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高橋一生、『僕らは奇跡でできている』で演じた“変わり者”の生き方 「気づきを得るのは周囲の人々」

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リアルサウンド

 火曜ドラマ『僕らは奇跡でできている』(カンテレ・フジテレビ系)が10月9日21時に放送をスタートする。高橋一生が民放ゴールデンプライム帯の連ドラで初めて主演を務める本作は、生き物のフシギに夢中な大学講師・相河一輝の日常を描く人間ドラマ。榮倉奈々、要潤、児嶋一哉ら個性豊かな登場人物たちが、一輝との交流を通して様々な“気づき”を得ていくという。

 リアルサウンド映画部では、主演の高橋一生にインタビュー。周りに流されることなく、自分の好きなことに没頭する“変わり者”一輝をどう演じたのか。自身との共通点や向き合い方、一輝という主人公の魅力について語ってもらった。(編集部)

■「『面白くなるぞ』という雰囲気は現場にいるとわかる」

ーー本日(※編集部注:インタビューは8月下旬に実施)は撮影から2日経ったということですが、現場の雰囲気はいかがですか?

高橋一生(以下、高橋):実はまだ、祖父役の田中泯さんとしかご一緒できていないのですが(笑)。ジョージというヘルマンリクガメがいて、この子がとにかく可愛くて。好奇心が旺盛で、ぐいぐい前に進んでいく。もう見習いたいくらいです(笑)。まったく物怖じしなくて、泯さんも「好奇心にはすべてが詰まっているよね」とおっしゃっていました。

ーー民放ゴールデンプライム帯の連ドラでは初主演ですが、これまでと違った意気込みはありますか?

高橋:意気込みというよりは、どの現場も同じですが「高橋一生を使ってよかった」と思っていただけるのが一番です。それが拡大して、観てくれるお客さんの反響に繋がると思うので。内輪受けだけを狙っているわけでは決してないのですが、「あ、これは面白くなるぞ」という雰囲気は現場にいるとわかるんです。それを結構見ていると、「あ、これでいいんだ」と迷いがなくなっていく。そういう雰囲気をスタッフさんと共有しながら、精一杯応えていく自分のスタイルは間違ってなかったと思えるんです。今回もこれまで通り、役と現場と物語に率直に向き合っていきたいです。

ーー台本もト書きが簡潔で、会話劇の側面もあります。

高橋:一輝も含めて、人物造形に対する指示がなく、動きが少ない分、自由度がすごく高いんです。それを、みなさんがどう芝居するのか。僕自身もその動きを事前に想定しないで、その場でどういうふうになるか試していきたいです。現場で、いつもニコニコしているプロデューサーの豊福(陽子)さんがうんうん頷いているのを見ると、「あ、OKなんだ」と安心します(笑)。ひとりの人格を演じるのは自分だけでは難しい作業で、周りの方々が補強してくれて、役はどんどん人間らしくなっていくんです。

ーー初共演となる榮倉奈々さんへの印象は?

高橋:榮倉さんとは会話の掛け合いが続くことが多いので、そのシーンはスムーズにお芝居ができるよう心がけようと思っています。榮倉さんご本人は静かに情熱を持っている方で、顔合わせのときは「ドラマ、すごく楽しみにしてるんです」と話されていました。榮倉さんは一輝の通っている歯科医院の先生という役柄で。一輝は歯医者に行くのを先送りにしようとしますが、(役柄上)怖いと思う人に会わざるを得ない状況に立たされることは、実はすごく素敵なことなんじゃないかと。つい自分の世界に篭りがちになってしまうけれど、自分が苦手だと思う人と会っていける瞬間はとても貴重な時間だと思います。

ーー『僕らは奇跡でできている』というタイトルについてはどうですか?

高橋:出演発表の際、「現代では、“足りない”という感覚が、多くの人達を突き動かしているように感じます」というコメントを出させていただきました。僕もそう思うことはあるし、生きていくことは何かを求め続けることかもしれませんが、実はそうではないのかなと。人生で一度立ち止まったときに、すべてが足りている地点からスタートするのと、足りていない部分を補充していくのとでは、ずいぶん歩き方が変わってくるので。今回のお話をいただく前から、「最初からあるものをいかに大事にできるかで、人間は豊かな人生を築けるんだ」という感覚を持っていました。このタイトルを考えた方々とは、その感覚がすでに共有できているんだと思います。このドラマの妙は、気づきを得るのが、主人公ではなく、その周囲の人々という点で。視聴者のみなさんも一輝の生き方に少しでも触れていただけると、その人の中で変わる部分があると思っていて。一輝が一言ぽつんと言ったことが、心に引っ掛かってくれたら。それがドラマの力だと思います。

■「一輝は“僕でしかいられない”ことに諦めも希望も持っている」

ーー高橋さん演じる相河一輝は、生物の不思議に目のない大学講師という役柄です。

高橋:僕もすぐに没入してしまうので、相河一輝という人を役として見られないというか。元々、役を作っていくこと自体あまりしないのですが、今回も同じです。このドラマは、一輝の生態のようなものをみなさんに見ていただき、何かを感じてもらえる作品だと思うので、僕も「自分もこういうところあるかも」と楽しみながら演じています。

ーー先ほどジョージの話もありましたが、高橋さんも生き物に興味が?

高橋:そうですね。NHKの『人類誕生』という番組でナビゲーターを務めたのですが、それもとても楽しくて。ただ、そういう自分と地続きな部分や自分の楽しみを役に投影し過ぎてしまうと、一輝ではなく僕になってしまうので(笑)。そのバランスは意識しています。

ーー一方で、一輝は何かに没入し過ぎるがあまり、空気を読めずに周りを苛立たせることもあって。

高橋:僕だけは一輝がどんなに周りをイライラさせようと、好きでいなくてはいけないと思っています。自分だけは庇ってあげられる人間にしていくことは、芝居の面白さでもあって。その勝手さに、可愛らしさや愛嬌があるんだと思うんです。ある人にはものすごくイライラして見えるけれど、ある人にはとても豊かな人生を送っているように見えるというか。

ーー高橋さんから見た一輝はどんな人物ですか?

高橋:一輝は人の言うことを聞いていないこともあるんですが(笑)、基本的に全部耳に入っていて、その上で取捨選択しているんだと思います。自分にとって必要な言葉とそうでない言葉の区分けが早いし、曖昧になっている部分を即時に判断して、自分に必要なものだけを取り入れている感覚がある。一輝は人との距離感は常に考えているし、トライ&エラーが早いです。エラーすると次はどうしたらいいか考え、それに集中しすぎてしまうと他のものが疎かになったり。それだけ意識がひとつに向いていて、真面目に生きている人間だと思います。そこは僕としても見習いたい部分です。すごく集中して、すごく力を抜いて、自分の好きなことに没頭する一輝の生き方は、ひとつの生き方として正解だと思います。

ーー一輝はドラマの主人公として、不思議な魅力のある人ですよね。

高橋:そうだと思います。一輝は、他者と自分の違いを誰よりも意識してきた人間で。けれど、それでも僕でしかいられない、ということに諦めも希望も持っている。主人公だから何か特殊だとかではなく、どこにでもいるんだけれど、考え方が何者にもぶれさせられない人間。みんな、誰かに“共感する”という感覚を持っていると思うんですが、一輝は常に自分と共感しあっているんです。そういう一輝を追うことに、今は僕が夢中になっています。(取材・文=若田悠希)