Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
ぴあ 総合TOP > ぴあ映画 > ファーストサマーウイカ、役者としてもブレイク間近? 抜きん出た自己プロデュース力

ファーストサマーウイカ、役者としてもブレイク間近? 抜きん出た自己プロデュース力

映画

ニュース

リアルサウンド

 杉咲花が主演を務めるNHK連続テレビ小説『おちょやん』(NHK総合)に、先週放送の第7週「好きになれてよかった」から、朝ドラ初出演となるファーストサマーウイカが登場。ハリウッド帰りの女優・ミカ本田役で視聴者にインパクトを与えている。

 コテコテの関西弁と、歯に衣着せぬ発言というヤンキーキャラで2019年にブレイクし、今ではモノマネ番組で見せる確かな歌唱力や、ラジオDJ、そして女優と、マルチな才能を発揮しているファーストサマーウイカ(以下ウイカ)。アイドル出身と思う人もいるかと思うが、実は根っからの演技派でもある。

 高校卒業後に演劇を志し、2009年に関西の小劇団である劇団レトルト内閣に入団。バイトや派遣OLをしながら本名の「初夏(ういか)」名義で関西を中心に5年間役者を経験した後、上京心が芽生え、ノリで受けたアイドルグループBiSの新メンバーオーディションに合格、加入したという経緯だ。プー・ルイを中心に、過激なプロモーションと確かな音楽パフォーマンスで話題を呼んでいた当時のBiSだが、その中でもウイカは、大人たちの無理難題に動揺しない落ち着きぶりを発揮、力強い歌唱力も相まって、当時から自分の見せ方を知っている人だと感じた。

 第1期BiSの解散以降は、音楽グループBILLIE IDLE(R)の活動と並行して舞台などの女優活動も本格化。2019年1月放送の『女が女に怒る夜』(日本テレビ系)に、初めてバラエティのオーディションを経て出演したのをきっかけに、「かきあげ前髪・関西弁・ヤンキーキャラ』という、ご意見番的毒舌キャラで一気にブレイクを果たした。「売れているアイドルは漫画になっても成立するような、キャラクターが立っている人ばかり」(引用:ファーストサマーウイカ、関西弁毒舌でバラエティ界に新旋風も「すべては計算済み!?」)だとアイドル時代に学び、今の漫画になりやすいキャラも意図的にやっていると語っている。一見“ネタキャラ”と思われがちだが、実はBiS時代からの自己プロデュース力の高さこそがブレイクの要因であり、演技の面でも同じことが言える。

 女優として連ドラ初出演となったのが、2019年の黒木華主演のドラマ『凪のお暇』(TBS系)。1話ごとに田舎から出てきたギャルや、婚活パーティーの司会者など異なる役柄でレギュラー出演という特殊な形での出演だが、ウイカにとってはうってつけの起用だ。どう見てもウイカなのに、当たり前のように別人になりきっている面白さを毎週のように発揮していたが、それができるのも、一人何役もこなす佐藤二朗やエディ・マーフィのような個性派俳優と同じように、なにかハプニングを期待させる存在として、ファーストサマーウイカというブランドがすでに完成しているからこそ。あくまでも脇役の1人に徹し「こんな人いるよな」と思わせる演技は、長年の演劇経験や、アイドル時代に学んだキャラ作りのノウハウの賜物だろう。

 『おちょやん』でウイカが演じているミカ本田は、監督のジョージ本田(川島潤哉)の妻で、ハリウッド帰りの女優という役どころ。初登場シーンでは、千代(杉咲花)のNGをきっかけに撮影スタッフ同士がケンカをする中、派手な毛皮のコートという出で立ちで颯爽と現れた。「またやってるの? ダーリン!」とジョージに声をかけ、ケンカではじき飛ばされた男を軽く一払いし、「ティーしに行こう」と言うジョージにミカは「オーイエー! ハリウッドのチェリーパイが懐かしいわー」と2人で腕を組んで歩き出すという、海外のシットコムのような、いかにも大物女優になりきったユニークさで視聴者に大きなインパクトを与えた。

 もはや後はセリフがなくても存在感だけで大物女優の絶妙な味わいを見せるところは、ウイカの技術。千代の憧れのスター女優・高城百合子(井川遥)の代役として登場したり、現場で千代がNGを連発すると、「私、もう待ち疲れたんだけど」と痺れを切らし、ワガママな雰囲気を出したかと思えば、千代が感動的な演技を見せると、「よくやったわね」と言わんばかりの笑みを見せる。この大物女優になりきった高飛車な笑みが、視聴者を若干イラッとさせながらも思わず笑わせる。なんとも憎めないキャラクターに仕上がっており、ウイカは朝ドラでも、コメディリリーフとしての使命をきっちりと果たしていると言える。同世代の女優が数多く出演している中で、誰もが一目で大物女優と分かるなりきりぶりは、バラエティで築いたイメージなど、これまでのキャリアがあるからこそできる、ウイカならではの役だ。

 ウイカもまた、関西の小劇団でコツコツと下積みを経験し、30歳にして朝ドラ出演に辿り着いたという意味で、千代に負けない波乱万丈の人生であり、彼女がよく口にする“人生の伏線回収”とも言える。

 公式Twitterの動画コメントでは「大阪で作る“朝ドラ”に出たいというのは、舞台女優を始めた18歳の頃からの夢だったので、やっとここにたどり着いたと思うと感無量でした」と語り、「ただ、ミカは標準語だったんですね」と、自慢の関西弁を使うキャラではなかったという見事なオチも彼女ならでは。場の空気を一気に面白くするスター性があると思えば、周りを活かして作品の世界観に溶け込むこともできる器用な女優だと、『おちょやん』で改めて感じさせた。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/