『美味しんぼ』屈指のトラブルメーカー・富井副部長にも長所はある? 好感度あげたファインプレー4選
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『美味しんぼ』に登場する人物のなかで、良くも悪くも愛されているのが、富井副部長だ。失態を重ね、上司の谷村部長や部下に山岡士郎を困らせる彼だが、実は心優しい一面を持ち、ファインプレーをすることもある。そこで今回はそんな富井副部長の優しい一面を紹介しよう。
家族愛が強い
富井副部長は妻と子供に強い愛情を注いでいる。そのエピソードが披露されたのが、10巻の「牛乳嫌い」だ。
東西新聞社文化部に妻から電話が入り、応対した栗田から受話器を渡された富井副部長は「仕方がないなあ、職場に電話なんかしてきやがって、怒鳴りつけてやる」と話す。しかしいざ受話器を耳に当てると、「今朝はごめんね、君の卵焼き、失敗しちゃって。明日はちゃんとするからね」と頭を下げる。
そこで妻から、「息子のヒトシが学校で行方不明になった」「誘拐されたかもしれない」と告げられた富井副部長は大きく取り乱し、家に帰ろうとする。するとヒトシが山岡とともに現れ、「お父さんは心配したぞ」と泣きながら抱きつく。そして誘拐犯人を山岡と決めつけ、イスで殴りかかった。
その後ヒトシは学校の給食に出される牛乳が嫌で、自ら逃げたことが発覚。富井副部長はそれを聞くと「バカモノ。そんなことでこんな騒ぎを」「牛乳飲まないと大きくならないぞ」と叱りつけた。(10巻)
文化部のメンバーに嫌味を言うことも多い富井副部長だが、家族への愛は本物。息子への愛情も、相当なものがあった。
兄弟愛
富井副部長には建設業界で社長を務める「修」という弟がいる。ところが2人は仲が悪く、1人で会いたくないと考えた富井副部長は、山岡と栗田を料亭に同席させ会食し、父親の墓を移動させることについて、相談を始めた。
その席で富井副部長は「父さんは優しい父親だったな」「隣の子供がチューインガムを食べているのをお前(弟)が羨ましがって、メリケン粉をこねてガムを作ってくれた。それでお前の機嫌が直ったんだ」と思い出を話す。しかし弟は「親父は兄貴には優しかったが俺にはちっとも優しくなかった」「兄貴は大学に行かせたのに俺は行かせてもらえなかった」と憤る。
富井副部長はそれでも「それはお前が受験のときに親父が仕事に失敗したから」と父を庇う。弟は「メリケン粉でガムなんて夢を見てるんじゃないのか?」「錯覚だよ。オヤジが優しかったっていうのも兄貴の錯覚だよ」「親父の墓なんか移転したけりゃ勝手にすればいい」「俺は一切面倒を見ない」と罵倒し、出ていってしまった。
口直しに「岡星」で栗田と食事をした山岡は、生麩から、富井副部長の父が作った代用ガムのヒントを得る。そして富井兄弟を招き、メリケン粉を水に流しながら揉んで代用ガムを再現する。
この味で昔を思い出した富井弟は改心し、謝罪の言葉を口に。富井副部長も「お前を働かせたりして私も不甲斐ない兄だったよ…」と謝り、父親の墓を新しく作り直すことを約束し、大団円となった。(17巻)
厳しい状況でも父の愛を信じ、決して悪く言わなかった富井副部長。父と弟への愛情を痛感させた。
ねぎまで上司の失態を防ぐ
地下鉄のホームでネズミを見て腰を抜かし、さらに定期入れを落としたにもかかわらず「盗まれた」と騒いだ富井副部長。ホームに居合わせた氷岩人事部長は、その様子に憤りを持つ。
氷岩人事部長から谷村部長とともに喫茶店に呼び出された富井副部長は説教を受けるが、その際、人事部長の後ろにいた山岡の変顔に吹き出し、口の中に入れたコーヒーを人事部長の顔にかけてしまった。
激怒する氷岩部長は、「文化部のメンバーを全員入れ替える」と大原社主に迫る。困惑する大原社主、小泉局長と文化部の谷村部長、富井副部長、そして山岡と栗田。ここで山岡は、快楽亭ブラックの落語から「ねぎま」でなんとかすることを思いつく。
大原社主の計らいで、角丸副総理など政財界のお偉方を集め、「江戸情緒を味わう会」を開いた文化部。ここで出された料理はネギマで、大原社主は同席した氷岩部長に「皆さんの前で氷岩部長が食べ方を教える」と話すと、「私の言う通りやってみたまえ」と食べ方を説明し、やって見るよう促した。
説明通りに食べると、ネギの芯の部分が喉に引っかかり、「熱い」とのたうち回る。ここで富井副部長が大きな声で「熱い、熱い、熱いよお母ちゃん」などと叫んで苦しむ。一同の注意は富井副部長に向けられ、氷岩部長が苦しむ様子から、完全に注意がそれたのだ。
氷岩部長は「君のおかげで私の醜態が目立たなくて済んだ」「本当に軽佻浮薄な人間に、とっさにあんなことができるわけがない。すまなかった」と謝罪。人事異動の話は全て消え、丸く収まった(26巻)
発端は富井副部長の失態であり、アイディアも山岡だったものの、富井副部長が文化部を救ったことは、間違いないだろう。
妻へ愛情弁当を作る
倹約のため昼食を弁当にすることにした山岡夫妻。この構想を聞いた三谷と荒川も賛同し、お弁当同盟を結成する。話を聞きつけた富井副部長も「奥さんが外出する日は別として、私が毎日弁当を作っておいてあげるんだ」「外出や出前が続いたら身体によくないからね」と乗り気。
そして「自分だけ弁当を作って食べるのは管理職として問題があるから止めた」「でも君たちが弁当を持ってくるなら、私も弁当を持ってこられるってわけだ。私もお弁当同盟に入るぞ」と宣言。続けて「ありがたい。これでうちの奥さんと一緒の弁当が食べられる。夫婦の絆が強くなる。愛は全てに勝つ」と大喜びした。
翌日富井副部長が作ってきた弁当は奥さんと一緒のもので、栗田が「すごいわー。こんなお弁当を作ってもらえるなんて、とても幸せな奥様だわ」と絶賛するほど。そして「今ちょうど奥さんも弁当の蓋を開いたところだよ」「家と会社、離れていても二人の心は一つさ。僕は幸せだなあ」と喜びの表情を浮かべる。
富井副部長はお弁当同盟がかなり気にいったようで、「お弁当同盟バンザイ。うちの奥さんの愛情を感じながら食べる昼ごはん。ああ、幸せ」とご満悦だった。
結局お弁当同盟は社員食堂の利用者減少に危機感を募らせた相川料理長が、山岡や栗田のアドバイスを受け弁当作りに着手したため、「当分お休み」に。富井副部長は「奥さんと愛情を通わせるお弁当の時間がなくなるなんて、悲しい」と落胆する。
それを見た山岡は「お弁当同盟止めてよかったな」と笑い、三谷と荒川も「副部長の気持ちの悪いおのろけから開放されるもんね」と同調した(49巻)
奥さんのために毎日弁当を作り、一緒の弁当を食べることに幸せを感じる。少々「気持ちの悪いおのろけ」のような気もするが、富井副部長が強く妻を愛している様子を窺い知れるエピソードだった。
富井副部長のいいところも見直そう
『美味しんぼ』屈指のトラブルメーカーといわれる富井副部長だが、随所に良い部分も見せているのだ。漫画を読み返してみると、そんな富井副部長のイメージとはかけ離れた意外な一面を見ることができるかもしれない。