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ファンが本当に見たかった物語の続き 『ジュラシック・ワールド/サバイバルキャンプ』の凄さ

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リアルサウンド

 Netflixオリジナル『ジュラシック・ワールド/サバイバル・キャンプ』が、凄い。その一言に尽きる。2020年9月18日よりシーズン1が配信されたと思いきや、1月22日からすでにシーズン2が配信された。わずか4カ月程度で続編を出せたこと自体も凄いが、そんなスピード感がありながらも、非常に丁寧な作りがされていて脱帽してしまう。

『ジュラシック・ワールド/サバイバル・キャンプ』予告編 – Netflix

 本シリーズは『ジュラシック』シリーズ初の公式アニメーション作品になり、シーズン1は2015年公開の『ジュラシック・ワールド』のバックストーリーを、シーズン2はパーク崩壊後から2018年公開の『ジュラシック・ワールド/炎の王国』前の時系列で描かれている。Netflixではどちらかといえば子供向けアニメの区分に表示される本シリーズ。しかし、だ。『ジュラシック』シリーズを26年間愛し続けた筆者から言わせてみれば、このシリーズこそ“ファンが本当に求めていた”『ジュラシック・ワールド』の続編だと断言できるのだ。

シリーズ初、少年少女が主人公の物語

 本作がこれまでの『ジュラシック』作品と何が違うかということについて語るなら、シリーズやアニメという形態以外に、“子供たちが主人公の物語”であるということが挙げられる。『ジュラシック』シリーズには、毎作子供が登場してきた。素晴らしい1作目には、ジョン・ハモンドの孫レックスとティム、2作目にはマルコム博士の娘ケリー、3作目には離婚したカービー夫妻の息子エリック、4作目にはクレアの甥っ子であるグレイとザック、五作目にはロックウッドの孫娘、メイジー。彼らは物語において、“子供視点のパークや恐竜”を語る重要な立ち位置にいたが、なんと本シリーズは初めて彼らのような子供を主人公においているのだ。グラント博士のような頼れる恐竜博士も、叫んではいけないところで叫びまくるミセス・カービーもいない。初めて、子供たちだけで恐竜の住む島で生き残るという、過酷だけどワクワクする内容だ。

 ちなみに、『ジュラシック』シリーズに登場する子供は、誰もが両親が離婚またはその危機に瀕していたり、両親がいなかったりする。そして『サバイバル・キャンプ』の主人公、ダリウスもまた父親を失った少年である。そんな風に、しっかりとした『ジュラシック』シリーズ作品の主人公に相応しい恐竜大好き少年と共に、救いようもないボンクラ息子のケンジ、インフルエンサー系女子ブルックリン、牧場ガールのサミー、潔癖症のベン、内気なアスリートのヤズ達がグループで「ジュラシック・ワールド」でのキャンプ体験に挑む。

オリジナルスタッフがしっかり監修しているからこその、クオリティの高さ

 本シリーズは、ドリームワークス・アニメーションとアンブリン・パートナーズが初めて共同制作した作品でもある。そしてプロデューサー陣はオリジナルの監督・脚本を手がけたスティーヴン・スピルバーグ、『ジュラシック・ワールド』の監督・脚本のコリン・トレボロウ、同作のプロデューサーのフランク・マーシャルと、過去作の重鎮で固められている。ドリームワークスは3Dアニメーション作品に慣れ親しんだスタジオであり、『ジュラシック』の重要人物が製作にがっつり関わっているからこそ、作品のクオリティと“ジュラシックらしさ”はとても安定している。

 シーズン1の第1話では、早速イントロ部分で『ジュラシック・パーク』を想起させるユニバーサルの地球儀にかぶさる恐竜の鳴き声が。そしてジョン・ウィリアムズによるオリジナルのテーマソングが流れる。やはり、この曲があるかないかでは、作品への印象がだいぶ変わる。『ワールド』シリーズになってから、音楽はマイケル・ジアッキーノが手かけており、1作目ではウィリアムズの手がけたアイコニックなスコアが少しアレンジされながらも堪能できたが、『炎の王国』では焦らされるかの如く、あれが聞けなかった。そういう意味では、アニメ版は出し惜しみせずに劇中でもウィリアムズの『パーク』テーマ曲が楽しめるし、ジアッキーノの『ワールド』テーマ曲も楽しめる。

 物語も、本当に古き良き『ジュラシック・パーク』のスリルを持ちながら、恐竜と人間が実際にパーク内で触れ合うことのできる近未来の可能性を楽しむワクワク度が絶妙なバランスで絡み合っている。これだよ、これが『ジュラシック』シリーズで観たかったんだよ! という具合。本来、このシリーズはジョン・ハモンドが恐竜園を作ろうと思い立ったところから始まったわけだが、それがついに実現した『ジュラシック・ワールド』は劇中、そのパークの見どころを細かく見ていく暇もなく、崩壊してしまった。『サバイバル・キャンプ』シリーズは、言うなればそこで拾い漏れていた施設の中の様子や、パーク全体のフィールドをあ描いたことで、正当な形で『ジュラシック・ワールド』の補完をも行なっているのだ。

スリル満点な恐竜はアニメーションも神クオリティ 

 キャラクター、物語、音楽がどれだけ良くても、やはり『ジュラシック』シリーズの主役は恐竜だ。アニマトロニクスとVFXを掛け合わせて、どの恐竜映画のそれよりもリアル志向で作り上げられた『ジュラシック』シリーズの恐竜たちは、アニメーションになってもそのクオリティが落ちることはない。むしろ、より高くなっていて驚いた。アニメーター陣はそれぞれの恐竜の動きをしっかり過去作からトレースしていて、これまでの作品を何度も観て勉強したんだろうな、という気概を感じる。本作にはシリーズを通して王女の座に君臨するレクシィことTレックスをはじめ、ブルー率いるラプトル4姉妹も登場するが、他にもアンキロサウルスやシノケラトプスと、シリーズにちょろっと顔を出しただけでこれまでガッツリ活躍してこなかった恐竜にフォーカスが当たっているのが良い。特に、『サバイバル・キャンプ』では影が薄かった肉食恐竜カルノタウルスがヒロインに大抜擢されていて、ファンとしては嬉しいばかりだ。

 こうして、シーズン1は途中からインドミナスレックスが脱走し、パーク崩壊のシナリオが進んでいく。キャンプに参加していた少年少女らも同じように島からの脱出を目指すが、カルノタウルスやプテラノドン、モササウルスなどの猛者に襲われ続けていく。アクションシーンは実写顔負けのスリルと迫力があって、正直実写作品の大人たちよりも酷い目に遭っている子供たちに同情する。

ディテールの再現の的確さ 過去作との繋がりを探す楽しみ

 さて、ブルーやレクシィといった恐竜以外でも、シリーズお馴染みのキャラクターが登場のも過去作ファンとしては楽しめるポイントだ。最たる例はヘンリー・ウー博士。『ジュラシック・パーク』にも登場し、『ジュラシック・ワールド』ではすっかり闇堕ちした彼が再登場したことで話題となった。彼はこのアニメ版にも顔を出してくれるわけだが、10代のインフルエンサー女子に「どのぐらいのフォロワーが見ているの?」と自分の名声をアピろうとする姿勢を見せるなど、本家でも見え隠れした腹黒さがしっかり描かれている。

 そしてパーク内の様子にも是非注目していただきたい。シーズン2では崩壊後のパークに取り残された少年少女が、無線連絡をしようとメインストリートにやってくる。お土産ショップやレストランがすっかり朽ちたそこは、しっかりインドミナスレックスとTレックスの死闘の後が残っている。そして売店の様子やコンプソグナトゥスが登場する、という点も『炎の王国』でクレア一行が再び訪れたときと全く同じ。恐竜の描き方だけでなく、情景・背景も含めてしっかりと映画にリンクしている描写が多く、どれもが細かくて的確だ。

 そういうディテールは、映画を愛したファンだからこそ「あっ、これは!」と発見して楽しむことができる。そういう意味で、本アニメは製作陣の本気と、過去作への敬意の塊と言っても過言ではないのだ。ファンが観て、喜べるものをふんだんに劇中に盛り込まれている本作は、まさしく誰もが望んだ『ジュラシック』作品なのである。

■アナイス(ANAIS)
映画ライター。幼少期はQueenを聞きながら化石掘りをして過ごした、恐竜とポップカルチャーをこよなく愛するナードなミックス。レビューやコラム、インタビュー記事を執筆する。『ジュラシック・パーク』にこの身と心を捧げている。『ジュラシック・ワールド3』のパンフレットに寄稿するのが夢。InstagramTwitter

■配信情報
Netflixオリジナルシリーズ『ジュラシック・ワールド/サバイバル・キャンプ』
Netflixにて独占配信中