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三浦春馬を「天外者」監督がたたえる、大林宣彦の娘は父の服まといキネ旬表彰式に登壇

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「2020年 第94回キネマ旬報ベスト・テン」表彰式に出席した大林千茱萸。

田中光敏、大林宣彦が「2020年 第94回キネマ旬報ベスト・テン」の読者選出日本映画監督賞、日本映画監督賞をそれぞれ受賞。表彰式が本日2月4日に東京・Bunkamura オーチャードホールで開催された。

「天外者」で賞を獲得した田中は「大学のときからキネマ旬報を読み、憧れてきた賞をいただいて感謝にたえません」と挨拶し、「『天外者』は本当に生みの苦しみがあった。世の中にどうやって送り出そうかとただ一心に考え、みんなと力を合わせました」と振り返る。本作で主演を務め、2020年7月18日に死去した三浦春馬についても言及。「三浦春馬という最高に素晴らしい役者と出会って一緒にこの作品を作り上げたことで、こういう賞をいただけたんだと思います」と心の内を明かす。

MCの笠井信輔に「撮影中の思い出は?」と聞かれると、田中は「クランクインが予定より延びてしまい、春馬くんには1年待っていただきました。彼はその間に殺陣や所作の練習をしていて、現場に入るときには『監督、1年長かったですよ』と。彼と切磋琢磨したことは、僕にとって忘れられないものです」と真摯な思いを口にする。「彼は本当にいいやつで、本当に前向きに現場にいてくれた」「これは春馬くんにもらった賞。彼の思いがたくさんの人たちに届いた、そういうふうに思っています」と語った。

「海辺の映画館―キネマの玉手箱」で賞に輝いた大林宣彦。2020年4月10日に死去した彼に代わり、娘の大林千茱萸がステージに上がった。受け取ったトロフィーをまじまじと眺めた彼女は、満面の笑みを浮かべる。そして今着ているジャケットが大林宣彦のものであることを明かし、懐から彼の遺影を出して台に置いた。

まず大林千茱萸は、大林宣彦の妻で本作プロデューサーの大林恭子からの手紙を代読。「このたびは監督賞のお知らせをいただき大変戸惑いを覚えました」「この場をお借りして監督を支えてくださった本当に多くの方に感謝を申し上げます」と読み上げる。

また「0歳から父の映画に付き合い、映画とともに成長してきた娘の千茱萸さんが私の代わりに挨拶させていただく機会ができましたのも、キネマの神様の演出なのではと思います」「文学や音楽、美術の世界がそれぞれ驚きの表現力で時代をつないできましたように、映画も映画しか持ち得ない映画ならではの映像表現があるのではと大林はいつも楽しそうに映画に向き合ってきました」と文章は続く。最後は若い映画作家への激励の言葉を紡ぎ、「大林とともに過ごした私の63年間はすべて大切なキネマの玉手箱でございます」と結んだ。

会場では「第91回キネマ旬報ベスト・テン」における大林宣彦のスピーチ映像が流される場面も。笠井が大林宣彦を懐かしむように回想すると、大林千茱萸は「姿こそ見えませんが、スクリーンを見ればずっと生きているんです。うちの家では、長い長いロケハンに出ているということになっています。いろんな先輩たちと映画を作っていると思いますよ」と笑みをこぼす。そして「映画がすべての人だった」と述べ、笑顔のまま壇上をあとにした。

「キネマ旬報ベスト・テン」は、1924年度に当時の編集同人の投票によってベストテンを選定したことを発端とする映画賞。映画ナタリーでは表彰式の模様を引き続きレポートする。