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勘九郎「大変な時期に追善ができる喜びと感謝の気持ち」 若き中村屋が挑む『二月大歌舞伎』

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左から、中村長三郎、中村七之助、中村勘九郎、中村勘太 (c)松竹

1月に続き3部制で行われる2月の歌舞伎座の第3部は、「十七世中村勘三郎三十三回忌追善狂言」の2演目。十七世勘三郎は、現在の勘九郎が6歳、七之助が4歳の時に亡くなったふたりの祖父で、立役(男役)も女方も自在、78年の生涯につとめた役の数がなんと800以上という、正真正銘の歌舞伎界のレジェンドだった。

勘九郎は、「祖父は父(十八代目勘三郎)に、『歌舞伎座で追善ができるような役者になっとくれ』とずっと言っておりまして、三十三回忌は父が必ずやるものと、僕たちも思っていたんですけれども……」と、一瞬だけうつむいた後、「その父の遺志を引き継いで、(コロナ禍の)大変な時期に追善ができるという喜びと感謝の気持ちで、一生懸命やらせていただきます」と、きっぱり言って覚悟を見せた。父はすでにないが、心強い弟の七之助と、芝居心いっぱいで頼もしい長男・勘太郎と次男・長三郎。若き中村屋ファミリーが一丸となって、多才で偉大、かつチャーミングだった十七代目の当たり役に挑む。

『連獅子』親獅子の精:中村勘九郎、仔獅子の精:中村勘太郎 撮影:篠山紀信

『連獅子』は、厳しい獅子の子育てのさまが、幼い頃から父に教えを受ける歌舞伎俳優の親子の姿に重なる人気舞踊。中村屋では、十八世勘三郎が歌舞伎座で仔獅子役を初めて踊ったのが13歳、勘九郎と七之助が10歳と、最年少記録を作ってきた。七之助は、「(初役の兄が踊るのを)大変そうだなあ。がんばれ! という気持ちで観ていました。自分が踊ることになるとはあまり思っていなかったんですが、その2年後に踊ってみて、本当に苦しかった思い出があります。父からは、『ぜんぶ出し切れ。うまい下手じゃない。火の玉みたいに踊りなさい』と言われたことが、すごく耳に残っています」。

今回仔獅子を踊る勘太郎は9歳で、父の最年少記録を更新。「抜かれた!」と悔しそうな勘九郎は、「七之助が言ったとおり、うまい下手ではなく魂で踊るのが大切なんですが、その前にまず、踊りの基礎がなっていないといけない。形があって、その中に心を入れるという作業が重要なんです。父もよく言っていましたが、お客様は後ジテの毛振りを喜んでくださるけど、それはおまけみたいなもの。前ジテがとても大事な踊りだということを、肝に銘じて踊ってほしいですね」と親獅子らしい威厳。体力をつけるためにランニングや腹筋をしているという勘太郎は、「お父ちゃま達が軽そうに踊ってたから、あんまり重くないんだなと思っていたんですけど、(衣裳や鬘を)着てみたらものすごく重くて、写真撮影が終わった後に踊ったら、死にそうになりました」と告白(泣きそうになったらしい)。

『袖萩祭文』袖萩:中村七之助、お君:中村長三郎 撮影:篠山紀信

『袖萩祭文』は、盲目となり雪のなか門付け芸で三味線を弾きながら勘当された親に許しを乞う袖萩と、そんな母をかいがいしく労る娘のお君の姿が、涙を誘う義太夫狂言。七之助が初役で袖萩をつとめ、7歳の長三郎が、しどころの多いお君に挑戦する。

「奥州で最強とされた安倍一族の話ですが、ここは一族の成り立ちや絆、プライドなどの要素が詰まった素晴らしい場面で、袖萩はそのキーポイントになる役。お君ちゃんはいろいろな仕事をしなければなりませんが、それが仕事に見えず、袖萩と深い愛情で繋がっている母娘と見ていただけるよう、一生懸命につとめます」と甥っ子を慈しむように話す七之助に対し、いつも周囲をハラハラさせながら、本番には強いという実績がある長三郎は、「緊張と楽しみがくっついてます」と、大物らしい含蓄に富むコメント。

泉下の十七世と十八世が、大きな力で4人を見護り、一段と成長させてくれることだろう。

後列左から、中村七之助、中村勘九郎、前列左から、中村長三郎、中村勘太郎 (c)松竹

取材・文:伊達なつめ

歌舞伎座『二月大歌舞伎』
2021年2月2日(火)~2021年2月27日(土)
会場:東京・歌舞伎座

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