『BLEACH』一護の仲間たちの共通点は? 「死神代行篇」登場キャラクターを分析
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連載終了から4年が経ってもなお高い人気を誇る久保帯人『BLEACH』。家族を護るために悪霊である虚を退治する死神となった高校生・黒崎一護と、死神、人間、滅却師といった仲間たちとの戦いを描く。
『BLEACH』には大きく分けて5つの物語がある。始まりの物語となるのが「死神代行篇」だ。ルキアが出会い、一護が死神とその世界に関わりを持っていく起点となる。
俯いていた少年が前を向く
ルキアと出会う前の一護は少しばかり斜に構えている。売られたケンカは買うが、門限も守るし、家族との食卓は欠かさないようにするし、なんだかんだ言っても家族を大事にしている。派手な見た目の割に成績も優秀で、成仏できない霊に対してはなんとかしてやろうという気持ちも持っている。こうして改めて文字にして見ると分かるが、一護はマジメで優しい人間なのだ。
斜に構えているというのは、自分の生き方に対してだ。どこか自分が何をしても無駄だと思っているようで、でもそれを認めたくないようでもある。幼なじみの竜貴は昔の一護のことをこういう。
「ヘラヘラしてお母さんにベッタリの甘ったれで…」
でも、母を、誰かを守れるようになろうと一生懸命だった。それが自分のせいで母が死んだことによって変わる。ルキアに出会い、母の死は虚によるものかもしれないと知るが、それでも自分が直接の原因だったことには変わりはないと頑なだ。
しかし、母・真咲の墓参りに行ったタイミングで出会ってしまう。母を殺した虚、グランドフィッシャーに。それは自分自身の過去との対話となり、乗り越えるための壁となった。
倒すまでには至らなかったが、怪我を負いながらも一護はグランドフィッシャーを撃退する。敵を討てなかったことに落ち込む一護だったが、父・一心の言葉が救う。
「俺より後に死ね。そんでできれば笑って死ね。でなきゃ俺が真咲に合わせる顔がねぇ」
ふざけたことばかり言っている一心だが、元死神で、真咲が死んだ理由も一護の今の状況も知った上で言っているのだとしたら、なんとも重い言葉ではないか。
この事件をきっかけに、一護はようやく本当の意味で“前を向く”。そして前を向いたことによって視野が広がり、次第に護りたいと思う人が増えていった。
前を向いた一護の元に、痛みを伴いながらも仲間が集まる
「死神代行篇」にはさまざまなキャラクターが続々と登場するわけだが、ここで出てきたキャラクターたちこそが、『BLEACH』のキーマンとなっていく。
もともと滅却師(クインシー)として力を使いこなしていた石田雨竜以外の井上織姫、茶渡泰虎は一護が死神になり、その霊力に触発されて能力を開花させていく。
なぜ、一護の仲間となったのが茶渡や織姫だったのか。2人以外にも高い霊力を持つ人間はいた。竜貴なども虚の姿を確認しているが、何かしらの能力が発動するということはなかった。
ひとつキーワードを挙げるとするなら、「家族」ではないだろうか。
育児放棄の家庭から、15歳の上の兄に連れられて逃げ出した織姫。その兄は交通事故で亡くなり、虚化した。織姫は一護の母親の話を聞いたときに「一方的なシンパシー」を感じていた理由が分かったとひとり呟いていた。
茶渡は早くに両親を亡くし、メキシコの祖父の元で育てられていた。一護と出会う前の茶渡は強いがどこか頼りなげだった。しかし、一護と「互いのために拳を振るうという約束」をしてからはその指針をもとに行動しているように見える。
2人は「家族」のことがきっかけで、自分の中に揺らぎを持ち、無意識のうちに本来の自分を隠してしまっていた。それが似た痛みを持つ一護の言動によって救われ、殻を破る。もちろん、2人がもともと一護に対して好意的だったのもあるが、それは他の友人たちだって同じだ。一護は優しい人間だが、その優しさは家族を失った経験がある者にこそ沁みるのではないだろうか。雨竜やルキアも例外ではないだろう。
何もない彼らが手に入れるものとは
死神代行篇は伏線だらけだ。この伏線を回収していく長い物語が『BLEACH』であると言えるだろう。
高校生ながらそれぞれが何かを失っている状態で始まった物語。失くしたものは取り戻せない。では代わりに何を手に入れるのか。仲間である以上に、互いが大切な人になっていく。それは彼らにとって、新しい家族とも言える存在なのかもしれない。
(文=ふくだりょうこ(@pukuryo))
■書籍情報
『BLEACH』(ジャンプ・コミックス)74巻完結
著者:久保帯人
出版社:株式会社 集英社
https://www.shonenjump.com/j/rensai/bleach.html