『レッドアイズ』第3話はあまりにも悲痛な結末に 亀梨和也と忍成修吾の対峙が意味すること
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「こんな未来、想像できたか? 次に何が起こるかなんて、誰にも分からない」。蠣崎(忍成修吾)のこの言葉に、引っかかりを覚えた視聴者は多いだろう。けれど、まさかこんなにも辛い結末が待っていようとは、誰も“想像”できなかったはずだ。どれほどハラハラさせられようとも、罪なき人の命は奪われることなく、伏見(亀梨和也)が「犯人確保」を報告して事件は解決。今回もきっと、そうに違いないと信じていた。
誘拐した湊川(シシド・カフカ)を生死のギリギリに立たせた上でなお、心までも絶望へと追い詰める蠣崎。ここまでかと思ったその瞬間、どうにか伏見が間に合った。しかし、事件はまだ終わらない。蠣崎は現場から姿を消し、かつて湊川がその命をかけて守った最愛の息子・敢太(森島律斗)にまで、危険が迫る。
幾重もの罠を仕掛け、警察を攪乱した蠣崎は、するりと本来の目的……島原(松下奈緒)への復讐の準備を進めていた。「あの男は狂ってる」――漆川(般若)をもってしてそう言わしめる蠣崎の第一の犯行は、確かに異常だ。しかし蠣崎にとって、我が身を傷つけることなどきっと容易い。いよいよ復讐を完遂できるという、よろこびでさえあったかもしれない。
第2話で蠣崎が流した涙は、伏見を挑発するための芝居ではなかった。愛する人を守れなかった悔しさと怒りは、唯一、蠣崎の“真実”だった。事故とはいえ、蠣崎の大切な人の命を奪った島原と花倉(篠原悠伸)に、8年前の自分と同じ苦しみを味わわせること、それが蠣崎の真の目的だった。描いていた未来が、成す術なく一瞬で奪われる。心から愛した人が、なんの前触れもなくこの世からいなくなる。その悲しみ、痛みは計り知れない。あの日あの場所にいなければ、今このときも幸せな日々を過ごしていただろうと思うと、蠣崎も被害者だ。けれどどんな理由があろうとも、人を殺めていい理由にはならない。蠣崎のしたことは、決して許されない。島原にとっての愛する人ーーといえば、妹・大塩はるか(高橋ひかる)や夫・信嗣にほかならない。
「殺せ、もう終わった」。伏見が引き金に指をかけてもなお、怯むことなくそう叫んだ蠣崎。あの瞬間、伏見と蠣崎の姿は、互いを映す鏡のように思えた。「彼女を失ったときから俺は死んだも同然だった」。蠣崎のその言葉に、美保(小野ゆり子)の事件資料と、水と少しの服、ただそれだけの部屋で生きてきた伏見の姿が思い出される。警察官ではない、“伏見響介”の眼に、復讐を果たした蠣崎の姿はどう映ったことだろう。
伏見がいつ、蠣崎になるとも分からない。現に第1話で、伏見はためらいなく犯人にナイフを向けた。そんな、伏見が持つ危うさを「信じてみるしかないよ」と言ってくれたのは、ほかでもない信嗣(笠原秀幸)だった。
「銃を下ろしなさい」「私が言ってるの」。彼女が指す“私”とは、上司であるKSBCセンター長・島原か、それとも、夫を無惨に殺害された妻・由梨か。冒頭、湊川誘拐に自責の念を感じ、捜査を焦る伏見に対し「そう思うなら、冷静になりなさい」と、島原は言った。その言葉通り、目の前で何が起ころうとも島原は、KSBCセンター長として冷静であり続けた。
「犯人確保」。その瞬間を見届け、ようやく「島原由梨」に戻ることが許されたのは、暗く冷たい廊下だった。信嗣が事件直前に島原へ送っていたメッセージ。そこには、来年の今日へと希望が綴られていた。蠣崎が願ったとおりの絶望が、島原を襲う。「人間にとって最強の劇薬は想像力」。島原と信嗣が描いていた未来は、蠣崎によって奪われた。あまりに悲しい慟哭が響く。
犯行文を掲載しないと決断したこと、蠣崎による第二の被害者が花倉だと気付かなかったこと、そして、花倉を逮捕したときのこと……自身の行動・判断ひとつひとつを、島原が悔やまないはずがない。
「君に会えて幸せだった」。信嗣が残した言葉が、島原の絶望と自責を少しでも、なぐさめてくれることを祈りたい。
次回はいよいよ「青いコートの男」の正体に迫る内容になるのだろうか。放送後には次回の30秒PRを、放送前には60秒PRを観るのだが、いずれも映画の予告と見紛うほどのボリュームだ。痛みも悲しみも、容赦なく描き出す『レッドアイズ 監視捜査班』。最新鋭の技術と天才的な頭脳、完全無欠の世界のなかに描かれるからこそ、アナログで脆い「人間」の痛みが、こんなにも胸を刺す。
※高橋ひかるの「高」はハシゴダカが正式表記
■新 亜希子
アラサー&未経験でライターに転身した元医療従事者。音楽・映画メディアを中心に、インタビュー記事・コラムを執筆。Twitter
■放送情報
『レッドアイズ 監視捜査班』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜22:54放送
出演:⻲梨和也、松下奈緒、趣里、シシド・カフカ、松村北斗(SixTONES)、高橋ひかる、木村祐一
脚本:酒井雅秋、福田哲平、まなべゆきこ
音楽:カワイヒデヒロ
チーフプロデューサー:池田健司
プロデューサー:尾上貴洋、茂山佳則(AX-ON)
演出:水野格、長沼誠ほか
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
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