『バンドリ!』Poppin’Partyが迎えた“新たな季節” 『ガールズルール』と2018年の飛躍を紐解く
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アニメ/ゲーム/コミック/小説など様々なメディアミックス展開で人気を集めてきた『BanG Dream!(バンドリ!)』プロジェクト。この作品から誕生した5人組ガールズバンド、Poppin’Partyが最新シングル『ガールズコード』をリリースした。
参考:『BanG Dream!(バンドリ!)』カバーアルバムの画期性 個性派バンドによる多彩なサウンドを解説
『BanG Dream!』シリーズは2017年にTVアニメ第1期の放送を開始すると、スマートフォンアプリゲーム『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』が今年に入って全世界のユーザー数1000万人を突破し、『バンドリ!TV』内の『ガルパ☆ピコ』を筆頭にした新展開も続々登場。作品から生まれた様々なバンドたちがアニメ/ゲーム作品の世界観とリンクした精力的な楽曲リリースや、声優陣が実際に楽器を演奏する“リアルライブ”の評判などにより、来年放送予定のTVアニメシリーズ2期/3期に向けてますます盛り上がりを見せている。中でもその顔役として初期からシリーズを引っ張ってきたPoppin’Partyは、メンバーの高い演奏力/歌唱力を生かした“本格的なロックバンドとしての魅力”と、“アニソン/ゲーソンとしての魅力”とが互いに手を取り合った、このプロジェクトの魅力を体現する存在だ。
ロックの聖地・日本武道館を満員にした昨年の勢いそのまま、2018年は3月に9thシングル『CiRCLING』を、7月には10thシングル『二重の虹(ダブル レインボウ)/最高(さあ行こう)!』を発表。『二重の虹(ダブル レインボウ)』は自身初のトップ5にして最高位となるオリコン週間シングルランキング(7月23日付)の4位を記録している。また、6月には『バンドリ! ガールズバンドパーティ! カバーコレクション Vol.1』に2曲で参加。同時に「リアルライブ」でも活躍の場をより広げ、5月には幕張メッセで単独5thライブ『BanG Dream! 5th☆LIVE Day1:Poppin’Party HAPPY PARTY 2018!』を開催して約1万2000人を動員し、その後は海外を含むフェスに出演、8月の『Animelo Summer Live 2018 “OK!”』では1日目前半戦のトリを担当した。
ここでは1曲目「ティアドロップス」のイントロが鳴った瞬間に度肝を抜かれるような、さらに迫力を増した演奏で観客を自分たちの世界に引き込み、ソリッドなグルーブや大塚紗英(花園たえ役)による超絶ギターソロなどに観客が「すごいものを観た」とどよめく姿も印象的だった。こうしてアニメ/ゲームと連動したリリースだけでなく、リアルライブの現場でもさらに充実した活動を繰り広げたのが、Poppin’Partyの2018年だったのかもしれない。
実際、その勢いは日々顕著になっている印象で、今年リリースされたシングルは軒並みオリコンランキングのトップ10内を記録しているほか、アニソン定額ストリーミングサービス『ANiUTa(アニュータ)』では、この夏再生されたゲーム楽曲のチャートでPoppin’Partyの「二重の虹(ダブル レインボウ)」が1位を獲得。同チャートには他にも「最高(さあ行こう)!」や「ティアドロップス」「ときめきエクスペリエンス!」などPoppin’Partyの曲が30曲中5曲もランクインし、その人気を改めて伝えるようだった。そうした充実の2018年が秋/冬へと差し掛かるタイミングでリリースされたのが、今回の『ガールズコード』だ。
タイトル曲「ガールズコード」は、『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』内で8月31日に実装された楽曲のフルバージョン。「キラキラだとか夢だとか ~Sing Girls~」等これまでもPoppin’Partyの人気楽曲を多数手掛けてきたElements Garden・藤永龍太郎が作曲を担当し、疾走感溢れるギターサウンドとポップなメロディが印象的だった直球のポップアンセム『二重の虹(ダブル レインボウ)』から一転、季節が変わりゆくこの時期ならではのミディアムテンポのロックチューンになっている。
“女の子のお約束”=“ガールズコード”を次々に挙げる等身大の歌詞の楽しさと、アルペジオを使ったフレーズやピアノの切ない音色とが混ざり合い、賑やかな日常に秋風がふと切ない気持ちを連れてくるような風景を連想させる豊かな表現力は今の5人ならではだ。もちろん、Poppin’Partyらしいポップさ/キャッチーさも健在で、2番のサビの〈Check Check One Two!〉というフレーズを筆頭に思わず口ずさみたくなるメロディが詰め込まれ、「ポップ」と「センチメンタル」のコントラストが楽しめる楽曲になっている。
中でも印象的なのは、愛美(戸山香澄役)が歌う〈寂しいことも/泣いちゃうことも/言わない約束なのに/わたしはもしかしてみんなと出会うためギターを好きになったの?/そんなことを真顔で 言わないでよ〉というフレーズだ。普段は元気で明るいキャラクターがふいに見せる表情にドキッとするように、「バンドの楽しさ」を体現するポップなロック曲を得意とする5人だからこそ際立つセンチメンタルな雰囲気は、やはりPoppin’Partyならでは。愛美の歌に他メンバーのコーラスが加わっていく構成も、戸山香澄を中心に「キラキラできる何か」を求めて集まったPoppin’Partyの結成の物語のようで、歌詞の〈みんな〉がメンバーやファンのことだと想像すると、この楽曲はバンドの楽しさに魅せられて突き進んできたPoppin’Partyが、ふとこれまでの歩みを振り返るような楽曲のようにも思える。
一方、カップリング曲の「切ないSandglass」は、和の香りを感じさせるピアノやギターのアルペジオを生かした切なさ溢れるアレンジと、“春” “夏” “秋” “冬”と四季の移り変わりを描写していく歌詞が印象的な楽曲。これまでのPoppin’Partyの楽曲の中でもかなり切ない雰囲気を持った序盤を経て、サビに向けてバンドサウンドが盛り上がっていく展開は情緒を感じさせる瞬間もあり、「ガールズコード」と同様、グループの音楽性の幅をより広げるような楽曲になっている。12月8日に控える両国国技館でのライブ『BanG Dream! 6th☆LIVE』では、様々なアンセムにこうした楽曲を加えたステージが、どう変化するのかにも注目だ。
2019年にアニメ第2期/第3期の放送を控え、今後の展開にさらなる注目が集まっている『BanG Dream!(バンドリ!)』シリーズ。プロジェクト自体が新章へと向かおうとしているこのタイミングで、バンドの“新たな季節”を感じさせてくれるようなPoppin’Partyの『ガールズコード』は、ますますシリーズ全体への追い風を吹かせてくれそうだ。(杉山 仁)