奇妙な事件が頻繁に起こる町を巡るツアー『イキウメの金輪町コレクション』
ステージ
ニュース
『イキウメの金輪町コレクション』
超常現象、オカルト、SF。非現実的な存在や現象がシームレスに現実世界と混じり合っていく作品を上演してきたイキウメ。昨年、新作『外の道』上演を予定していた彼らは、例にもれずコロナ禍によって上演の延期を余儀なくされた(2月3日現在、2021年5月からの上演が予定されている)。ぽっかりと空いた時間に始めたのが「外の道ワーク・イン・プログレス」。台本の公開、試演の映像発表など、さまざまな角度から作品を見つめ、解体するなかで、「金輪町」にスポットが当てられた。
イキウメがこれまで発表してきた作品の多くは、「金輪町」というひとつの町でのできごととして描かれている。作品によって海辺であったり、山間部であったり少しずつ条件が異なる場合はあるが、共通して「日本のどこにでもありそうな、小さな町」だ。イキウメの面々は改めて自分たちの過去の作品を紐解いて金輪町で起きた事件をピックアップし、町の輪郭をくっきりと浮かび上がらせた。詳細な地図が作られ、町のどこにどんな施設があり、そこで何が起こったかが地図上にまとめられた。それをもとに大きなジオラマまでもが作られた。
『イキウメの金輪町コレクション』は、この金輪町で起きたできごとをオムニバス形式でたどる公演。過去の長編の一部であったり、短編であったり、さらには柳家三三の落語を通じて、この不可思議な町の形を浮かび上がらせる。甲・乙・丙の3プログラムで、それぞれ異なる演目を複数上演する。
演劇は、2時間なら2時間、現実とは違う世界を垣間見る表現だ。公演が終わればその世界は消える。けれどもそれぞれ異なる世界だと思っていたものが、実はつながっていたとしたらーー。架空の町に何年もかけて物語が積み重ねられていった結果、そこに何が生まれるのか。一つひとつの演目は短くても、この作品で観客が見る世界はとても広大なものに違いない。2月4日(木)より、東京芸術劇場 シアターウエストにて。
文:釣木文恵
『イキウメの金輪町コレクション』
作・演出:前川知大
出演:浜田信也 / 安井順平 / 盛隆二 / 森下創 / 大窪人衛
松岡依都美 / 瀧内公美 /
柳家三三(落語、丙プログラムのみ出演)
3つのプログラムで上演
甲=『箱詰め男』
『やさしい人の業火な「懐石」』
『いずれ誰もがコソ泥だ、後は野となれ山となれ』
乙=『輪廻TM』
『ゴッド・セーブ・ザ・クイーン』
『許さない十字路(「片鱗」より)』
『賽の河原で踊りまくる「亡霊」乙バージョン』
丙=『落語・高速ジジババ「生きてる時間」より』
『賽の河原で踊りまくる「亡霊」丙バージョン』ほか
2021年2月4日(木)~2月21日(金)
会場:東京芸術劇場 シアターウエスト