坂元裕二脚本の映画が出来るまで 『花束みたいな恋をした』でも尊い“ファミレスの会話劇”
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リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、いまロイホのいちごパフェが食べたい大和田が『花束みたいな恋をした』をプッシュします。
『花束みたいな恋をした』
ドラマ『東京ラブストーリー』(フジテレビ系)、『最高の離婚』(フジテレビ系)、『Mother』(日本テレビ系)、『Woman』(日本テレビ系)、『カルテット』(TBS系)……坂元裕二の心に残る名作と聞かれたら、あなたは何が浮かぶだろうか。
2018年に『anone』(日本テレビ系)の放送が終了したタイミングで、坂元は自身のInstagramにて、「これにてちょっと連ドラはお休みします」と発表した。1月クールドラマの放送が終わり、新ドラマの発表も続々とあったなかでの、この発言のショックと寂しさはいまだに覚えている(参考:坂元裕二の休息はテレビドラマ史の節目となる 2010年代における功績を振り返る)。その後は舞台『またここか』の脚本を手がけるほか、表立った作品の発表はなかった坂元裕二。当時舞台を観に行った人がSNSに投稿していた感想を、羨ましい思いで追い続けていた記憶がある。
そして2020年、世間が新型コロナウイルスで大変なことになり始め、俳優が自宅で自ら撮影した映像で構成される“リモートドラマ”の放送が流行し、坂元裕二が2年ぶりの地上波ドラマの脚本を手がけたリモートドラマ『Living』(NHK)、その後、スペシャルドラマ『スイッチ』(テレビ朝日系)が放送された。なんの前触れもない、突然のドラマ復帰には驚いた。
そして2021年、坂元は初のオリジナル映画『花束みたいな恋をした』を書き下ろした。本作のプレスに掲載されていたインタビューでは「映画は向いてないからやりたくなくて、一生ないと思っていたんです」と明かしている坂元。映画作りのオファーがあり、一度断っても声をかけ続けてくれていた人物が3人いて、そのうちの1人が『スイッチ』のプロデューサー中川慎子であり、もう1人が『花束みたいな恋をした』のプロデューサー孫家邦だったという。
本作は、東京・京王線の明大前駅で終電を逃したことから偶然に出会い、その夜から始まるひとつの恋の5年間の行方を、同時代のカルチャーを背景にしながら描く恋愛映画。菅田将暉演じる山音麦と有村架純演じる八谷絹が好む、本や音楽、アニメ、舞台、ゲーム、漫画、カメラなど、あらゆるサブカルチャーの移り変わりとともに時間の流れが描かれている。
試写室で本作を鑑賞していたとき、涙をすする声がたくさん聞こえた。自分がしてきた恋愛を本作で思い出し、重ねる人も多い気がする。坂元は、この物語をあまりよく知らない人のインスタと、友達の友達に関する又聞きの2名を対象にして、ストーリーを積み上げていったそう。その経緯からか、主人公の麦と絹の5年間は、自分ではなくても、ちらっとSNSで写真を見かけたことがあるような、友達の友達の話くらいに感じさせ、2人を身近な人物として存在させていた。
そして、本作でも大事な会話は『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系)と同様に、ファミレスで繰り広げられる(参考:『いつ恋』最終話はなぜ“ファミレスでの会話劇”で幕を閉じた? 脚本家・坂元裕二の意図を読む)。「ファミレスが出てこない話があったら、我慢してると思ってもらってもいい(笑)」と語るくらい、坂元作品にとって欠かせないファミレスで、今回はどんな話が聞けるのか、楽しみに劇場に足を運んでもらいたい。
■公開情報
『花束みたいな恋をした』
全国公開中
出演:菅田将暉、有村架純、清原果耶、細田佳央太、韓英恵、中崎敏、小久保寿人、瀧内公美、森優作、古川琴音、篠原悠伸、八木アリサ、押井守、Awesome City Club、PORIN、佐藤寛太、岡部たかし、オダギリジョー、戸田恵子、岩松了、小林薫
脚本:坂元裕二
監督:土井裕泰
製作プロダクション:フィルムメイカーズ、リトルモア
配給:東京テアトル、リトルモア
製作:『花束みたいな恋をした』製作委員会
(c)2021『花束みたいな恋をした』製作委員会
公式サイト:hana-koi.jp