。

成河 大っ嫌い。ははははは! いや、プライベートを知らないんですよ(笑)。

福士 そうそう、旅公演でちょっとご飯食べたりはあったけどね。

成河 結局ふたりとも“旅人”だから、それぞれ自分の時間が大事なんです(笑)。

福士 たとえば夕方5時くらいに偶然会って、お互いその後の予定がなかったら、「飯行こう」って絶対なると思うんです。で、そうなったら多分、ずーーーっと話し続ける(笑)。

成河 そうだね、半日くらい(笑)。

福士 でも実際には、お互い6時くらいから予定があったりしてすれ違うことが多い。仕事に対する姿勢も、プライベートも“旅人”なふたりなんです(笑)。

1ミリでいいから“正解”のその先へ

──前回の公演を通して、演出の栗山民也さんにはどんな印象をお持ちですか?

福士 僕は結構、いい意味での“してやられた感”がありますね(笑)。前回の時点で既に色々な人がやってきていた作品ですけど、成立さえしていれば同じ動きじゃなくてもいいじゃんと思って、ソンちゃんと色んな動きを提示したんです。でもある時、「形式的に動くことで生まれる神話的なものが君たちの狂気性に繋がる」と言われて、「彼」という人間がスコンって腑に落ちてしまった。「彼」の心の動きを考えて一生懸命積み上げていたピラミッドが、そのひと言で一気に3段から5段になって土台がしっかりしちゃった気がして、なんか悔しかったです。

成河 ああ分かる! リクリエイションを本気でしようと思ったら、決められた動きっていう“正解”は一番邪魔なもの。俳優は失敗をしながら深めたり積み上げたりしていくもので、そのプロセスが極めて重要なんですよ。でも栗山さんが持っているのは、とても強力な正解だから。それでも誠ちゃんとは、「今俺たちが思い付いたプランなんて正解と比べたらめちゃめちゃダサいかもしれないけど、それでも言ってこうぜ、傷ついてこうぜ!」ってやってましたけどね(笑)。

福士 そう、1回プレゼンはするんです(笑)。でも説得されちゃう。今回もきっとそうなるとは思いますけど、1ミリでもいいから“正解”の先に行きたいというのが意気込みです。

「私」と「彼」の愚かしい振る舞いが自分たちの教訓にならないといけない

成河 僕が前回、一番説得力を感じた栗山さんの言葉は、「この作品は“資本主義の病”を描いている」というもの。きっと色んな捉え方ができるから『スリル・ミー』は人気があるわけで、“究極の愛”というのもそのひとつだと思います。ただ僕の中には「本当にそれでいいの? そのひと言では語れない作品なんじゃないの?」という問いがあって、そんな時に“資本主義の病”と言われてとてもしっくり来たんです。この話を、純粋に愛し合っているふたりを周りの大人がダメにした、という他人事にしてはいけない。ふたりの愚かしい振る舞いが、今も資本主義社会に生きる僕たち自身の教訓にならないといけないと、少なくとも僕は思っています。

福士 100年前の事件だけど、同じような愚かさって、今の時代にもあるものだからね。あんまりこういうことばっかり言うと、お客さんが観に来たくなくなっちゃうかもしれないけど(笑)。

成河 いやでも、それが演劇だと思うよ。人間の欲とか悪意、闇みたいなものって、あまりにも近づきすぎると取り込まれてしまう危険があるけど、演劇だと遠くから観て、問題解決につなげることができる。確かに、究極の愛を描いた作品として大切に思っているお客様にとっては聞きたくない話かもしれないけど、栗山さんはどっちの柱も持っている中でこっちの柱を僕たちに預けてくれている感覚があるから、今回も僕たちはこの柱でやらせていただくと思います。

福士 いやあ面白いな~、聞き入っちゃった。前回も、こういう対談取材でソンちゃんの話を聞いていたおかげで、稽古にスッと入れたことを思い出しました。今回も、稽古が始まる直前くらいにまたこういう取材を組んでもらいたいですね。……いや、それより稽古しないといけないか(笑)。まずは歌を思い出さないと、だって僕たち、ビジュアル撮影中に音源が流れてたのに「え、この歌って俺が歌ってたっけ?」っていうくらい忘れていたんだよ?(笑)

成河 そうそう、「どっちだっけ?」みたいな(笑)。しょうがないよ、旅人だから!

福士 はい、旅人ですからもう(笑)。

──おふたりならではの興味深いお話の数々、ありがとうございました!

福士 あ、もう大丈夫ですか? 好きな食べ物の話とか、しなくていいですか?

成河 好きな食べ物かぁ~、時間かかるよ俺! ……めんどくせー、みたいな顔しないで(笑)。

──じゃあせっかくなのでお願いします。広げなくていいので(笑)。

福士 はい(笑)。おごってもらえるならお寿司で、いつでも食べたいのは唐揚げかな~。

成河 あ、唐揚げ好きなの? めちゃ似合いそうだね! 唐揚げのCMやってほしい。

福士 やりたいな~。ソンちゃんは、パクチーでしょ?

成河 違う違う。いやパクチーなんだけど、パクチーは食材やん?

福士 ああ、そういうこと。

成河 だからね、トムカーガイ。世界の料理の中で、タイ料理が一番の好物です!



取材・文:町田麻子 撮影:杉映貴子


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ミュージカル『スリル・ミー』
原作・脚本・音楽:Stephen Dolginoff
翻訳・訳詞:松田直行
演出:栗山民也
出演:田代万里生(私役)×新納慎也(彼役) / 成河(私役)×福士誠治(彼役) /松岡広大(私役)×山崎大輝(彼役)
ピアニスト:朴勝哲 落合崇史 篠塚祐伴

【東京公演】
2021年4月1日(木)~2021年5月2日(日)
会場:東京芸術劇場シアターウエスト

【群馬公演】
2021年5月4日(火)・5日(水)
会場:高崎芸術劇場 スタジオシアター

【愛知公演】 
2021年5月15日(土)・16日(日)
会場: ウインクあいち大ホール

【大阪公演】
2021年5月19日(水)~2021年5月23日(日)
会場:サンケイホールブリーゼ

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