工藤阿須加が憎めない兄役を好演 『モコミ』小芝風花が新たな世界へ飛び出す
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新土曜ナイトドラマ『モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~』(テレビ朝日系)第2話では、主人公の清水萌子美(小芝風花)が大きな一歩を踏み出した。前話に続いて自身の本音を母親の千華子(富田靖子)にぶつけ、実は兼ねてから胸の内に秘めていた「自分がやりたいこと」を初めて打ち明ける。それは兄の俊祐(工藤阿須加)が営む花屋で一緒に働きたいという夢だった。
もちろん母親は「人とコミュニケーションを取らなきゃいけない仕事ができると思う?」と反対する。それに対して萌子美は「母さんはいつも私を隠そうとしてきた。生まれてこない方がよかったのかなって思ってた」と真っ向から自分の思いを口に出すことができたのだった。
部品の不良品仕分けバイトをしている工場に辞めたいことを伝えると、工場の皆は送別会を開いてくれ、そこで萌子美は自分が今まで大きな誤解をしてきたことに気づく。工場のメンバーたちは本当は自分に興味を持ってくれていたが、一人で黙々と作業するのが好きそうな萌子美に対して邪魔しまいと話しかけるのを遠慮していたのだった。それを萌子美は自分が変な子だから皆が関わりを持ちたがっていないと思い込み、自分から周囲を避けていたことを初めて知るのだった。それはあまりに近くに“自分の夢”があるにもかかわらず、そこに手を伸ばすことさえ許されず遠ざけられてきた彼女からすれば、「世界がひっくり返る」ような体験だったのだろう。
「子どものため」と我が子を思うあまり、悪気はなく先回りして極力障害がないように取り除こう、それどころか娘を外の世界に出さないようにしようと口うるさい母親と、その母親に気圧されて、というより半ば生気を吸い取られて何も言えない父親(田辺誠一)、そこに争いを好まず中立であろうとするも頼り甲斐には少し欠ける兄役に工藤阿須加を持ってきたのが絶妙である。
年始に放送された『教場II』(フジテレビ系)では、工藤演じる優等生で好青年な宮坂の殉職にショックを受ける視聴者が相次ぎ話題となったが、工藤と言えばその爽やかなルックスといかにも人が好さそうなキャラクターで、作中しばしば見せる“困り顔”がとにかく印象的でその表情に様々な想いを込め多面的に“多くを語らせる”ことができる。強烈な相手の近くにいて振り回され、その歪みの影響を受けながらもいつの間にか成長したり、内省したりしている役どころが多い。振り返ってみれば肉食動物の近くで怯えながらもなんとか共存する草食動物といった立ち位置での配役が目立つ。
『家売るオンナ』(日本テレビ系)ではスーパー営業マン・三軒家(北川景子)の下でしごかれるダメ営業マンの庭野を演じ、また映画『ちょっと今から仕事やめてくる』ではブラック企業に酷使され悩み抜く新入社員・青山役を好演していた。
明確な力関係の下、ままならない現状に晒されながら、それを何とか飲み込み受け入れ、その中で朴訥で不器用ながらどうにか立ち回ろうとする姿に、どうしたってそのキャラクターを憎めず嫌いにはなれない。
本作でも家庭では何事にも口出しする母親をなだめ、職場では花屋の店員であり彼女でもある依田涼音(水沢エレナ)に尻に敷かれている感が見え隠れしている。
そんな兄・俊祐が、母親の反対がありながらも萌子美が花屋で働くことを認めたのは彼女本人にとってだけでなく兄自身にとっても、また母親ふくめ清水一家にとって大きな大きな前進となったのではないだろうか。
これまでは萌子美に対して少し当たり障りのない対応だったかに思える俊祐が、間近で働く妹の姿に何を想い彼自身にもどんな変化がもたらされるか。“彼女の職場の長”になるという点では彼女のギフトを生かすも殺すも俊祐次第という側面を大きい中、どんな兄妹関係の変化が見られるか楽しみである。また、今のところ俊祐以外は確実に問題だらけの清水家だが、実は彼も彼で人には言えない秘密を抱えているらしく、何となくそれが一番闇が深そうな気もしなくもなくて、そっと見守りたい。
■楳田 佳香
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter
■放送情報
『モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:00~23:30放送
出演:小芝風花、加藤清史郎、工藤阿須加、田辺誠一、富田靖子、橋爪功、水沢エレナ、内藤理沙ほか
脚本:橋部敦子
演出:竹園元(テレビ朝日)、常廣丈太(テレビ朝日)、鎌田敏明
音楽プロデュース:S.E.N.S. Company
音楽:森英治
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:竹園元、中込卓也(テレビ朝日)、布施等(MMJ)
制作著作:テレビ朝日
制作協力:メディアミックス・ジャパン(MMJ)
企画協力:オスカープロモーション
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