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現代のダンスサウンドとJ-POPの接点は? 『ULTRA JAPAN 2018』最終日から探る

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 9月15日から17日の3日間に渡って、お台場ULTRA PARK特設会場にて開催された『ULTRA JAPAN 2018』。今年で5周年を迎えた同フェスは、日本ではしばらく空白だった「ダンスミュージックのフェス」を再興させた。過去4年間の通算動員数は延べ37万人にも及ぶ。日本でダンスミュージックを楽しむ層がこれだけ可視化されたことはないだろう。

 一方、ダンスサウンドとはなかなか縁遠い傾向にあったJ-POPシーンにも、2010年代以降のEDMブームのなかから生まれた先鋭的なサウンドが増えてきた。Afrojack、Yellow Clawといったプロデューサーとコラボレーションを重ねるLDH勢に加えて、Perfumeや星野源も自作にフューチャーベースのサウンドや構造を取り入れている。

三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE feat. Yellow Claw / RAINBOW

 こうした状況をふまえ、現在のダンスサウンドとJ-POPとの接点を探るため、『ULTRA JAPAN 2018』に参加してきた。日本のアクトが集中した17日に焦点をさだめ、メインステージでの彼らのパフォーマンスを中心にレポートする。

 日中は快晴となった当日、メインステージ1番手のTeddyLoidが登場したのは11時ちょうど。ブースに上り、ヘッドフォンをマイクがわりにして自身の楽曲からパフォーマンスをスタート。

 自作や他アーティストのリミックスを中心とした四つ打ちメインのアッパーなセットを披露するなか、前日に芸能活動を引退した安室奈美恵をフィーチャーした楽曲m-flo loves 安室奈美恵「Luvotomy(TeddyLoid Remix)」も織り交ぜていた。

 続いて登場したYAMATOは、ダブステップやトラップが多めの選曲。

 バラエティ豊かなビートのなか、テクニカルなスクラッチも幾度となく決め、セットにアクセントを加えていた。この規模のシステムは初体験だったが、巨大なラインアレイスピーカーから飛び出す重低音はもちろん、ダブステップやトラップ独特の耳に刺さるようなシンセリフの音色が、まるでパーカッションのようにグルーヴを生み出していることが印象的だった。

 この日残る日本のアクトは、メインステージでは中田ヤスタカ。冒頭から、音の塊が飛び出してくるような圧の強い選曲で攻めていた。

 DJ Snake「Magenta Riddim」やGammer「THE DROP」などのビッグチューンにきゃりーぱみゅぱみゅやPerfumeなどを織り交ぜて会場を沸かせていた。ときには合唱も聞こえてくる盛り上がりだ。

DJ Snake – Magenta Riddim
Gammer – THE DROP [Monstercat EP Release]

 リリースされたばかりのPerfume『Future Pop』からは、「FUSION」、「If you wanna」、「Future Pop」をプレイ。同作のサウンドは少し抑えめで平面的な印象があったが、セットの中で体験してみると、密集したサウンドの量感を浴びるような迫力が感じられた。中田の選曲の方向性から見ても、こうした量感には、彼がフューチャーベースを始めとする昨今のダンスミュージックのどのような部分に反応しているかを垣間見ることができた。

 中田ヤスタカのセットが終わったころになると少しずつ日が落ち始め、気温も和らぎ始めた。とともに、空模様が少しずつ崩れ始め、夕方には雨模様に。辺りが暗くなる頃、Afrojackを控えたメインステージはすっかり土砂降りとなったが、オーディエンスのテンションは逆にうなぎのぼりだった。大降りの雨をものともせず、会場はクライマックスに突入していった。

 実際に現地を取材して驚いたのは、会場の熱気はもちろん、予想以上に多様なオーディエンスだった。仮装やドラァグ風のファッションに身を包んだ人もいれば、フェスを楽しむ若い男女、ロックバンドのTシャツを着た人もいる。年齢層も、20代から30代のボリュームゾーンだけにとどまらない印象だった。メインステージだけではなく、RESISTANCEステージなども含めて、ダンスミュージックファンからフェス好きまでが集まっていたように見えた。

 サウンドの観点からいえば、いわゆるビッグルーム系と呼ばれる四つ打ちのサウンドから、トラップやダブステップ、あるいはハードスタイルまで、多様なビートが次から次へとあらわれる密度の高さがやはり印象的だった。2010年代以降のEDMを中心としたサウンドは、曲構成の点では様式化が進んだ一方で、基軸となるビートやドロップに仕込まれるギミックは極めて多様化し、複雑にもなっている。トリッキーなビートにも関わらず、DJの煽りに応えて熱狂するオーディエンスの姿は圧巻だ。

 体に響く大音量、特に重低音を浴びながら、サウンドのダイナミックな変化を楽しむという現在のダンスミュージックの潮流が、フェスという形でこれだけの人に親しまれていることは興味深い。この場に居合わせて多様なビートを体に浴びるだけでも、徐々に音楽の嗜好というものは組み替えられ、形作られていくだろう。ダンスミュージックのフィールドにいながらポップスにも通じた若手プロデューサーは、日本にも数多い。音楽シーンのトレンドセッターとしてフェスが注目される昨今、『ULTRA JAPAN』のような場を通じて幅広いオーディエンスの感覚が拡張されていけば、若いプロデューサーたちの活躍とともに、J-POPの風景はもっと変わっていくはずだ。

■imdkm
ブロガー。1989年生まれ。山形の片隅で音楽について調べたり考えたりするのを趣味とする。
ブログ「ただの風邪。」