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夏帆と山下敦弘が「動くな、死ね、甦れ!」を語る、「天然コケッコー」撮影時の話も

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左から夏帆、山下敦弘。

1月30日にスタートした連続講座「現代アートハウス入門 ネオクラシックをめぐる七夜」。昨日1月31日の第2夜ではヴィターリー・カネフスキーの監督作「動くな、死ね、甦れ!」が東京・ユーロスペースで上映され、女優の夏帆と映画監督の山下敦弘がトークを展開した。

日本ではミニシアターという呼称で親しまれているアートハウス。本企画では日本のアートハウスの歴史を彩ってきた作品を上映し、その映画の魅力や“アートハウス”の本質的な意味を改めて話し合っていく。「動くな、死ね、甦れ!」では、カネフスキーが少年時代を過ごした旧ソ連の炭鉱町スーチャンを舞台に、第2次世界大戦直後、収容地帯と化した町で生きる12歳の悪童ワレルカと幼なじみの少女ガリーヤの姿が描かれた。

山下は「映画の後半、2人とも成長してますよね。特にガリーヤは大人になったように見える」と述べ、「子供たちがすごく生き生きとしている。笑っている場面で本当に笑ってると思ったら、そこに監督の笑い声も入っていて。演出方法が垣間見えたような気がしました」と述懐。夏帆は「こういう映画に触れてこなかったのもあって、初めて観たときにすごく驚いたんです。映画の多様性を感じました。ドキュメンタリーなのかフィクションなのか曖昧で」と感想を伝えた。

「天然コケッコー」がきっかけで出会った山下と夏帆。撮影時演出に悩んでいたという山下が「相米慎二監督の『東京上空いらっしゃいませ』を観たら、オープニングで主演の牧瀬里穂さんの顔がやつれてるんですよ。アイドル役なのに10分前まで泣いていた顔。相米さんの追い込む演出に影響を受けたところもあった。なので、ごめんなさい」と謝罪すると、夏帆は「当時の山下さんは29歳、私も今29歳。あのときの山下さんの年齢になってみて、15歳の女の子に演出するってすごいなと思います」と返す。

イベント中にはQ&Aコーナーも設けられた。「初めてのアートハウス体験、または印象に残っている映画体験」について質問が飛ぶと山下は「高校生のとき、神代辰巳監督が亡くなって、大阪の今はもうない劇場でオールナイトをやっていたので観に行きました。ロマンポルノと『棒の哀しみ』を上映していた。内容は覚えていないけど、朝になって、吉牛食って帰るか、みたいな」と思い返し、「ちなみに僕のデビュー作『どんてん生活』はユーロスペースのレイトショーでした。記録的に入らなかったのも今となっては笑い話です」とコメント。夏帆は初めてのことは覚えていないと話しつつ、「『ポンヌフの恋人』を今はない吉祥寺のバウスシアターに観に行って、DVDと劇場で観るのとでは全然違うんだなと実感しました。それからはなるべく映画館で観ようと思いましたね。初めて観たのがテレビだと悔しくなる」と言及する。

続いて「どうやったら映画友達ができますか?」と問われた山下は「嫌いな映画を語り合うっていうのもいいんですよ」とアドバイス。「脚本家の向井康介と大学のとき、おしゃれな映画サークルでジャン=リュック・ゴダールの作品を観せられて、2人でもやもやして、1mmもわからなかった。その後ジャッキー・チェンの『プロジェクトA』を観に行って『やっぱジャッキーだよな! ゴダールわかんないよな!』って。今観たら印象は違うかもしれないけど、向井も俺もゴダールアレルギーが出ちゃって。嫌いなもので盛り上がるってありますよ」と実体験を交えて解答した。

「1990年代、学生だったので、ミニシアターが自分の中で最先端だった」と語る山下。「もちろんシネコンでかかっているような映画を観ながら育って、監督になっているわけだけど、ミニシアターが自分の故郷であり、スタートという感じがします。シネコンはスタッフの方やお客さんの顔が見えないので。監督としてはミニシアターで上映してもらえるのはうれしいですね」と思い入れを明かす。夏帆は「10代の頃から、ミニシアターや単館系の映画にずっと憧れがありました。今はコロナ禍でミニシアターもなかなか厳しいと思いますが、映画を作っても、かけてくれる映画館がなければ観ていただくことはできません。なんとか多くの人にいろんな作品をもっと観ていただきたいなと思います」と願いを込めた。

「現代アートハウス入門」は2月5日までユーロスペースほか全国のミニシアターで開催。