柄本佑が考える、どうやったら人に優しくなれるか 「心のゆとりを知っておくことが大事」
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現在放送中のTBS日曜劇場『天国と地獄 ~サイコな2人~』に出演中の柄本佑。WOWOWのショート・フィルム・プロジェクト『アクターズショートフィルム』では監督作が放送され、2月20日にも主演映画『痛くない死に方』の公開が控えているなど、多方面で活躍している。
そして、現在、2020年1月に放送された柄本主演ドラマ『心の傷を癒すということ』の劇場版が公開中だ。阪神・淡路大震災から25年を機に制作された本作は、自ら被災しながらも被災者の心のケアに努めた精神科医・安克昌の遺族関係者への取材から得た事実を元に、自らも西宮市で被災した桑原亮子が、大胆に再構成したヒューマンドラマ。安克昌をモデルとした安和隆と尾野真千子演じる終子の“夫婦の絆”と、彼が寄り添い続けた人々との“心の絆”を描いた劇場版は、ドラマ版の全4回を2時間に再編集した。
今回は、ドラマ放送時の反響を振り返りながら、劇場版の公開に寄せて、主人公の精神科医・安和隆を演じた柄本佑に、本作に詰まった“安先生”からのメッセージについて改めて考えもらった。【インタビューの最後には、コメント動画&サイン入りチェキプレゼント企画あり】
「僕、あまり辛いことないんです」
ーードラマ放送時にSNSではかなりの反響がありましたが、柄本さんの元にはどんな声が届いていましたか?
柄本佑(以下、柄本):周りの人に作品の感想を言われたりすることはあまりないんですけど、その中でもこの作品は「染みるドラマだったね」と近所の焼き鳥屋の大将の奥さんから言われましたね。毎回ポスターを貼らせてもらっているんですけど、女将さんが「とってもじんわり心に残る作品だった」と言ってくださって。それは嬉しかったですね。
ーーSNSでも安先生のセリフを書き出して投稿している人がたくさんいました。
柄本:本当ですか? 嬉しい。ありがたいですね。「誰も一人ぼっちにさせへん」というセリフを筆頭に、言葉1つ1つがとても心に残るセリフを桑原(亮子)さんがたくさん書いてくださっていると思います。
ーー安先生という実在する人物を演じる上で、どのように役作りをしたのでしょうか?
柄本:精神科医の具体的な仕草は実際の精神科医の先生からノウハウを教わりました。あとは安先生の同僚の方に、「どういう方だったんですか?」とかを聞いて、ちょっとずつ形作っていきました。クランクインの前に安先生の奥様と子どもたちに会う機会をいただいて、作品に関係ないたわいもない話もしました。具体的にはこういう影響を受けたというのは言葉で表現しづらいのですが、それが一番役作りになったと思います。
ーー安先生についての話を聞いて、どんなイメージを持ちましたか?
柄本:柔らかくておおらかなイメージがあるのと、根っこには何かマグマのような火種を持っている方なのかなと感じました。とにかく声が小さかったそうなんですが、ただ声量が少ないだけで、彼の芯の強さは言葉の端々に感じられたと皆さん話していて。柔らかくも表出されている見た目とか、言葉、声量は非常に華奢なんですけど、中身は本当に太い幹をお持ちの方だったのかなと思います。
ーー周りの方々にとって、安先生はどんな存在だったんでしょう。
柄本:その方それぞれだったと思いますけど、皆さんしきりに安先生のお話を聞くと、非常に嬉々として喋ってくださるんですよ。やっぱりみんな安先生に会いたいし、寂しいんだなと感じましたね。
ーー役を通して安先生の考えに感銘を受けた部分はありましたか?
柄本:避難所の撮影をしていたときに気づいたことがあって。例えば人が100人いて、そのうちの99人があることに対して“賛成”、1人が“反対”したときに、「99対1」なんだけど本当は「1対1」だなって。明らかに99人の方がそちらへ向かう力は強いから、反対の1人を置き去りにしてしまいがちだけど、そのときに“ちょっと待って、あそこに1人残ってる”ってその人のことをちゃんと見てあげることが大切で、それが「誰も一人ぼっちにさせへん」という安先生の言葉に繋がるのかなと思いました。その渦中にいたら、視野を広く持つことって難しいけれど、そういうときこそ視野を広くして、その一人を引っ張り込んでくるんじゃなく、その人の声に寄り添う。声量だって99人の「ハイ」と1人の「反対!」という声だったら全く違うわけで。でもその小さい声を聞き逃さないことが、被災地、避難所に限らず、学校や会社、全社会において大切なことなのかなと気づかせてもらいました。
ーー安先生が少年に「辛いことは言葉にしたほうがいいよ」とかけた言葉が印象的でした。柄本さん自身、気持ちを言葉にすることについてどう考えますか?
柄本:どうだろう。僕、あまり辛いことないんですよね。辛いとか、大変なことに無頓着なので、あまりないかな。あったとしても、言葉に出すのは大事だけど、自分の弱い部分をさらけ出すのは、なかなか容易にできることではないなと思いますね。
ーー苦しい、辛い、大変……という感情はあまり持たないと。
柄本:そうですね。周りにもっと大変な人いるしと思っちゃいます。だから自分に置き換えて大変とか、辛いとか考えづらいんです。このぐらい大変じゃないというか、そうとさえ思わないですね。
「“なんでできなかったのか”を知っておくことが大事」
ーー夫婦の絆も本作の軸として描かれていますが、客観的に見て、和隆と終子はどんな夫婦だと感じましたか?
柄本:いやー、ラブラブでしょ。とても仲が良い夫婦だと思います。実際に安さんの奥さんである末美さんが克昌さんのお話をするときは、いまだに愛情が溢れ出るぐらいにお喋りされるんです。「どうだったんですか?」って聞いたら「うちはラブラブでした」って言ってました。支え合っていて、本当に素敵な理想的な夫婦の形というか、とてもいい夫婦だったんだなと感じましたね。
ーー妻の終子役の尾野さんとは、どのように夫婦の関係性を作り上げていったのでしょう?
柄本:役柄の話はほとんどしなかったんですけど、尾野さんと一緒になると、2人でよく喋って笑ってるんですよ。その感覚がシーンの撮影が始まっても地続きな2人ではあったかもしれないです。くっちゃべりもある種、2人の中では役作りというか。役に入る前の準備体操のような感じもあったのかな。単純にただお喋りなだけでしたけどね(笑)。尾野さんとは昔からの仲なので、今さら夫婦役というのは、ちょっとこっぱずかしい感じも少しありました。でもやっぱり素敵な女優さんだなと改めて思いました。非常に腑に落ちたところからセリフが出てくるし、なおかつ批評的な目を持っている方だから、目を合わせて芝居をすると、ちょっと怖いところもあったりするんです。だからこそ刺激的だし、一緒にやっていてとても楽しいです。
ーー安先生は人への寄り添い方、話の聞き方が優しい方だと思います。どうやったら安先生のように、人に優しくなれるんでしょう。
柄本:難しいですよね。心にゆとりがあるときはいくらでも優しくできるけど、そうでないときは全然優しくできなかったりするし。僕の考え方ですけど、そういうことを知っておくことが大事じゃないかなと思います。やっぱり人間はその日の状態によって違うわけだから、毎日70点という平均点を打ち出す人はいなくて。前日に何かあったことによって下がるし、上がるかもしれない。その日は優しくできるかもしれないし、次の日は優しくできないかもしれない。未来、明日以降、1秒先は何が起こるか分からないから。何かやれたということよりも、優しくできなかったときになんでできなかったのか、できたときになんでできたのかをちゃんと考えられたら、前回の反省を踏まえて、30%優しくできなかったところを1%ずつ減らしていくことも可能なんじゃないかなと思います。
■公開情報
『心の傷を癒すということ《劇場版》』
新宿武蔵野館、シネ・リーブル梅田ほかにて公開中
出演:柄本佑、尾野真千子、濱田岳、森山直太朗、趙珉和、浅香航大、上川周作、濱田マリ、平岩紙、石橋凌、キムラ緑子、近藤正臣ほか
脚本:桑原亮子
音楽:世武裕子
配給:ギャガ
配給協力:大手広告(ギャガ西日本事務所)
(c)映画「心の傷を癒すということ」製作委員会
公式サイト:http://gaga.ne.jp/kokoro
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